運用しないロボアドバイザー「VESTA」が7500万円調達

AIを利用した投資アドバイスサービス「VESTA」を運営する日本のGood Moneyger(グッドマネージャー)は3月21日、ジェネシアベンチャーズアコード・ベンチャーズSMBCベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施し、総額7500万円を調達したと発表した。

同社はこれまでにも複数のエンジェル投資家から資金を調達しており、代表取締役の清水俊博氏によれば累計調達金額は1億円程度だという。

VESTAは人工知能(AI)を利用した投資アドバイスサービスだ。同社が独自に開発したアルゴリズムを利用して、投資すべき銘柄、各銘柄の保有比率、売買のタイミングなどをアドバイスしてくれる。現在のところ、VESTAが対応するのは「ノーロード投資信託」と呼ばれる売買手数料がかからない投資信託のみで、株式や債券への投資アドバイスは行っていない。

最近では、テクノロジーによって自動化された資産運用サービス「ロボアドバイザー」が国内外で盛り上がりを見せているように感じる。国内では2016年にTHEO(テオ)ウェルスナビがローンチし、2017年には新たにクロエが生まれた。また、海外でもWealthfrontBettermentなどの同様のサービスがある。

ただ、VESTAは他のロボアドバイザーとは少し違うビジネスモデルもつ。クロエやウェルスナビでは、国際分散投資の手法をソフトウェアによって自動化し、それを利用して顧客から預かった資金を運用している。これらの企業の収益源はいわゆる「運用報酬」と呼ばれるもので、ポートフォリオ評価額の数%が手数料として徴収される(クロエは0.88%、ウェルスナビとTHEOは1%だ)。

一方、VESTAは顧客から資金を預かることはせず、あくまで「アドバイザー」としての役割を果たすのみとなっている。彼らのビジネスモデルは、同社が提携する楽天証券での口座開設の勧誘や、口座をもつ顧客に対する投資アドバイスを行い、その報酬として証券会社側から「紹介料」を受け取るというものだ。そのため、顧客はVESTAを無料で利用することができる。

個人の資産運用のアドバイスを行うフィナンシャル・プランナー(FP)という職業があるが、VESTAはその役割をソフトウェアによって自動化したと考えれば分かりやすいかもしれない。

誤解を恐れずに言えば、証券会社の営業員からきめ細やかなアドバイスを受けるためには、それ相応の資金を口座に預けている必要がある。証券会社も人的リソースが限られており、どうしても預かり資産が多い顧客から優先して対応せざるを得ないからだ。一方のVESTAでは、たとえ運用資産が少なくとも、機械によるパーソナルな投資アドバイスを受けることができるという点がメリットだと言えるだろう。清水氏によれば、2016年12月にローンチしたVESTAはこれまでに約1000人のユーザーを獲得しているという。

ただ、少し気になるのはGood Moneygerの提携先が楽天証券1社のみという点だ。売買手数料のかからないノーロード投資信託しか扱っていないとは言え、これでは業界のしがらみに囚われない中立的なアドバイスが本当にできるのかどうか疑わしい。それについて清水氏は、「楽天証券との契約は排他的なものではないので、今後は提携先を増やしていくつもりだ」と語る。また、今回の調達ラウンドにはグループ内にSMBC日興証券を有するSMBCベンチャーズも参加しているが、同証券会社との提携については「まだ公言できることはないが、その可能性も含め話し合いは進めている」(清水氏)そうだ。

2015年4月創業のGood Moneygerは新たに7500万円を調達し、MUFGアクセラレータプログラムに参加することも決定した。今後の展望について清水氏は、「日本はFX取引量が世界一であるにもかかわらず、金融教育が進んでいないと感じる。当社は、資産運用そのものではなく金融教育にフォーカスしていくことで他社との差別化を図りたい。金融業界の大手も日本の金融教育には問題意識をもっていて、MUFGアクセラレータプログラムに当社が選ばれたのも私たちがそこに注力しているからだと思う」と語る。

金融教育カードゲームの「Asset Allocation」

その言葉の通り、Good Moneygerは一風変わった金融教育カードゲーム「Asset Allocation」も開発中だ。これは、各カードに書かれた「日銀による金融緩和」などの経済イベントによって、例えばドル/円が上がるのか、もしくは下がるのかを当てるというゲーム。401kを採用する企業などが想定ユーザーで、現在は1セット1500円で販売している。「今はまだ手売りしている状態」(清水氏)だということだが、同社は今回調達した資金の一部をこのアプリ版の開発にも充てる予定だ。

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TechCrunch Japan

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