超音波で眠っているスマートデバイスを覚醒させる

私たちは未来の家が、小さなセンサーたちで溢れていることを確信している。セキュリティカメラ、一酸化炭素検出器、スピーカー、その他もろもろだ。とはいえ常に実行されている必要があるものは多くない。だが、もしそれらがオフだったとして、必要な時にどうやってそれらの目を覚ましてやれば良いのだろうか?超音波を使うのだ。

ともあれ、それがスタンフォード大学のAngad RekhiとAmin Arbabianによって追求されているアイデアだ。ずっとオンにしておくことはできず、かといって完全にオフにすることもできないデバイスの問題に対する彼らのアプローチは、「覚醒」信号の送信と受信に必要なエネルギーの量を最小化することだ。そうすれば、IoT機器は実際に利用されている間だけ電力を消費することになる。

もちろん、これらの小型センサーが情報を送受信するために使用する電波は、実際には電力とスペースの面でかなり高価なものだ。もしアンテナと信号プロセッサを準備して待機させておくと、それらを1回の充電で何年も待機させようとしている場合には、デバイスが使って良い以上の量のエネルギーを使ってしまう。

一方、超音波センサーは、電力効率が非常に高く、必要最小限のスペースしか必要としない。超音波 ―― 人間の聴覚可能範囲上限の22KHz以上の音波 ―― は、はるかに物理的な現象であり、それを検出することは無線電波を検出することよりも、多くの点でより簡単だ。目に見えないX線を検知するセンサーと、通常の可視光を検知するセンサーとの違いにやや似ているかもしれない。

実験室のRekhi (左)とArbabian

Arbabianの下で働く電気工学の大学院生であるRekhiは、サンフランシスコで開催された国際固体回路会議(International Solid-State Circuits Conference)で発表されたばかりの論文で、彼らのアプローチを説明している。これはある意味簡単なアイデアである ―― より大きなスイッチを入れるために小さなスイッチを使う ―― しかしその結果は印象的だ。

このシステムの超音波受信機は、効率的な種類のセンサの中でも特に効率的なものだ。小型で超高感度のマイクも、Khuri-Yakub Groupによって、スタンフォードで開発された。この受信機は常にオンだが、消費電力は驚くほど小さな4ナノワットであり、それでも1ナノワットの強度の1信号を検知するのに十分なほどの感度を持っている。それは、消費電力と感度の点で、ほとんどの無線受信機よりもはるかに優れている。

昨年行われた他の研究の中には、消費電力と感度の両者で今回のものを凌ぐものもあるが…それは50倍以上大きなものだ。超音波センサの大きさは僅か14.5立法ミリメートルで、これに対して無線チップの大きさは900立法ミリメートルに及ぶ。組込機器の世界では、体積の小ささは貴重である。

もちろん、町の反対側からそれを使うことはできない ―― 超音波信号は壁を通り抜けて伝わることはない。しかし、それはそこら中で反射する。そして覚醒システムの感度から考えると、たとえ最低限の小さな超音波信号の断片だけでも、センサを活性化させるのには十分だということを意味する。

現在は単なるプロトタイプに過ぎないが、この種の真に効率的な技術が、電力から最後の一滴まで搾り取ろうと努力しているどこかの企業に、奪取されたり、模倣されたりしても驚くようなことではない。

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(翻訳:sako)

FEATURED IMAGE: MRTOM-UK/GETTY IMAGES

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TechCrunch Japan

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