蛸のパウルはサッカー予測。アプリケーションのパウルは見たいビデオを予測する

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タブレットやスマートフォンの普及で、ビデオコンテンツの消費量が大いに上がってきている。そんな中、新たにリリースされた“PAUL”という名のAndroidアプリケーションは、見るであろうビデオを予測して、ダウンロードしてキャッシュしておいてくれるものだ。ネットワークの不備によるストレスを大いに軽減するものだ。

電力消費ピーク時の電力利用を控えるのに似て、PAULはこれまでに見たビデオ情報を解析し、これから見そうなビデオを予測して予めダウンロードしておくのだ。解析対象とするのは主に5つのメジャービデオ共有サービスだ。すなわちFacebook、YouTube、Twitter、CNN、そしてESPN ScoreCenterの5つだ。またLast.fmとも連携し、お気に入りのラジオステーションからプレイリスト掲載音楽のプレロードしてくれる(訳注:日本からはLast.fmのラジオステーション機能は利用できません)。

ビデオのダウンロードおよびキャッシュはWiFiネットワークに接続した際に行われる。キャッシュしておくことで、実際に閲覧する際にはネットワークがなくても大丈夫なようになる。

非常にシンプルなものだが、確かに便利なものだ。ストレス軽減には大いに役立ちそうに思う。

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また、ともかくPAULという名前が面白い。しかしなぜJohnやGeorge、あるいはRingoとかDave、それともSteveであったりLarryだったりしないのかはお分かりだろうか。実はこの名前、2010年FIFAワールドカップにおいて多くの試合結果を予想したタコにあやかったものなのだ。利用者の好みをきちんと予測していきたいという気持ちの現われというわけだ。

ちなみにCiscoの統計によると、2017年までには、モバイルデータ消費量の3分の2がビデオコンテンツになるだろうとのこと。オハイオ州コロンバスに拠点をおくinmoblyは、データプロバイダーや仮想移動体通信事業者(MVNO)も歓迎するサービスを提供することにもなるわけだ。

ところで、ピーク時の利用を避けるという発想は、inmoblyにとってはごく自然に出てきたものだ。と、いうのも同社はオハイオ州立大学の電気エンジニアリングの教授であるHesham El Gamal及びNayer Wanasによって2011年に設立されているのだ。こうしたアプローチに則ったサービスの将来性に期待している人も多いようで、inmoblyはTechColumbusなどからプレシード資金として65万ドルを調達している。

同社はスタンドアロンのアプリケーション(概念実証のためのもの)をリリースするとともに、大手ビデオプロバイダーとの連携可能性も探り、サービスコンセプトを確立しようとしているところだ。

しかし個人的な意見を言わせてもらうならば、ネットワーク帯域の節約効果などよりも、収集される嗜好性を示すデータにこそ一層の価値があるのではあるまいか。そうしたものにアクセスできるとなれば、コンテンツプロバイダーは大いに興味を示すだろう。全体的な仕組みも一層広く活用することができるようになりそうだ。

もしかするとinmoblyは、さまざまなシーンにて大いに利益をあげるサービスを提供できる可能性を持っているのかもしれない。

アプリケーションについて今のところ気になるのは、バッテリーのもちにどの程度影響するのかということだ。inmoblyのLiza Reedに質問をぶつけてみると以下のような回答を得ることができた。

「PAULはいつも活動しているわけではありません。WiFi経由でデータをダウンロードするために定期的に目覚めて動き出すのです。またPAULにはバッテリーチェック機能もついており、もしバッテリーが厳しくなっているようなら、エネルギーを使い果たしてしまうのを避けるために、コンテンツのダウンロードを行わないようになっています。少なくとも私たちのテスト段階では、PAULによって引き起こされたバッテリー問題というのはありませんでした。実感的にもそうですし、バッテリーマネジャー系のツールでも確認しています」とのこと。

なるほど、それであれば大丈夫なのかもしれない。

アプリケーションはこちらからダウンロードできる。

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(翻訳:Maeda, H)

投稿者:

TechCrunch Japan

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