遺品整理をオンラインで一括依頼、「オコマリ」運営が約1億円を資金調達

衣替えや年末の大掃除ぐらいなら「何とか休日にやっつけてしまおう」と思える人でも、遺品整理や引っ越しに伴う不要品の廃棄となると、自分たちだけで片づけるのは、やや荷が重いと感じることだろう。それが働く単身者や共働き世帯なら、なおのことだ。こうした作業を代行してくれる業者は、インターネットで探すこともできるが、最終的には電話で連絡を取らなければならなかったり、見積もりのために立ち会いを求められたりして時間を取られ、料金を提示されても、それが適切な価格なのか分からないことも多い。

こうしたイケてない状況を変えようとしているのが、暮らしの困りごとをオンライン経由で一括解決できるサービス「オコマリ」だ。オコマリを運営するmodecas(モードキャス)は12月17日、デジタルベースキャピタルファインドスターグループSkyland Ventures、田中智也氏(ユニクエスト創業者、ナッシュ代表取締役)ほか複数名のエンジェル投資家を引受先とする第三者割当増資と、融資による資金調達実施を発表した。融資も合わせた今回の調達金額の総額は約1億円になるという。

写真右からデジタルベースキャピタル代表パートナーの桜井駿氏、modecas代表取締役社長の齊藤祐輔氏、Skyland Ventures Corporate Manager / modecas CFOの垣屋美智子氏

間取りで料金固定、遺品整理・不要品回収サービス「オコマリ」

modecasは2015年6月の創業。同社がオコマリの前身となるサービス「遺品整理.com」を始めたのは2017年2月のことだ。その後、遺品整理に限らず、生活の困りごとをテクノロジーで解決するサービスとして、名称をオコマリに変更し、2019年7月にリニューアルを行った。

現在オコマリで提供するのは、遺品整理や退去清掃、不要品回収などのサービスだ。間取り別に定額で料金が決まっていて、見積もりのための下見は不要。料金には運送費や家具・リサイクル家電の処分、簡単な清掃などが含まれており、金庫や物置、ピアノなどの特殊な処分品がなければ追加料金は発生しない。

この領域には従来から、業者を横串で検索してリストアップするポータルサイト的な位置付けの事業者はある。ただ、ユーザーがいざ業者とやり取りしようとすると、昔ながらの電話やFAXのまま。見積もりのための下見や業者との料金交渉、サービス内容の確認といった煩雑なプロセスも残っている。オコマリでは、自社でサービス提供業者と提携しており、オンラインでユーザーと提携業者とのマッチングを完結。ユーザーには最初に定額で料金を提示して、契約、サービス実行とアフターフォローまでを一気通貫で対応する(条件が複雑な場合などは、事前に見積もりを依頼することもできる)。

modecas代表取締役の齊藤祐輔氏は「実は課題を解決したいのはユーザーだけではなく、業者も悩みを抱えている」と語る。「清掃や不用品回収業者の多くは、スモールビジネスでやっている。人手不足で顧客管理に手が回らなかったり、問い合わせ対応がままならなかったりするほか、閑散期にはアイドルタイムが発生している。オコマリがその部分に対応することで、業者もよいサービスを原価を抑えて提供することができ、ユーザーも安く安心してサービスを受けることができる」(齊藤氏)

ポータルサイトのサービスではサイト運営者は値付けをせず、業者が顧客に直接、価格を提示する。しかし「実は業者も原価計算をきちんとやっていないことが多い」と齊藤氏はいう。「我々は問い合わせの受付をはじめとした裏の仕組みを担当しながら原価計算も行い、業者と『この値段でやってください』と調整している。単なるマッチングではなく、個々の業者が1社では対応しきれない限界の部分をまとめることで、安さと安心できるサービス提供を両立する」(齊藤氏)

ユーザーにとっては各提携業者ではなく、オコマリに作業を依頼しているという見え方になる。オコマリはバーチャルな業者として、ユーザーとの接点を担うわけだ。こうしたサービス提供の立ち位置や、ニーズを取りまとめて、業者のアイドルタイムを活用してマッチングしていく手法は、ネット印刷のラクスルなどと似ているかもしれない。

業者支援サービスや法人向けサービス提供も視野に

オコマリでは、サービス開始から累計2000件を超える依頼を解決してきたという。調達により、コールセンターの採用強化とCRM導入を行い、さらなる受注数の拡大を図る。また現在は150社ほどの提携業者の数と種類も拡大。2020年1月からは植木の伐採サービス、4月からは害虫駆除サービスにも対応する予定だという。こうした体制整備により、2020年6月期までの1年間で合計5000件の受注を目指す。

オコマリ事業の拡大と並行して、今後、自社プロダクトの開発と業者向けのコンサルティングサービス展開も計画していると齊藤氏はいう。メールさえ浸透していないという業者に向けて、法人向けの業務支援サービスも提供していくことで、「オコマリで提供するサービスの質のコントロール、向上にもつながる」と齊藤氏は話している。

将来的には、住まいと生活の困りごとに隣接する領域にも進出したいと齊藤氏。具体的には不動産やヘルスケア領域を対象として挙げている。実際、遺品整理や不用品廃棄、清掃といった業務は、不動産売買・管理とも密接に関連する分野だ。

齊藤氏は、米国のオフィス管理サービスプラットフォーム、Edenに注目しているという。2019年11月にグローバル・ブレインによる出資も発表されたEdenは、オフィス向けに清掃やITサポート、事務用品サプライなどのサービスを提供する事業者だ。

齊藤氏は「提携業者との連携により、既に全国区でオコマリのサービス提供ができている。今後さらに提携先を増やして、法人向けにもさまざまなサービスを展開していきたい」と話している。

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TechCrunch Japan

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