農家自身による情報ネットワークFarmers Business Networkが$15MをGoogle Venturesなどから調達

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[筆者: Christine Magee]
2050年には100億に達すると予想されている世界の人口を支えるためには、それまでの35年間に全世界の農業生産量を倍増する必要がある。Farmers Business Network(FBN)にとってソリューションは、ビッグデータをベースとするグローバルな農家間ネットワークだ。それを築くために同社は新たに、1500万ドルの資金を調達した。

Google Venturesがそのラウンドをリードし、これまでの投資家Kleiner Perkins Caufield & Byersとインパクト投資企業DBLが賛助した。FBNのこれまでのベンチャー資金調達総額は2800万ドル弱になる。

農家は種子や肥料などに年間数十億ドルを投じているが、今のところ彼らには、使うべき種子、栽培量、肥料や栄養分の地域によって異なる最適配分などについて知るための信頼できる情報源がない。

FBNの協同ファウンダCharles Baronはこう言う: “これまで農家は、大学が高度に制御された環境で行う実験からのデータや、種子企業からの情報に依存して種子や苗を選んでいた”。

しかしそれらの情報源は、営農の現実を正確に反映していない。

“種子企業にアドバイスを求めることは、Exxonにおすすめの車を聞くことに似ている。Exxonなら必ず、ガス食いのオフロードカーをすすめるだろう”、とBaronはジョークを言った。

昨年11月にローンチしたFBNは、17の州の計700万エーカーの農地からデータを集めたが、その後データ量は1ヶ月に30%のペースで増加している。同ネットワークは今では、16種類の作物の500種類の種子のパフォーマンスを評価できる。

しかし、大量のデータを集めることが、農業のイノベーションではない。現代の農業機械は技術的には非常に高度であり、播種の方法から土壌成分の変化まで、あらゆることを記録できる。

FBN Dashboard

FBNは、全国の農家から集めたデータを正規化し、その分析結果を見られるダッシュボードを提供している。そこでは、地域の気象や土壌データなど、外部情報も利用される。FBNのネットワークに参加している農家からの、それらの報告に基づいて農家は、高収量を望める作物とその生産方法について、情報に裏打ちされた意思決定ができる。

しかし、実は、農家も情報の過剰に悩まされている。

“最新式のトラクターの運転台に坐ると、目の前に6つのスクリーンがある。そのそれぞれが、異なるフォーマットでソフトウェアからのデータを表示している”、とBaronは言う。そこでFBNは、35種類の農業用ソフトウェアからのデータを、統合しようとしている。

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“大農場が使っている精密な農業機械では、ソフトウェアがその農場のデータを分析するから、昨年の灌水や肥料の問題点を把握して修正できる”、FBNの取締役会に入ったGoogle VenturesのAndy Wheelerがそう言う。

“しかし複数の農家や農場のデータを分析したり比較したりできないから、あまり有効なデータ利用はできない。複数の農家がデータを共有してインサイトを得るようになれば、どんな土壌にはどの種子が合うか、どんなやり方が収量を上げるかなど、意思決定に役立つ有効な情報が得られるようになる”、とWheelerは述べる。

情報の得られ方や利用の仕方で、農家の費用や収入に大きな違いが生ずる。FBNに参加している農家が1年に購入する種子は数千ドルにも相当するが、その種子の5-10%ぐらいが地域や土壌などの条件に合ってないことが事前に分かれば、種子の価額だけでなく、その後の諸費用も含め、相当額の経費を節約できる。

“今、農作物の価格は安いし、しかも農業のための機械、燃料、肥料、種子等々の費用はものすごく高い。農家の利幅はカミソリの刃のように薄いから、まとまった利益を得ることはほとんど不可能だ”、とBaronは言う。

しかし利益はともかくとして、エーカー当たりの費用効率を上げ、収量を最大化できれば、世界的な食糧危機の到来を遅らせることはできるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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