誰もが容易に対話的学習コースを作れるGoogleのOppia, 完全オープンソース(拡張自由)でローンチ

Googleはこのところますます、教育の世界に手を伸ばしてきた。中でもとくに同社は、テクノロジが学習の方法をどう変えるのか、ということの探究に関心があるようだ。Google Play for EducationGoogle Playを統合したSamsungのAndroidタブレットで学校の教室に進出し、またMOOCなどのオンライン学習コースを立ち上げるなど、本格的な高等教育の分野にも手を出し始めている。

今日(米国時間2/26)のGoogleは、初等統計学を一般大衆に教えるMOOCコースと並ぶ、教育分野の第二の実験も開始している。Googleのオープンソース関連のブログ記事によると、その実験プロジェクトはOppiaと呼ばれ*、“誰もがオンラインの対話的な活動の場を容易に立ち上げることができて”、そこからほかの人たちが学べるようにすること、を目標としている。要するに、MOOCなどの既製の学習コースを提供するのではなくて、誰もが簡単に利用できる学習コース開設サービスを提供するのだ。〔*: Oppia, フィンランド語で「学ぶ」。〕

Googleの説明によると、Oppiaプロジェクトを立ち上げた動機は、たしかに今ではビデオやSMSなどで配布される教育コンテンツの量は増えているものの、その多くが静的で非同期(ノン・リアルタイム)であることだ。つまり講義をそのままデジタル化~オンライン化しても、インターネットが得意とする対話的諸活動やコミュニケーション、フィードバックなどの機能はまったく生かされない。

Googleがオープンソースで開始するこのプロジェクトのねらいは、Googleが提供するフレームワークの上で誰もが…デベロッパでない人でも…簡単迅速に対話的な学習体験を開設提供でき、それがGoogleのコンテンツ資産にもなることだ。また同時に教師たち、教える立場の人たちは、このサービスを自主的創造的に利用することによって、‘テクノロジに自分の仕事を奪われる’という不安や恐怖から完全に免れることができる。

つまりOppiaが提供しようとしているのは、人と人(eg.教師と生徒)とのリアルタイムの対話性をしっかりと温存したオンライン学習、それを、誰もが実現展開できるためのフレームワークだ。それにより、それぞれの生徒個体の特性に合わせた教え方が可能になる。GoogleはOppiaを説明する文の中で、これまでのオンライン教育は人を海辺の釣り場まで連れていくことはできるが、Oppiaはその“コンピュータの力を生かし個人化されたフィードバックシステム”により、人に実際に魚の釣り方を教えることができる、と述べている。

そのシステムは学習の過程で、対話(フィードバックや質問など)の進行の中から、その特定の学習者に関するデータを集め、それに基づいて教え方や教材の構成などを柔軟に調整する。また、教師が出した問題に学習者が答を提供した場合でも、システムが自動的に正解を教えたり間違いを指摘したりはしない。人間教師と生徒とのあいだの、重要な対話性の契機を、システムが奪い取ることはしないのだ。

生徒が犯した間違いの性質を把握して、それらに個別に適切に対応していくことは、あくまでも教師の仕事だ。Oppiaは、教師と生徒とのあいだの、そういうフィードバックのやりとりを、便利な入力インタフェイスなどで支援し、両者間のコミュニケーションを円滑に、そして迅速にできるようにする。

またOppiaが教師と生徒に提供する入出力インタフェイスの構造など、フレームワークとしてのOppiaのアーキテクチャは、完全にオープンソースなので、今後開発に参加してくるデベロッパが…教える側学ぶ側のニーズに対応して…自由に拡張できる*。そしてOppia上でユーザが作り、拡張改造していくレッスンは、ほかのWebページに埋め込むことができる。埋め込みはレッスンの特定のバージョンを参照するので、そのページのユーザがレッスンの将来のバージョンに惑わされることはない。そうやって複数のバージョンを保存できることは、教える側にとっても便利だ。〔*: たぶん科目の違い…外国語学習、初等電子工学、etc.…や、教師の考え方や個性で、構成を自由に変えられた方が、ありがたいだろう。〕

また、個々の教師が孤立することなく、レッスンの作成や変更に関してほかの人たちとコラボレーションできる。バージョンコントロールの仕組みもあり、また学習者にいろんなパラメータを結びつけて、より詳細で深い対話的な学習体験を作ることも可能だ。しかもOppiaにはすでに、応答性の優れたモバイル用のUIも用意されている。

Oppiaの場合おもしろいのは、Googleのプロダクトではない、とGoogle自身が明言していることだ。完全なオープンソースをベースとして、今後いろんなデベロッパやユーザの手によって、多様な形で作られていくもの、とGoogleは位置づけている。メンテナンスも当然、各コミュニティがやっていく。その方がむしろ、オンライン学習~オンライン教育の、あるべき姿かもしれない。静的固定的なものが最初からがっちりとあるよりは。

いずれにしても、完成されたプロダクトではなく、人びとが今後その上で教育/学習という名の多様なレッスンプロダクトを作っていくためのフレームワークであり、プラットホームでもあるOppiaは、今後実際にそれがどう使われていくかで評価が決まる。学習ツールではなく学習ツールを作っていくためのツールだから、可能性としてはものすごく広い層のユーザに対応する。個人だけでなく、企業や団体も利用したいだろう。そういった広い層の、文字通り誰もが有効にOppiaを利用できるために、Googleにはドキュメンテーションを多様に充実させてほしい、と願いたい。

Oppiaのホームページがここにある。説明のためのYouTubeビデオもある:

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。