衛星コンステレーションから地球上の山火事の端緒を見つけ警告するOroraTech

山火事がかつてないほどの壊滅的な、しかも毎年のような現象になっている。そのため、早期発見と対応が世界共通の関心になっている。山火事の絶好の火の見やぐらは宇宙だ。ドイツのOroraTechは、小さな衛星のコンステレーションで、グローバルな山火事警報システムを作ろうとしている。同社は最近調達したばかりのおよそ700万ドル(約7億7000万円)のシリーズA資金を、そのために投じる気だ。

山火事は毎年、数千万エーカーもの森林を破壊し、人間と地球に多様かつ甚大な被害をもたらしている。しかもそれは、一定の大きさを超えると手に負えなくなるため、早期発見と早期消火が何にも増して重要だ。

山火事の発見と消火は、時間が勝負だが、数百マイル四方の広大で乾燥した森林のどこでいつ出火するかわからず、これまで行われてきたヘリコプターの巡回といった方法では火が広がる速さに対応できないこともある。しかも航空機は高価であるだけでなく、乗員や作業員にとって危険な場合も多い。

OroraTechの計画では、約100基の衛星コンステレーションに特製の赤外線カメラを搭載して、地球全体もしくは出火の可能性の高い地域をすべて同時に観測する。そして、30秒以内に10メートル以上に広がった火を見つけたら報告する。

画像クレジット:OroraTech

このバイエルンの企業は当初、すでに宇宙にある10数基の衛星を利用して地上からサービスを提供し、その有効性を証明しようとした。しかし、今回新たな資金が得たことにより、自分の鳥を空に飛ばすことに決めた。それは靴箱サイズの衛星に特製の赤外線センサーを搭載したもので、2021年中に衛星コンステレーション企業のSpire Globalが打ち上げる予定だ。また、その画像処理システムは機械学習による処理を行うため、下流の処理が単純になる。

2023年にはさらに14基の衛星を打ち上げ、それらによって必要不可欠な改良をほどこそうとしている。

CEOで共同創業者のThomas Grübler(トーマス・グリューブラー)氏は、プレスリリースで「将来もっと範囲を広げて早めに警報を出すことができるように、私たちが独自に設計した特製の衛星コンステレーションを軌道に打ち上げたいと考えています。高名な投資家たちが、その資金と技術的ノウハウで私たちの計画の実現を支えてくれるのは、とてもうれしいことです」と述べている。

画像クレジット:OroraTech

その高名な投資家たちとは、この投資ラウンドをリードしたFindus VentureとAnanda Impact Ventures、そしてこれにAPEX VenturesとBayernKapital、Clemens Kaiser(クレメンス・カイザー)氏、SpaceTec Capital、およびIngo Baumann(インゴ・バウマン)氏らとなる。同社は、創業者たちのミュンヘン工科大学時代の研究がルーツであり、同大学も一部の株式を有している。

APEXのWolfgang Neubert(ウルフギャング・ノイベール)氏は、次のように述べている。「限られた財源で彼らがこれまで成し遂げたことは、本当にすばらしいものです。人の気持ちをワクワクさせるような意欲的で斬新な宇宙プロジェクトに参加できることは、とても誇らしいことです」。たしかに、最先端の宇宙データサービスが、お金もなく衛星もないという状態から起業したことは感動的だ。ただし1年前には、わずかな投資があったようだ。

地球の表面の赤外線撮影は、同社以外にも行っている。たとえばSatelliteVuは最近資金を調達して独自のとても小さなコンステレーションを打ち上げようとしているが、こちらは広大な森林ではなく、都市をはじめとした人間の関心が高い領域が対象だ。そしてConstellRは、収量の精密管理のために農地をモニターすることが目的だ。

資金を得たOroraは、拡張してその改良版の火災検出サービスを提供できるはずだ。しかし残念ながら、今年の北半球の山火事シーズンが始まるまでには、アップグレードできそうもない。

関連記事
産業や気候変動モニタリングで重要な赤外線と熱放射を観測する衛星画像のSatellite Vuが5.4億円調達、2022年に衛星打ち上げへ
地表温度をモニターする宇宙開発スタートアップConstellRがプレシードラウンドで約1.3億円調達

カテゴリー:宇宙
タグ:OroraTech衛星コンステレーション火災資金調達ドイツ

画像クレジット:OroraTech

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。