街のおでかけメディアとSaaSでリアル店舗の集客課題解決へ、Patheeが三井物産らから6.5億円を調達

写真左からEight Roads Ventures Japanの村田純一氏、Pathee代表取締役の寺田真介氏、三井物産の大久保忠治氏

徒歩5分圏内の地域情報を検索できるサービス「Pathee(パシー)」を提供するPathee(2018年2月にトライトゥルーから社名変更)は9月25日、既存株主のEight Roads Ventures Japanに加え、三井物産(リード投資家)、地域創生ソリューション、第一勧業信用組合、シークウェル、SMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資により総額6.5億円を調達したことを明らかにした。

Patheeでは今回調達した資金を基にビジネスサイドおよび開発組織の体制強化を進める方針。コンシューマー向けのおでかけメディア「Patheeメディア(Web版のPatheeのような位置付け)」、実店舗のマーケティング課題を解決するSaaS「Patheeパートナー」の拡大を目指す。

なおPatheeにとって今回のラウンドは2017年6月にEight Roads Ventures Japanなどから3億円を調達したシリーズAに続くもの。同社ではそれ以前にも2014年にオプトベンチャーズらから1.3億円を、2012年にはサムライインキュベートから数百万円規模の資金を調達している。

目的に沿ったスポットを探せるローカル情報検索サービス

同社が以前から手がけているPatheeについては何度も紹介しているけれど、個人的には初めて使ってみた際に「周辺のスポット検索に特化した『かゆい所に手が届くGoogleマップ』のようなツール」という印象を受けた。

Patheeは現在地やこれから向かうエリアから「徒歩5分圏内にあるお店やスポット」を検索できるサービスだ。

たとえば急にトイレに行きたくなって現在地付近でトイレを探したい場合、待ち合わせの駅に早く着いてしまったので少し休めるスポットを探したい場合、出先で切らしてしまった文房具を買いたい場合など、目的に沿った場所を検索できる。

この“目的に沿った”というのがPatheeの最大の特徴であり、意外と他のマップツールでは実現できていない価値だ。

たとえば「新宿で少し休憩できる場所」を検索するために、「新宿 休憩」というキーワードでGoogle検索をしてみる。すると休憩所や展望休憩室などスポット名に「休憩」と含まれる場所に加え、たくさんのホテルが表示される。

一方Patheeの場合だとどうなるか。アプリで検索すると出てくるPatheeメディアのコンテンツを見てみると「新宿パークタワー8Fに誰でも利用できる休憩ラウンジがある」とか「小田急百貨店 新宿本館の屋上はベンチ数が申し分なくて子どもが遊べるスペースが充実している」といった密な情報が出てくるのだ。

Patheeメディアのコンテンツはアプリとも連動。該当するコンテンツがある場合はWebだけでなくアプリ上でもチェックできる

Patheeはユーザーの目的がより具体的なほど、そのポテンシャルを発揮する。たとえば前回も紹介したけれど「カレンダー」を探している場合、必ずしも文房具店に絞る必要はないかもしれない。

近年のドラッグストアではコスメやお菓子など医薬品以外の商品が充実しているお店も多いが、近くの店舗で「コスメ」を買いたいユーザーにとって、ドラッグストアでもニーズを満たせる可能性はあるだろう。

「ユーザーは達成したい目的があって検索し、お店に行く。“お店のジャンル”という括り方は時代に合っていない。目的をベースにお店を探せるメディアが求められているが、そこに対してアプローチしているサービスはなかった」(Pathee代表取締役の寺田真介氏)

そもそも飲食店の情報を扱うサービスは複数ある一方で、非飲食店の情報を整理したサービス自体が少ない。その情報をユーザーの目的に沿った形で検索できるようにしたことで、事業の成長に繋がっているという。

寺田氏によるとPatheeメディアは2017年6月の調達時から約1年でMAUが300%成長し、月間のPVも800万を超えたそう。90%がスマホからのアクセスということもあり、出先でお店を探す際に重宝されているようだ。

Patheeと連携したSaaSで小売店舗のデジタルシフトを支援

このPatheeメディアをフックとして、現在同社が力を入れ始めているのが小売店舗のデジタルシフトをサポートするSaaS型のプロダクト「Patheeパートナー」だ。

メディアの成長に伴って店舗からの問い合わせが増える中で、約100店舗へヒアリングを実施。そこで見えてきた店舗側のニーズに応えるべく、4月に同サービスをローンチした。

「Web上でのプレゼンスを高めたいというのはもちろん、特にこだわりのある店舗ではユーザーに対して伝えたい情報はあるけれど、上手く届けられていないという課題があった。突き詰めるとマーケティングに関して課題を感じている店舗が多かったので、そこを支援しようとヒアリングベースで作ったのがPatheeパートナーだ」(寺田氏)

もちろんInstagramやTwitterなどを器用に使いこなす小売店舗もあれど、全ての店舗がデジタル化の波に乗れているわけではない。そもそもホームページがなかったり、あっても更新が止まっている店舗も存在する。

飲食店は食べログやホットペッパーなどのグルメサービスが比較的普及しているが、非飲食店に関してはWebサービスを使いこなすという文化も根付いていない。海外であればYelpがローカルビジネスのレビューサイトとして飲食店以外の情報も広くカバーし、様々な企業が広告を出稿していたりもするけれど、日本の場合はまだ空いている領域と言えるだろう。

そんな小売店舗のマーケティング課題を解決すべく、Patheeパートナーでは「店舗がやらないといけないコンテンツマーケティングを全部カバーする」(寺田氏)プロダクトを展開していくという。

同サービスは簡易ホームページ作成ツールのような機能を備え、そこにインスタを始めとしたSNSやブログの最新情報をウィジェットっぽく自動で取り込むことで、情報を一箇所に集約することが可能。管理画面から複数のSNSやGoogleマイビジネスなど、リアル店舗を運営する際によく使うツールを一元管理することもできる。

そのほかチェーン店向けに店舗情報や権限を管理できる機能のほか、クーポンの発行機能や、Patheeメディアの記事と連携したアクセス統合分析機能などを備える。

各種ツールの運用にかかっていた時間を削減するだけでなく、分析機能を使って「どのような目的を持ったユーザーが店舗ページに来店しているか」を把握し、店舗の運用に活かせる点も特徴。一例をあげると、靴屋が「サンダルを紹介した記事とスニーカーを紹介した記事では、どちらがより多くのユーザーを集めているか」を分析することで、これまで掴めていなかったユーザーのニーズを探るといった具合だ。

寺田氏の話では4月のリリースから約5ヶ月で100店舗近くまで導入が進んでいるそう。今はチェーン店での利用が多く、ジャンルとしてはインスタ受けが良さそうなアパレルや靴、水着、ジュエリーといった「おしゃれ小売」店舗が中心だ。

今後は調達した資金も活用して、PatheeメディアとPatheeパートナーの2軸で事業の拡大を目指す方針。特にPatheeパートナーについては新機能も追加し、リアル店舗がその存在感を高められるような仕組みを整備しながらマネタイズも進めていくという。

「この領域はユーザー側だけをやっていても店舗だけをヨイショしていてもダメで、両軸を良くしていかないと難しい。その意味ではSaaSを通じて小売のデジタルシフトの手助けができれば、その情報を見るユーザーの実店舗での買い物も、もっとしなやかにできると考えている。ここを起点にビジネスも世の中も変えていくチャレンジをしていきたい」(寺田氏)

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TechCrunch Japan

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