遠隔地採用のスタートアップDeelの新機能は企業が暗号資産でペイロールを蓄えるオプション

2019年、Alex Bouaziz(アレックス・ブアジズ)氏とShuo Wang(シュオ・ワン)氏は、企業がコンプライアンスに基づいて世界中の人材を遠隔地から雇用し、給与を支払うことを目指すスタートアップ、Deel(ディール)を設立した。

2人のミッションは真剣そのものであり、リモートワークがこれからは主流になるというビジョンは、新型コロナの大流行よりも先にあり、新型コロナは同社の提供するサービスへの需要を一層高めることになった。

Deelは、企業が現地法人を介さずに5分以内に従業員や契約社員を雇用することを可能にすると主張している。また「ワンクリックで」で150以上の通貨でチームへの支払いが可能だとのことだ。

「私たちは、企業がどこでも誰でも雇用できるようにしたいのです」とブアジズ氏はTechCrunchに語っている。「才能はどこにでもありますが、チャンスはそうではありません。だから、我々はそれを少し平準化し、企業が誰でも採用できるようにしたいのです。ただ、もっと重要なのは、出身地に関係なく、彼らにふさわしい経験を提供することです」と語る。

ブアジズ氏は、これまで「一度もオフィスで働いたことがない」と告白するなど、確実に有言実行している。

ブアジズ氏とワン氏は、明らかに何かを掴んでいた。10月のDeelは、シリーズDで4億2500万ドル(約489億円)を調達し、55億ドル(約6331億円)と評価された。ブアジズ氏は12月に、2021年の同社が「400万ドル(約4億6000万円)から5000万ドル(約57億5500万円)以上のARRになり、60カ国以上で50人から550人以上に……そして6億ドル(約690億円)以上を調達した」と公に語っており、その成長ぶりは驚くほど透明である。

2021年、Deelは契約者向けに「Crypto Withdrawals(クリプト・ウィズドローワル)」を開始し、Deelを通じて支払われた人は、支払いの一定割合をビットコイン、イーサリアム、USDC、ソラナとダッシュで直接Coinbaseアカウントに引き出し、ほぼ瞬時に出金できるようになった。

しかし、これまでDeelを利用する雇用主は、遠隔地の従業員への支払いに暗号資産を使用するオプションを持っていなかった。

現在、このスタートアップはその使命をさらに一歩進め、企業に暗号資産で給与資金を確保する方法を提供しようとしている。まず、ブアジズ氏によると「最も急速に成長しているステーブルコインであり、ドルに固定されているため、変動する余地が少ない」ことからUSDCを利用することにした。企業がインターナショナルなチームに対して暗号資産を使って支払いを行うことは、Coinbase(コインベース)、Shopify(ショッピファイ)、Dropbox(ドロップボックス)など、Deelの6000を超える既存顧客の多くに歓迎されそうなオプションである。

Deelチームによると「柔軟性は、どこで雇うかだけでなく、どのようにチームに支払うかということでもあるはずです」とのことだ。

共同創業者のシュオ・ワン氏、アレックス・ブアジズ氏(画像クレジット:Deel)

この新しい製品機能は、暗号資産で資金を引き出すことを労働力に任せるのに対して、雇用者がUSDCでチームに即座に支払うことができるようになるという点で「Crypto Withdrawals」とは異なるものだと同社は述べている。

具体的には、USDCで資金を保有している企業は、グローバルチームの給与や支払いをまかなうために、Coinbaseのアカウントを介してDeelに直接支払いを行うことができる。企業がDeelにお金を払い込むと、契約者は暗号資産を含む150以上の通貨で出金することができる。

Deelによると、企業が主に暗号資産で業務を行っている場合、従業員に支払う前に、例えば米ドルに変換するための為替手数料を支払うことを心配する必要もない。暗号資産で直接支払えばいいのだ。

「これは、取引手数料や通貨手数料が少ないエンド・ツー・エンドの暗号資産支払い体験であり、さらに、企業や請負業者が銀行口座にお金を保持する必要性を排除します」と述べている。

Deelにとって、この動きは暗号資産の主流化における次のステップだ。

「これは暗号資産企業にとって画期的なことです」とBouazizは述べている。

Deelによると、この動きは、会社の暗号資産残高を使用してチームに支払いを行いたい企業と、暗号資産で支払いを受けたいというチームメンバーの両方からの「急増」した需要によって促されたとのことだ。例えば、同スタートアップによると、暗号資産給与支払いに対する需要は前月比10%増となった。

その他、同社が発表した愉快な統計データをいくつか紹介しよう。2021年の7月から12月の間に、支払いの2%が暗号資産で引き出された。2021年12月にDeel経由で約470万ドル(約5億4100万円)が暗号資産で従業員に支払われ、2021年11月から49%増加した。興味深いことに、暗号資産の出金の地域別内訳は、ラタム(52%)、EMEA(ヨーロッパ、中東およびアフリカ、34%)、NAM(北米)(7%)、APAC(アジア太平洋、7%)とのこと。

画像クレジット:cokada / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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