量子ビジネス構築に向けCambridge QuantumとHoneywellが合弁会社を設立

つい先日、量子コンピュータへの参入を発表したばかりのHoneywell(ハネウェル)と、量子コンピュータのソフトウェア開発に注力しているCambridge Quantum Computing(ケンブリッジ・クォンタム・コンピューティング、CQ)は米国時間6月8日、Honeywellの量子ソリューション(HQS)事業とCQを新たな合弁会社という形で統合すると発表した

HoneywellはCQと長く提携しており、2020年CQに投資もした。今回のアイデアは、HoneywellのハードウェアとCQのソフトウェアに関する専門知識を合わせ、両社がいうところの「世界最高性能の量子コンピューターと、初の最先端量子オペレーティングシステムを含む量子ソフトウェアの完全な組み合わせ」を構築することだ。

2社(両社のプレスリリースでは「コンビネーション」と呼んでいる)は、2021年の第3四半期に取引が完了すると見込む。Honeywellの会長兼CEOであるDarius Adamczyk(ダリウス・アダムジク)氏が新会社の会長に就任する。CQの創業者でCEOのIlyas Khan(イリヤス・カーン)がCEOに就任し、現在のHoneywell Quantum Solutions(ハネウェル・クオンタム・ソリューションズ)の社長であるTony Uttley(トニー・ウットリー)氏は、新会社でもその役割を継続する。

HoneywellがHQSをスピンオフし、CQと統合して新会社を形成し、リーダーシップと財務面での役割を果たしていく構想だ。Honeywellは、新会社の過半数の株式を所有し、2億7000万〜3億ドル(約300〜330億円)を投資する。また、新会社との間で、量子ハードウェアの中核となるイオントラップの製造に関する長期的な契約を結ぶ。CQの株主は、新会社の45%を所有することになる。

画像クレジット:Honeywell

アダムジク氏は「新会社は業界最高の人材、世界最高性能の量子コンピュータ、初の最先端量子オペレーティングシステム、そして量子コンピュータ業界の未来を牽引する、ハードウェアに依存しない包括的なソフトウェアを有することになります。新会社は、量子コンピューター業界の爆発的な成長を支える重要なグローバルインフラを提供することで、短期間に価値を創造する上で非常に有利な立場にあります」と述べた。

2社は、量子ビジネスを成功させるには、大規模な投資に支えられ、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたワンストップショップを顧客に提示する必要があると主張している。2社は今回の統合により、それぞれの専門分野におけるリーダーとしての地位を確立し、事業を拡大するとともに、研究開発や製品ロードマップを加速することができるとしている。

「2018年にHoneywellの量子ビジネスを初めて発表して以来、多くの投資家から、このエキサイティングでダイナミックな業界の最前線にある当社の先端技術に直接投資したいという声を聞いてきましたが、今回、それが可能になります」とアダムジク氏は話した。「新会社は、急速な成長を促進するために必要な、新しい多様な資金源を大規模に確保する最良の手段となるでしょう」。

CQは2014年創業で、現在約150人の従業員を抱える。同社は2020年12月に発表した4500万ドル(約50億円)のラウンドを含め、合計7280万ドル(約80億円)を調達した。この最後のラウンドには、Honeywell、IBM Ventures、JSR、Serendipity Capital、Alvarium Investments、Talipot Holdingsが出資した。これは、異なる技術を使用しているものの、多くの点で新会社と直接競合しているIBMが、新会社の(小さな)一部を所有することになったことも意味している。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

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