貨物輸送業向け生産性プラットフォームの英Vector.aiがシリーズAで約16.5億円を調達

コロナ禍でサプライチェーンに負荷がかかり続ける中、ここ2年間は貨物輸送業がスタートアップで最も熱い分野の1つになっている。実際、世界の貨物輸送業は1990億ドル(約21億9000億円)規模の市場になっている。そして、熱い分野である証拠もどんどん増えている。

2020年11月にデジタル貨物フォワーディングのFortoは、Inven Capitalが主導するラウンドで新たに5000万ドル(約55億円)を調達した。2021年4月にはNuvocargoが1200万ドル(約13億2000万円)を調達し、貨物ロジスティクス業界のデジタル化を手がけている。同年5月には貨物輸送業プラットフォームのZencargoが4200万ドル(約46億2000万円)を調達し、6月には貨物フォワーディングのsennderが10億ドル(約1100億円)以上の評価額で8000万ドル(約88億円)を調達した。7月には貨物輸送業者の輸送費管理を簡単にするFreightifyが250万ドル(約2億7500万円)を調達した。

関連記事:欧州の物流業界に一石を投じる貨物フォワーディング企業Sennderが約88億円調達、評価額約1100億円超えに

そして米国時間9月13日、AIプラットフォームで貨物輸送業者の生産性を向上する英国のVector.aiが、米国のVCであるBessemer Venture Partnersが主導するシリーズAで1500万ドル(約16億5000万円)を調達した。このラウンドにはこれまで投資していたDynamo VenturesとEpisode 1も参加した。Bessemerの投資は、米国のVCが英国やヨーロッパのテックシーンへの参入を続けている表れでもある。

Vector.aiは貨物輸送業向けの自動化システムとして国際進出を加速していく計画だ。

Vector.aiが取り組んでいるのはこんな問題だ。貨物輸送業者は顧客のメールなどから追跡して出荷をするような、同じことを繰り返す管理業務に時間を取られ、価値の高い活動に集中できない。Vector.aiは、同社が開発する機械学習プラットフォームで管理業務を自動化できるとしている。

Fracht、EFL、NNR Global Logistics、The Scarbrough Group、Steam Logistics、Navia Freight、その他トップ10に入る貨物輸送業者がVector.aiを利用している。

Vector.aiの共同創業者でCEOのJames Coombes(ジェームズ・クームズ)氏は次のようにコメントした。「貨物輸送業の従業員のほとんどは、1件の出荷に関わる10〜25の関係先との連絡や、貨物の動きと書類の調整に大半の時間を費やしています。連絡には通常、メールと添付書類が使われます。(中略)貨物の量は世界的に増え続け、Brexitによる負担や中国の港の閉鎖のようなコロナ禍の影響も加わって、貨物輸送業界は人手不足や急激な人件費の上昇、そして売上の減少や荷物の傷みで金銭的な負担となる配送の遅延に直面しています。貨物輸送業者にはローレベルの処理で時間を無駄にする余裕はありません。そこで我々は基本的な作業を自動化するテクノロジーを開発しました」。

Bessemer Venture PartnersのパートナーであるMike Droesch(マイク・ドロエシュ)氏は次のように述べた。「Vector.aiは急速に成長しつつある貨物輸送業のワークフローの自動化、デジタル化ツールの分野で早くから活躍するリーダーの1つです。同社はこの業界に的を絞った直感的な製品を開発しました。同社の製品はすでに最大手クラスの貨物輸送業者を獲得しています」。

Vector.aiの競合には、950万ドル(約10億4500万円)を調達した英国のShipamax、120万ドル(約1億3200万円)を調達した米国のRPA Labs、7590万ドル(約83億4900万円)を調達した米国のslync.ioがある。

画像クレジット:Witthaya Prasongsin / Getty Images

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。