軌道上の衛星間で放出されるビームにデータを保存するLyteLoopが42億円調達

間もなくあなたのクラウド写真バックアップは、巨大で多量のエネルギーを消費する地上のサーバーファーム施設ではなく、衛星間で放出される光のビームに存在するようになるかもしれない。スタートアップのLyteLoop(ライトループ)は、それを可能にする上での物理学の課題を解決すべく過去5年を費やしてきた。そして同社は現在、大胆なビジョンを現実のものにすべく、残るエンジニアリングの障壁を乗り越えるのに使う4000万ドル(約42億円)を調達した。

LyteLoopの新たな資金は次の主要なマイルストーンを達成するまでの十分なランウェイとなる。そのマイルストーンとは、3年以内に新しいデータストレージテクノロジーを搭載したプロトタイプの衛星3基を軌道に乗せることだ。同社はプロトタイプを6基開発して打ち上げる予定で、レーザーベースのストレージ手段がどのように軌道上で稼働するのかをデモンストレートする。

筆者はLyteLoopの進捗状況、テクノロジー、そして計画についてCEOのOhad Harlev(オハド・ハーリウ)氏に話を聞いた。ハーリウ氏は今回の資金調達までに5年かかり、同社のデータストレージ手法の基礎となるサイエンスにかなり自信を持っており、現在使われている従来のデータ保管テクノロジーを超えて提供できる利点について胸躍らせていると話した。たとえばLyteLoopのストレージの枠組みではセキュリティはかなり高まる。

「どのデータセンターでも、データセキュリティに関するレベルの上限は同じです。当社はさらに4重のサイバーセキュリティを提供でき、それらはすべて物理ベースです、すべて地上でも応用でき、当社のデータセンターにも応用できます。しかし、たとえば光子にデータを保存しているということについては、当社では量子暗号に応用できます。他社はできません。加えて、データは宇宙で光の速度で動いているのでセキュリティ上大きなメリットがあります」。

セキュリティに加え、LyteLoopのモデルではプライバシーでも利点がある。というのも、保存しているデータは技術的に常に衛星間を移動しているからだ。つまり、ストレージ施設のドライブに保存されたデータについての規制とは完全に異なるものの対象となることを意味する。LyteLoopはまた、アクセスに関してもアドバンテージがあると主張する。ストレージとネットワークが1つの同じ衛星にあり、衛星は地球上のどこのステーションへも情報を提供できる。最後に、ハーリウ氏は信じられないほど電力効率がよい点を指摘した。電力とともに、冷却するのに何百万ガロンもの水を必要とするのは現在のデータセンターストレージの欠点だ。

それらにも増して、LyteLoopのストレージは現在のクラウドベースのストレージソリューションと価格面で競争力があるばかりか、より利用しやすい価格になるとハーリウ氏は話す。SpaceXが繰り返し打ち上げ、そしてVirgin OrbitやRocket Labといった小規模の衛星打ち上げプロバイダーがサービスを開始し、打ち上げ能力を拡大するにつれて打ち上げコストが下がるという要因を抜きにしてもだ。

「衛星を作って打ち上げるのはかなり費用がかかりますが、それでも宇宙にストレージを維持することでかなり費用を抑えられます」と同氏は述べた。「なので所有権のトータルコストを算出するとき、当社のものは所有ベースのコストではかなり安くなります。実際のユーザーができることを比較したとき、当社は完全に異なる価格モデルで提供できます」。

ハーリウ氏はストレージとデリバリーを組み合わせた包括価格の可能性についても言及した。たとえば他のプロバイダーはあなたが保存しているデータを動かすのにネットワークを供給することを求めるかもしれない。LyteLoopのテクノロジーはまた、生態的影響をかなり減らせるので、企業の二酸化炭素排出の抑制にかかっている支出を相殺するかもしれない。

同社は衛星をマーケットに持ってくることに真っ向から取り組んでおり、概念を実証しておおよそ5年以内に衛星のフル生産に乗り出す計画だ。サービスもその頃に提供を開始する。しかしLyteLoopの技術は地上でも刺激的な応用をもたらすかもしれない。フットボール競技場の大きさほどのLyteLoopデータセンターを作るとしたら、従来のデータストレージの500倍の効率になる、とハーリウ氏は話す。

物理的なメディアではなく光子にデータを保存するという同社のテクノロジーは、現在の方法ほどに問題をともなわず、環境への影響を軽減するだけでなく物理的なメディアよりも理に適っている。事業立ち上げはコスト削減のために軌道への質量の最適化がすべてで、光子は質量ゼロだとハーリウ氏は指摘している。

カテゴリー:宇宙
タグ:LyteLoop資金調達

画像クレジット:LyteLoop

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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