薬を使わない便秘治療ピルを開発したイスラエルのVibrantが8.2億円調達

慢性的な便秘の治療のために使い捨て振動ピルを開発した医療テクノロジー企業Vibrant(ビブラント)は米国時間3月26日、750万ドル(約8億2000万円)のシリーズEラウンドを発表した。同社はテルアビブに拠点を置き、スタートアップのベテランLior Ben-Tsur(リオール・ベン−ツール)氏が率いている。2007年の創業以来、同社は累計2500万ドル(約27億4000万円)を調達した。今回のラウンドはUnorthodox Venturesがリードし、Sequoiaが参加した。

3回目で最終となる米食品医薬品局(FDA)の試験を実施中の同社は、2022年に米国で事業を立ち上げる計画だ。カプセルはマルチビタミンのサイズだとベン−ツール氏は話した。

「患者は毎日毎日薬を服用するのに慣れています。なのでそうした意味ではこのピルは異なる体験にはなりません。しかしピルは薬を一切含んでいません」と同氏は述べた。同氏は創業者ではないが、CEOとして10年前に同社に加わった。

American Gastroenterological Associationに掲載された論文によると、米国の成人の約16%が便秘に悩まされており、60〜101歳に限ってみるとこの割合は33.5%に増える。また、便秘は女性の方に多く、男性の1.5倍だ。

便秘の対処法として最も一般的なのが店頭で販売されている薬または処方薬の服用で、これらの薬は排便を促す大腸の神経をターゲットとする。しかしVibrant Capsuleは「一度飲み込むと、化学物質を使うことなしに腸壁の自然の活動電位を促進し、リラックスさせ、通じをよくします」と同社は声明で述べた。

同社によると、薬不要であるのに加えて、下剤を上回るVibrantの価値は排便がコントロールされることだ。一方の下剤は予期せぬ下痢や長期の副作用を引き起こす。また、下剤は日常的に服用するようになっているが、使い捨てのカプセルは週2〜5回でいい。カプセルは、服用したときに自動的に記録するアプリとつながっている。そして患者は排便があればアプリに記録し、月次レポートを医師に送る。そうすることで治療をモニターし、必要に応じて治療のプロトコルを調整することができる。

Vibrantが2019年に実施した臨床試験では、患者250人がダブルブラインドテストに参加した(133人がVibrant Capsule、117人が偽薬を服用)。結果は、Vibrant Capsuleを服用した患者の方に3時間以内に排便を経験した人が多かった。試験と結果はジャーナルNeurogastroenterology and Motilityに掲載された。

数年前に医師とエンジニアのグループが生きている豚の結腸でテストを行い、誤って結腸壁を挟んでしまった。その結果、豚はすぐに排便したことに気づいた。テストは実際には便秘とはまったく関係のないものについてで、偶然の発見だった。効果を再現するために、チームは3時間装着したときに排便を引き起こす振動ベルトを作った。

「問題は、排便を得るために誰も3時間揺さぶられたくないということでした」とベン−ツール氏は話した。そのことを念頭に、似たような結果をもたらしつつ振動は感じられない、人間の便秘の治療開発に着手した。Smart Pillなど、メカニカルカプセルはすでにマーケットに存在する。Smart Pillは消化管を通過しながら消化管全体の動きをレポートし、医師が消化管運動異常を診断できるようにする診断カプセルだ。なのでVibrantのチームは人々が安全にカプセルを飲み込んで排泄することができるとわかっていた。

ベン−ツール氏によると、過去20年、便秘の治療はほとんど変わっていない。治療プロトコルはずっと薬の服用にフォーカスしてきた。マーケットの規模、この分野におけるイノベーションの欠如、そして将来性を認識したとき、同氏はVibrantを率いたいと思った。

Vibrantは今回調達した資金を、初のマーケットとなる米国でのカプセル提供に使う計画だ。同社は現在、カプセルが立ち上げ当初から保険でカバーされるよう、ヘルスケアプロバイダー、そして保険会社と協議している。診断テストにしか使われないSmart Pillはまだ保険でカバーされておらず、患者が負担するコストは平均で約1400ドル(約15万3000円)だ。ベン−ツール氏とチームはアクセスしやすいプロダクトの提供を目指している。「当初から我々は既存の薬よりも高価になりそうなものは作らないことを使命としてきました」と同氏は述べた。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Vibrant医療資金調達

画像クレジット:Vibrant

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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