重度のアレルギーに苦しむショーン・パーカー、アレルギー研究センター建設に2400万ドル寄付

Napsterの共同ファウンダー、Facebook初代CEOにして大株主のビリオネア、ショーン・パーカーは小さいときから重度のアレルギーと喘息に苦しんできた。ピーナツに触れた食べ物を知らずに食べて救急病棟に運び込まれた回数は文字通り数えきれないほどだという。 私の電話インタビューに対してパーカーは「結婚してからだけでも14回入院している。ピーナツ、アボカド、甲殻類、全部ダメだ。大学4年のときには集中治療室に3週間も入院した」と語った。

アレルギーには遺伝子が関係していることは2児の父であるパーカーには大いに気がかりな問題となった。そこでパーカーはアレルギーの原因解明と治療法の開発のためにスタンフォード大学に個人として2400万ドルを寄付することにした。

この資金はスタンフォード大学にショーン・N. パーカーアレルギー研究センターを建設するために使われる。アメリカにおけるアレルギー研究のための寄付としては過去最大となるそうだ。

全人類は30から40%がなんらかのアレルギーを持っていると推定されている。 全米アレルギー、喘息、免疫学アカデミーの調査によると、世界の小学生のアレルギー率は40から50%に近づいているという。

アレルギーに悩んだパーカーはFacebookで友達になったシェリル・サンドバーグに紹介してもらい、アメリカにおけるアレルギー治療の最高権威の一人、Kari Nadeau博士に相談した。しかしNadeau医師でもパーカーに完全な答えは与えられないことがわかった。

「食物アレルギーを持つ人の25%はアナフィラキシーショックで少なくとも1度は死にかけています。現在FDA(食品医薬品局)に承認された治療法は存在しません」とNadeau博士は言う。

現在の治療法は、患者にアレルギーの原因物質をアナフラキシーショックを起こさない程度の微量与えるというかなり危険度の高いものだ。繰り返しアレルゲンを与えることによって患者の免疫システムがこの物質を無視するようになることを期待するわけだ。この減感作療法はいつも成功するとは限らない。また成功した場合でもその理由は不明だ。実際、なぜ人はアレルギーになるのか、アレルギー患者が増えているのはなぜなのかも分かっていない。そもそもアレルギーについて分かっていることはほんのわずかしかない。パーカーはNadeau博士他の専門家が分子レベルでアレルギーのメカニズムを解明してくれることを期待している。

私自身、パーカーのアレルギーほど重症ではないが枯草熱の持病があることを話した。「きみの枯草熱も、結局は免疫システムの問題なんだ。基本的には同じ原因だ。特定の物質が体内のタンパク質と特異的に結合する。研究によってそのブラックボックスを開いて欲しいんだ」とパーカーは語った。

パーカーはこの寄付がかなり風変わりであることを認める。「むしろベンチャーキャピタルのアプローチに近いだろう。スタートアップに投資するのと同じ戦略だ。優秀なチーム、適切な環境、正しいタイミングを見極める必要がある。治療法の研究でも同じことだ」。

パーカーが医療分野で寄付をするのはこれが初めてではない。ガンの研究に2000万ドルを寄付しているし、マラリア・ノー・モア運動の寄付集めを手助けしている。またeシガレットのスタートアップ、NJOYはパーカーらから10億ドルの資金調達を行っている。

パーカーは「新センターは5年から10年で新しい治療法を発見できると思う。ある程度進捗したらスタンフォードから世界へ臨床治験を広げたい」と語った。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。