製品チームが簡単にユーザーインタビューを行い仮説を検証できるプラットフォームを英国Ribbonが開発

誰もが「ユーザー中心の企業や製品を作りたい」というが、具体的にそれをどうやって実現するのだろうか?もちろん、何よりもユーザーとの対話が大事……なのだが、それは無駄に時間がかかり組織化するのも面倒な作業であると、Axel Thomson(アクセル・トムソン)氏はいう。同氏は、英国のレシピ食材ボックス宅配サービスのユニコーン企業であるGousto(グスト)でプロダクトマネージャーを務めていた人物だ。

彼が起業したRibbon(リボン)という急成長中のスタートアップは、製品チームがユーザーを募集してインタビューを行い「継続的に仮説をテストして検証する」ことを容易にしたいと考えている。これによって、ユーザーにとってより良い製品になることが、期待できるというわけだ。このアイデアは、トムソン氏がGoustoでユーザーエクスペリエンスを専門とする製品チームを率いていたときに経験したニーズから生まれたものだという。

「私は当初、Goustoのグロースチームに所属し、ユーザーエクスペリエンスの向上とリテンションの増加に注力した製品とマーケティングの実験を行っていました。その後はプロダクトチームに移り、より総合的なユーザーエクスペリエンスの向上に取り組みました」と、トムソン氏は筆者に語った。

「これらの2つのチームでは、どのような機能や試みに賭けるかを常に決定しなければなりませんでしたが、それはつまり、ユーザーが何を求めているかを知るということです。そのための最善の方法は、ユーザーと実際に会話し、さまざまなコンセプトを試してもらうのが一番だということにすぐに気づきました。どの製品や機能がテストする価値があり、どの製品や機能が失敗する運命にあるのかについて、十分な情報に基づいた適切な判断を一貫して行うことがいかに難しいか、それは目から鱗が落ちる思いでした」。

トムソン氏によると、経営陣の間では、製品チームはユーザー中心であるべきで、製品はユーザーが「本当の問題」を解決するのに役立つように設計されるべきだというのが定説になっているという。しかし実際には、ユーザーが何を考え、何を求めているのかを知ることは困難であり、またユーザー調査やインタビューを継続的に行うことは非常に時間がかかる。

「製品チームは、インタビューの設定に何日もかかることが多く、結果的にフィードバックのループが遅くなり、製品の開発や実験が遅れることになります」と、同氏はいう。「あるいは、チームはAmplitude(アンプリチュード)やMixpanel(ミックスパネル)などの分析プラットフォームから得られる定量的なデータに頼ろうとしますが、これらは製品が出荷された後にユーザーがどのように使用したかを知ることができるだけです」。

Ribbonを使えば、創業者によれば「Uberで配車を頼むのと同じくらいの時間」でユーザーインタビューを始めることができるという。製品チームは、Ribbonのウィジェットを自社のウェブサイトにインストールするだけで、ユーザージャーニーにおけるどの段階でも、ユーザーを募集してビデオインタビューを行うことができる。

「私たちは、製品チームがユーザーインタビューや、最終的にはあらゆる種類の定性的なユーザーリサーチを、迅速かつ継続的に行えるようにしたいと考えています」と、トムソン氏は説明する。

Ribbonは、プロダクトマネージャー、デザイナー、ユーザーリサーチャーなど、ユーザーとの会話を通じて自分のアイデアを検証することがメリットになる人たちを対象にしている。しかし、トムソン氏によれば、ユーザーリサーチによるメリットは、これらの役割の人々だけに限るものではないという。企業にはユーザーインタビューの結果を「保有」する専門チームや担当者がいることも多いが「リサーチ結果をソーシャル化し、企業全体でユーザーリサーチに参加する」ことへの関心が高まっていると、同氏は主張している。

「ユーザーリサーチプラットフォームとしての私たちの目標は、私達のプラットフォームのユーザーが、すばらしいリサーチを行い、それをチームで共有することを容易にすることで、自分のチームや組織の中でリサーチの伝道師となることです」と、トムソン氏は付け加えた。

もちろん、その活動はまだ始まったばかりだ。Ribbonは2020年10月末にMVP(Minimum Viable Product、実用最小限の製品)をProduct Hunt(プロダクトハント)のコミュニティに公開した。ロンドンを拠点とするこのスタートアップは、これまで自力での開発を行ってきたが、MMC Ventures(MMCベンチャーズ)、RLC Ventures(RLCベンチャーズ)、およびロンドンのエンジェルグループから、プレシード資金として20万ポンド(約3020万円)を調達したことを、現地時間3月25日に発表した。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Ribbonイギリス資金調達

画像クレジット:Ribbon

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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