訪日外国人旅行者解析「inbound insight」運営のナイトレイが1.3億円の調達、今後はより幅広いサービスを提供

Inbound insightの「SNS解析」のデータの一部

Inbound insightの「SNS解析」のデータの一部

東京に住んでいると、この数年で旅行者らしき外国人を見かける機会が確実に増えたのを感じる。実際のところ訪日外国人旅行者は増加の一途にあり、2016年には過去最高の2403万人超という数字を記録した。政府は2020年の訪日外国人旅行者4000万人という数字を掲げており、インバウンド対策のニーズは高まるばかりだ。

そんな彼らの行動をSNSや各種データから解析するのが「inbound insight」だ。サービスを提供するナイトレイは2月27日、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、レジェンド・パートナーズを引受先とした総額1億3000万円の資金調達を実施した。

ナイトレイ代表取締役の石川豊氏

ナイトレイ代表取締役の石川豊氏

inbound insightはSNSへの投稿(公開情報)をもとにして訪日外国人観光客の位置や移動の情報を可視化する独自のSNSデータ解析に加え、ドコモ・インサイトマーケティングやヴァル研究所などのパートナー企業、経済産業省などの官公庁が持つデータを元にした訪日外国人の統計データなどを提供している。現在、無料プランを含めて約4400社が利用中だ。

「現場で訪日外国人に大して製品やサービスを提供する企業のほか、決済や広告などを企業に提供したい人達が利用している。国ごとの旅行者の滞在傾向までを読み解くことができると、『ある国の旅行者が増加するタイミングで、どんなアクションをすべき』というところまで明確にしてソリューションを提供できるようになる。これまではインバウンドに関して、仮説を立てることができてもその裏付けや効果検証が難しかった。ナイトレイはそういったこれまで難しかった部分をお手伝いしている」(ナイトレイ代表取締役の石川豊氏)

ユーザーからの声でインバウンド解析に挑戦

ナイトレイの設立は2011年。当初から「ロケーションデータの解析で未来をつくる」というコンセプトを掲げてSNS解析サービスを手がけてきたが、ビジネス的には苦戦。「ニーズや新しさは評価されて売上こそ挙げていたが、上場や資金調達を目指せるまでではないという状況だった」(石川氏)という。そんな中でユーザーの提案でインバウンドに特化した解析サービスの提供について相談を受け、inbound insightの開発に着手した。「データフォーマット自体は既存サービスとそんなに変わるモノではなかったが、例えば英語でのSNS投稿について、ただそれだけではどの国の人か判断できないが、そこまでを解析すると言うモノにしたのが強み」(石川氏)

ナイトレイでは今回の調達をもとに、inbound insightの開発を強化するほか、カープローブや各種の位置情報や移動情報を解析するロケーションインテリジェンス事業、さらにはアプリ事業(すでに外国人観光客向けの日本情報提供アプリ「ZouZou」と、日本人向けの昼食提案アプリ「AbcLunch」をリリースしている。いずれも無料)を展開。3つの領域での事業の拡大を目指すとしている。

今後の事業展開のイメージ

今後の事業展開のイメージ

「アプリやセンシングデバイスなど、ロケーションデータはナイトレイだけで取得できない範囲にもたくさんあるので、パートナーらとそれを解析していく。ロケーションは特殊なデータ。時間と緯度経度というシンプルなものだが、どういう意味を持つかの判断が難しい。ナイトレイには、SNSを元にして『どこでどんなことが起こっているか』という情報がリアルタイムに集まっている。これを前提にしてデータを解析すると、単独のデータでは分からないことが見えてくる。1つの例だが、『駐車場に3時間車を止めていた』という1つのデータから、その周辺にゴルフ場があって、さらにその場所が盛り上がっていたというデータがあれば、『その3時間は車を止めてゴルフに行っていた』というところまで分かる」(石川氏)

ちなみに石川氏に東京オリンピック開催後——2020年以降のインバウンド需要に聞いたところ、「世界的に見れば、フランスなどの外国人旅行者は約8000万人。日本でも国として現実的に受け入れられる気がしている。またオリンピックが終わったからといって『もうその国はいいよね』となると考えるのは理論的でない。一方で為替の影響はある。円高になると日本には行きづらい。だが、口コミも含めて『日本ってすごい、また行きたい』と思う人は増えている」という回答があった。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。