輸送ネットワークをサイバー攻撃から守るShift5が57.7億円を調達

普段はあまり意識することはないかもしれないが、移動に使う電車や飛行機などの交通機関の背後には、電子機器やデバイス、データなどの広大なネットワークが張り巡らされており、そのおかげで電車は線路を走り、飛行機は空を飛ぶことができる。

たとえば米国時間2月8日に、5000万ドル(約57億7000万円)のシリーズB資金調達を発表したShift5(シフトファイブ)のような企業が、今日の交通ネットワークに不可欠なシステムを守ろうとしているのだ。Shift5によると、この分野は十分な支援を受けてはいないものの、急速に成長しているという。

輸送ネットワークは、列車や航空機、さらには戦車などの軍事機器の運行に不可欠な車載部品などの運用技術(OT)システムに依存しているが、かつては他と隔離されていたこれらのシステムがインターネットと接点を持つネットワークに徐々に加えられるケースが増えているため、サイバー攻撃を受けやすくなっている。

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OTネットワークへの攻撃は稀だが、OTシステムの障害は、数百万ドル(数億円)の損失やダウンタイムにつながり、また、事態が悪化した場合には安全上のリスクも生じる。米国政府のサイバーセキュリティ機関であるCISAは、重要インフラに対する脅威が高まっていると警告している。

しかし、OTシステムはその用途に応じて固有のものであることが多く、例えば戦車から部品を取り外してセキュリティの脆弱性をテストすることは現実的ではなく、また戦車を容易に入手することもできない。

Shift5はこの問題を解決するために、交通機関の企業やリーダーたちのOTネットワークに監視機能を提供し、全体的な攻撃対象を減らそうとしている。この監視機能は、脅威を検知し、インターネットベースの攻撃からシステムを守ることを目的としている。

その努力が実を結んでいるようだ。今回の資金調達は、前回の2000万ドル(約23億1000万円)のシリーズA資金調達からわずか数カ月後に行われた。2021年数百万ドル(数億円)規模の取引を行い、従業員数を倍増させたこともそれを後押ししたのだ。今回のシリーズBラウンドはInsight Partnersが主導し、シニアアドバイザーのNick Sinai(ニック・シナイ)氏がShift5の取締役に就任した。

Shift5は、今回のラウンドで調達した資金を、需要に対応するための人材への投資や、製品開発の強化に充てるとしている。

Shift5の社長であるJoe Lea(ジョー・リー)氏は「このいたちごっこは重要なインフラにも影響が及んでいて、防御側はその守備範囲を運用技術にまで広げなければなりません。この1年で証明されたことは、鉄道、航空、国防の各分野の主要な防御者たちが、先見性のあるリスクを認識し、コストを強いられる損害を未然に防ぐために動いているということです」と語っている。

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画像クレジット:Shift5

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(文:Zack Whittaker、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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