親しみ感ある短い音声メッセージを友達と共有するCappuccino、オーディオSNSが次のフロンティアか

CappuccinoはアンチClubhouseと言えるかもしれないが、同社はここ数年間でアプリの独自のコンセプトを練り上げてきており、CEOはClubhouseに対して競合だとは考えていない。Cappuccino自体が興味深いソーシャルアプリであることは確かだ。忠実なユーザーベースを引きつけており、TikTokの動画がバズってから特に顕著になっている。

同スタートアップは、友達とポッドキャストを録音できるアプリを構築中であることを明らかにした。ここ数年、ポッドキャストの存在が多くの人に認知されつつある。ポッドキャストでは、オーディオ番組をサブスクライブしたり、オンデマンドでエピソードを視聴したりできる。

まず、人々は彼らなりの興味を持ってポッドキャストの視聴を開始する。しかし、友達同士でポッドキャストの話題になったときには、ホストのパーソナリティの魅力からその番組を気に入っているという話になるだろう。

ポッドキャストを聞くことは、他に類を見ないコンテンツ消費体験だ。YouTubeで特定のユーチューバーが公開した動画をすべて見たり、Instagramで誰かをフォローしてその人の個人的な生活をよく知って親しみを覚えたりすることもあるだろう。

しかし、イヤフォンを耳に入れたまま何時間も人の話を聞くのはかなり親密な体験だ。ポッドキャストでは、何人かの友人と部屋に座って彼らの話を聞いているような感じがする。

ただし、お気に入りのポッドキャストのホストは友達ではない可能性が高い。

そこにCappuccinoの特性が活かされるニーズがある。同アプリでは、友達や家族とグループを作ることが可能だ。グループのメンバーは、Beanというショートオーディオメッセージを録音できる。自分が考えていることについて数分間語るものだ。翌朝、グループのメンバーに「朝のカプチーノが入りました」というお知らせが届く。

「再生」をクリックすると、クールなイントロ音楽が流れ始め、友人からの音声メッセージが聞こえてくる。これは単なるボイスメモの連なりではなく、友達からのハッピーなメッセージ、楽しいメッセージ、思いやりのあるメッセージがミックスされたリラックスした雰囲気が感じられるものだ。

Cappuccinoはソーシャルアプリでありながら、親しい友人や家族に焦点を当てている。フォロワーを増やそうとするものではなく、公開投稿を共有するものでもない。すべては個人仕様に設計されており、実生活の友達のグループにフォーカスされている。

いろいろな意味で、Snapchatのグループストーリーを彷彿とさせる。しかしCappuccinoの主たるインスピレーションの源は、Snapchatではなくポッドキャスティングであった。

画像クレジット:Cappuccino

プロトタイプを早期に作成し、頻繁にイテレーションを行う

同社の共同創設者兼CEOのGilles Poupardin(ジル・プパルダン)氏にアプリの起源について話を聞いたところ、Cappuccinoはプパルダン氏の最初のスタートアップではないようだ。同氏はWhydで数年間、スタートアップとしてのあらゆる経験を積んでいる。資金調達ラウンドを行い、事業の方向転換を決め、ベイエリアのY Combinatorに参加した後、自社のCTOと道を分け、同スタートアップの閉鎖を決断した。

Whydは、AmazonのEchoやGoogleのNestが本格的に登場する前に、ボイスコントロール機能を備えたコネクテッドスピーカーの開発に取り組んでいた。しかし大手テクノロジー企業と競合するのは厳しく、ハードウェアの分野で競争することはさらに困難を極める。

その後Whydのチームは、ユーザーが独自の音声アシスタントを作成できるサービスに取り組んだが、それも期待どおりにはいかなかった。

2019年の夏、Olivier Desmoulin(オリヴィエ・デスモラン)氏はプパルダン氏に連絡を取った。当時デスモラン氏は、オンラインのプライバシーを守るためのアプリであるJumboの設計に取り組んでいた。

「当時、私は会社を再び始めたいかどうか迷っていました。私が(Whydで)行った方向転換は15回にも上りました」とプパルダン氏は語った。

しかし、両氏はソーシャルアプリの次のフロンティアとして、ポッドキャストとAirPods、そしてオーディオ全般について議論し始めた。基本的な前提はシンプルだった。ポッドキャストを聞いている人はたくさんいるが、自分でポッドキャストを作っている人はほとんどいない。

あなたの親しい人が自分のポッドキャストは持っていなくても、InstagramやSnapchatには時々投稿する理由は3つある。

ポッドキャストは長い形式のコンテンツである。

ポッドキャストを録音して公開するのは技術的に難しい。

自分を知らない人たちをオーディエンスとして引きつけようとしている。

Cappuccinoでは、短いコンテンツ、録音しやすい、パーソナルなものという3つの点で従来とは逆のスタンスを目指している。音声を録音する人にとっても、音声を聞く人にとっても、より良い体験になるはずだ。

Cappuccinoの最初のバージョンはアプリではなく、サイドプロジェクトとなっている。「WhatsAppでグループを作って10人から15人を招待し、彼らが録音したボイスメモをオリヴィエへ送ってもらいました」とプパルダン氏は説明する。

オリヴィエ・デスモラン氏が毎晩、GarageBandを使ってすべてのボイスメモをミックスしたものを作成する。朝、同氏はWhatsAppのグループ会話に「カプチーノができました」とメッセージを送る。

画像クレジット:Cappuccino

グループメンバーから肯定的なフィードバックを得た後、プパルダン氏とデスモラン氏はさらに前進してアプリの構築を目指すようになったが、ユーザーを引きつけるソーシャルアプリの作成が非常に難しいことを知っていた。誰も使わないようなものを開発することに時間を浪費しないように留意しながら、迅速に開発を進めた。

「私たちは試しにアプリの最初のバージョンを4日で構築しました。バックエンドサービスとしてAirtableを採用しています」とプパルダン氏は続けた。

またしても、ベータ版ユーザーからのフィードバックはかなり良いものだった。両氏はこのアプリを一部の投資家に披露し、最終的にAlexia Bonatsos(アレクシア・ボナツォス)氏(Dream Machine、元TechCrunch編集者)、SV Angel、Kevin Carter(ケビン・カーター)氏(Night Capital)、Niv Shrug Capital、Jean de La Rochebrochard(ジャン・ド・ラ・ロシュブロシャード)氏(Kima Ventures)、Kevin Kuipers(ケビン・クイパース)氏、Willy Braun(ウィリー・ブラウン)氏、Marie Ekeland(マリー・エケランド)氏、Solomon Hykes(ソロモン・ハイクス)氏(Dockerの創設者)、Pierre Valade(ピエール・ヴァラード )氏(SunriseおよびJumbo Privacyの創設者)、Moshe Lifschitz(モシェ・リフシッツ)氏(Basement Fund)、Anthony Marnell(アンソニー・マーネル氏)、Bryan Kim(ブライアン・キム)氏、Uncommon Projectsなどから120万ドル(約1億3000万円)を調達した。

WhydでかつてCTOを務めていたGawen Arab(ガウエン・アラブ)氏は、再びプパルダン氏とチームを組み、時間の循環がフラットであることを証明した。同氏は現在、Cappuccinoの共同創設者兼CTOとなっている。

画像クレジット:Cappuccino

人にあなたについて話してもらうこと

Cappuccinoのチームは、プレス関係や広告に関しては積極的ではないものの、興味深い急上昇を見せながら徐々に成長している。

2020年の夏、Product HuntのスーパーユーザーであるChris Messina(クリス・メッシーナ)氏がCappuccinoについての記事を書いたが、同スタートアップがProduct Huntでの特集を目指していなかったことは少々驚きだった。それでも、共同創設者たちはProduct Huntコミュニティからの質問に熱心に答えた。

翌日、Product Huntのニュースレターに「次に来るビッグオーディオソーシャルネットワークか?」というタイトルでCappuccinoの特集が掲載され、一部の新規ユーザーを呼び込むことになった。

画像クレジット:Cappuccino

しかし、数週間前にBrittany Kay Collier(ブリタニー・ケイ・コリアー)氏がTikTokでCappuccinoについての動画を公開したことで、事態は本格的に進展し始めていた。同氏はInstagramでプパルダン氏に直接メッセージを送り、多くの再生回数を獲得していることを伝えた。最終的にこの動画は380万の再生回数と85万のいいねを集めている。

プパルダン氏はその2日後、チームへの参加をコリアー氏にオファーした。プパルダン氏はコリアー氏がイエスということをひそかに期待していたし、コリアー氏自身もCappuccinoのような会社で働くことを内心夢見ていた。

ここ数週間で、Cappuccinoは22万5千人に上る新規ユーザーを獲得した。13万のグループが生まれ、約100万件のオーディオストーリーが配信されている。

チームはTwitterでCappuccinoに関する公開記事を読むと、アプリがコアユーザーベースを得ているように感じるという。最も忠実なユーザーは20代の若い女性のようだ。彼女たちは長距離の親友と連絡を取り続けたいと思っている。

大学を卒業後に、それぞれ別の地域へ移っていくこともあるだろう。あるいは現在のパンデミックの影響で、自宅で足止めされているかもしれない。

新規ユーザーは、録音ボタンを押してストーリーを語ることに何の支障も感じないようだ。WhatsAppやiMessageのボイスメッセージに慣れているのだろう。

「オーディオメッセージを媒体とすることが魅力的なのは、Instagramで写真を撮ったり、Snapで写真を送ったり、TikTokでビデオを作ったりしたりするときとは違うストーリーを伝えられることです」とプパルダン氏は語っている。

同社が目指す領域はどこだろうか。Clubhouseはすでに800万ダウンロードを突破している。プパルダン氏は、ソーシャルグラフ、オーディオフォーマット、ユーザーベースにおける差異を挙げた。同氏によると、複数のオーディオアプリに十分な参入の余地があるという。

「動画にはYouTube、Twitch、TikTokなどがありますが、これらはすべて異なるフォーマットになっています。オーディオも同じトレンドに追随する可能性があります」とプパルダン氏はいう。また、ソーシャルアプリがスマートフォンのカメラを取り入れたのは、カメラが自社で開発するには厳しいハードウェア機能だったからであるが、オーディオも自然にそのステップを踏むことになりそうだ。

プパルダン氏は今のところ、他のオーディオスタートアップとは競合していないと感じている。同氏は、人々が目を覚ましたとき、Spotify上のランダムな音楽の代わりにCappuccinoを聞くことを期待している。「孤独を感じる人たちに手を差し伸べるようなものとなるでしょう」と同氏は語った。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Cappuccinoポッドキャスト音声ソーシャルネットワークコラム

画像クレジット:Cappuccino

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(文:Romain Dillet、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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