質問ベースで弁護士とスタートアップをマッチングする「ATTIVITA」公開

弁護士を探すためのオンラインサービスといえば、今や老舗となった「弁護士ドットコム」や、トラブル種別に合った弁護士に相談できる「カケコム」など、既にいくつかのサービスが提供されている。そんな中、10月15日に正式リリースされた「ATTIVITA(アッティヴィタ)」は、企業、特に立ち上げから間もないスタートアップが弁護士を探すためのクローズドな会員制プラットフォームだ。

24時間後に一斉公開される回答から弁護士を選択できる

ATTIVITAでは、まず登録企業が匿名で弁護士への相談を投稿。質問から24時間後、それまでに寄せられた複数の弁護士からの回答が、こちらも匿名で表示されるようになる。企業側は回答を比較した上で、適切と思われる弁護士にリクエストを送信する。リクエストは複数の弁護士に送ることが可能だ。リクエストを送信した後は互いの実名が分かるようになり、最終的にはリアルに接点を持つことができる。

また登録済みの会員は、ほかの企業の相談履歴を匿名の状態で閲覧することが可能。相談内容は、業種や従業員数など細かく設定されたカテゴリごとに探せるので、アクティブに質問を投げかける前に自社の悩みと同様の相談がないか、どのように解決すれば良いのかを確認する「企業法務メディア」としても使える。さらに回答した弁護士には、ほかのユーザー企業もリクエストを送信して連絡を取ることが可能だ。

ユーザー企業側は、いずれの機能も無料で利用でき、登録料・手数料は不要。弁護士に直接個別で払う費用だけを負担すればよい。弁護士側は、プラットフォームへの掲載料金を月額制のサブスクリプション費用として支払う。

サービスを運営するATTIVITA代表取締役の鷲尾悠介氏は「相談する方は企業名を知られたくない場合も多く、匿名なら相談しやすい。また弁護士側も匿名であることから、(知名度などではなく)回答内容から適切な弁護士を選択することができる。会員制匿名サービスであることにより、長期的に見てコミュニケーションの質も上がると考えている」と話している。

またATTIVITAは個人向けの相談についてはバッサリと切り捨て、企業法務に特化したB2Bサービスとして展開している。鷲尾氏は「弁護士は基準を持って選んでいる。回答の質も、マッチング精度も上げるため、幅広い領域の中から専門性を持つ人が回答するようにしている」と説明する。

ユーザー企業は登録後、自分の質問以外では誰が回答しているかは特定できないが、弁護士の一覧は見ることができる。リリース時点での登録弁護士は50名以上。「下町ロケット」の神谷弁護士のモデルとして知られる鮫島正洋氏など、スタートアップ界では著名な弁護士も多いと鷲尾氏はいう。

もうひとつ、ATTIVITAの大きな特徴として鷲尾氏が挙げるのが「質問への回答が24時間後に一斉公開されること」だ。ATTIVITAでは24時間後に回答をオープンするため、ユーザー企業だけでなく、弁護士もほかの弁護士がどのような回答をしているかを見ることができない。このため「Yahoo!知恵袋」などのQ&A掲示板サービスでありがちな「誰かが答えたのでもう回答しなくていいや」ということになりにくい。

利用企業の質問をきっかけとしたQ&Aベースでサービスが成り立つことから、「他のサービスより弁護士が意欲的・能動的に回答してくれることが期待できる」と鷲尾氏はいう。

「Q&Aの一斉公開は、回答の速さよりクオリティを重視したもの。優秀な弁護士ほど暇ではないので、回答時間を確保する仕組みとして採用した。ユーザーに比較されるとなれば、弁護士もがんばって良い回答をしようとするはず。とはいえ、期間が長すぎて1週間もかかるとなっても利用者が待てないので、24時間に設定している」(鷲尾氏)

「スタートアップが本業に集中できる環境を提供したい」

鷲尾氏は、前職では弁護士ドットコムで3年1カ月、営業に携わっていた人物。1260人の弁護士と対面で会ってきたという。その中で「弁護士ドットコムは誰もが弁護士を検索できるサービスで、個人間の問題を解決する街の弁護士にとってはよいが、企業法務とはミスマッチがある」と感じていたそうだ。

「個人事業主としての弁護士には、企業の力になりたいという人も多い。また、マッチングサービスではスタートアップ、ベンチャー企業をサポートしたものがない。スタートアップでは、本業に集中するあまり、リーガル対応の優先度が下がりがちだ。例えば契約書のサンプルが載っているサイトからダウンロードして、そのまま使うといったことがよくあるが、これで問題が起きれば結果として本業に影響が出てしまう」(鷲尾氏)

ATTIVITA代表取締役 鷲尾悠介氏

鷲尾氏は「法律は国のルールだ。資金などの面でVCやメンターに相談する起業家は多いのに、法務面では弁護士に相談できていないのはなぜか」と考え、企業が弁護士に相談しやすいプラットフォームづくりを目指して、2018年7月にATTIVITAを創業した。

今後の目標について尋ねると、鷲尾氏は「スタート時点で弁護士登録数50名のところを、半年で100名にしたい。また企業登録数では1年後に1000社を目指す」と答えた。

「スタートアップに『弁護士に会えて良かった』という成功体験を提供し、本業に集中できる世界を実現したい。1年後までには、さまざまな質問と回答を蓄積し、企業法務に関する知見が詰まった法律メディアの立ち上げも計画したい」(鷲尾氏)

ATTIVITAはイタリア語で「活発(Activity)」を意味するという。鷲尾氏は「中長期的には、公認会計士など企業を活性化する専門家と企業とを結び付け、企業が本業に集中できる環境を弁護士以外の領域でも用意したい」と語っている。「より専門家と企業の生産性を上げ、企業に貢献したい。『プロフェッショナルに眠っている潜在的価値を解き放ち、日本から全世界を活性化させる』という当社のミッションに一歩でも近づけるよう、努力していく」(鷲尾氏)

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。