近い将来、すべてのブロックチェーン企業が暗号投機家になる

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ロシアが間もなくウクライナに侵攻するというニュースが流れたばかりの時に、落ち着いてテクノロジースタートアップ市場の現状について活き活きとした原稿を書くのは、ちょっと難しい。独裁政治よりも民主主義を信じている人にとっては、かなり暗い一日になるだろう。そして、すぐ近くの地平線上にある、迫りくる地政学的な雲は、さらに悪いニュースを約束している。

それでも、ニュースエンジンは前進していて、自分の分野で何かをしなければならない。そこで、暗号市場での資本リサイクルについて話すことで仕事の手を止めないことにしよう。

それは、ぐるぐると回っていいる

現在、テクノロジーの世界で徐々に勢いを増しているイノベーションの1つが、企業が創立後のより早い段階からベンチャーキャピタル活動(防御的なものも攻撃的なものも)を始めるようになっているということだ。

OpenSea(オープンシー)は、その最新の例だ。同社は米国時間2月12日に、OpenSea Ventures(オープンシー・ベンチャーズ)という組織と「Ecosystem Grants」(エコシステム・グランツ)という名のプログラムを立ち上げることを発表した。どちらも「Web3とNFTの世界的な成長を促進するクリエイター、チーム、新技術を支援することを目的としている」という触れ込みだ。

OpenSeaから資金を得る企業は「OpenSeaのリーダーシップへのアクセス」を行うことが可能で、当然ながらa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)を含むOpenSeaの投資家へもアクセスすることができる。

The Block(ザ・ブロック)が指摘するように「OpenSeaは、ユニコーンのAlchemy(アルケミー)やFTXなどの、独自のベンチャーユニットを立ち上げた数多くの暗号スタートアップの一員になる」のだ。いずれも非公開企業であることをお断りしておく。ともあれ、急成長したブロックチェーン企業が余剰資金を得て、その資金を他のグループに再投資し始めることはよくある話だ。

Intel Capitalが企業のベンチャー取引のパラダイムだった時代は終わった。現在は、Coinbaseがおそらく最近最も尊敬されている企業投資チームだが、ライバルたちはそれに挑戦しようとしている。

だが、本当にそうなのだろうか?この近辺には奇妙なニュアンスがある。

  • Coinbaseは非公開の時代、a16zがバックアップしていた
  • Marc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、最近自身の暗号ファンドを立ち上げたKatie Haun(ケイティハウン)氏とともに、Coinbaseの役員として残っている
  • Coinbase VenturesがOpenSeaを支援
  • a16zもOpenSeaを支援
  • OpenSeaは現在、独自の投資を行っているが、理論的にはある程度はa16zとの共同投資となっているはずだ

a16zはまた、独自の投資を行っているAlchemyにも出資しているが、これはなかなかのからみ具合だ。OpenSeaはAlchemyの技術を使用しており、すべてが統合されている(このような中央集権化とファミリー化が、分権化すなわち民主化と正反対であることはいうまでもない)。

資本が暗号を追い、暗号が資本を追うこの渦巻は、いつほど収まり始めるのだろうか、そしていつ内部での競争が強まるのだろうか?もしCoinbaseがかねての計画通り独自のNFTプロダクトをローンチしたら、OpenSeaはいつまで共通の投資家に寄り添っていたいだろうか?Coinbaseがインフラを売りたいと思って、Alchemyのスペースに入ってきたらどうなるのだろうか?Alchemyがどれだけの活動をしているかを考えると、率直に言って、Coinbaseがそれをしない理由はない。

現在、OpenSeaが自らのイグジットの前に、資本を他のベンチャーに再投資しているのは奇妙なことだ。しかし、より大きな暗号資産市場の変化のペースが、単純なビジネスモデルである投機を行う企業を、多数ではないにしても少なくともある程度の数以上生み出したようだ。すごい!そして奇妙だ!

私は、主要な暗号資産プレイヤーとその財政スポンサーのクローズドネットワークを監視しようとしている。私にとっては、他のベンチャーカテゴリーよりも中央集権的で、ちょっと奇妙な感じを受けている。Web 2.0で大金を稼いだ人たちが、この先Web3が何になろうとほとんどの利益を手にしようとしているように見える中で、同じ人たちが、分散型の自律組織やゼロトラスト体制などを推進している話を読み続けていると、口の中にこみ上げる苦みを拭い去ることができない。

さて、私はもう消えて、今は自由な社会と民主主義の運命について心配することにしよう。月曜日までにロシアがウクライナに侵攻していないことを祈る。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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