赤十字国際委員会のデータが流出、「弱い立場にある」51万5千人の個人情報が盗まれる

赤十字国際委員会(ICRC)の業務委託先がサイバー攻撃を受け、紛争や移住、災害などで家族と離ればなれになった「非常に弱い立場にある」51万5000人以上の個人データが流出していることが明らかになった。

赤十字国際委員会は、データの保存に使用しているスイスの業者の名前や、セキュリティ事故の原因については明らかにしていないものの、これらのデータは60以上の赤十字社および赤新月社のナショナルソサエティから提供されたものだと述べている。

声明の中で、赤十字国際委員会は攻撃者に対し、データの保護必要度を考慮して、情報を公に共有したり漏洩させたりしないようにと訴えている。

「あなた方の行為は、すでに計り知れない苦しみに耐えている人々に、さらに多くの傷と痛みを与える可能性があります。今、あなた方が手にしている情報の背後にいる実在の人物、実在の家族は、世界で最も無力な人々です。どうか正しいことをしてください。このデータを共有したり、売ったり、漏洩させたり、悪用したりしないでください」と、声明には書かれている。

この情報漏洩を受けて、同団体は紛争や災害で離ればなれになった家族を再会させることを目的とした「Restoring Family Links(家族のつながりの回復)」プログラムを停止した。

赤十字社の広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、盗まれた情報には、氏名、所在地、連絡先の他、同組織のプログラムの一部にアクセスするための認証情報も含まれていたとのこと。

今回のサイバー攻撃によって、51万5000人以上の氏名、所在地、連絡先などの個人情報が侵害された。被害を受けた人々の中には、行方不明者とその家族、親のいない子どもや親と離ればなれになった子ども、拘留者、その他の武力紛争や自然災害、移住により国際赤十字・赤新月社運動から支援を受けている人々が含まれる。また、これらのプログラムに従事する約2000人の赤十字社・赤新月社のスタッフおよびボランティアのログイン情報も流出した。赤十字の広報担当者であるCrystal Ashley Wells(クリスタル・アシュリー・ウェルズ)氏によれば、システムが細分化されているため、ICRCの他の情報が漏洩することはないという。

国際的な人権団体や災害救援機関がハッカーの標的となることは増えている。2021年、国連は正体不明のサイバー攻撃者にネットワークを侵害された。また、5月にMicrosoft(マイクロソフト)は、米国国際開発庁のメールアカウントがハッカー集団に乗っ取られ、数千人に悪意のあるメールが送信されたことを明らかにした。

画像クレジット:Alex Wong / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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