金属加工のDXを推進する「Mitsuri」運営のCatallaxyが総額4.1億円調達で未来の製造業を目指す

Mitsuriサービスのイメージ

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特注金属部品における受発注の商取引プラットフォーム「Mitsuri」を提供するCatallaxyは3月22日、第三者割当増資により総額約4億1000万円の資金調達を行ったと発表した。引受先はインキュベイトファンドとSMBCベンチャーキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル、長瀬産業、パビリオンキャピタル、エンジェル投資家となる。

金属部品の図面を工場に持ち込んで、職人と膝を突き合わせて話し合う。そんな当たり前に思える仕事を、オンライン上で完結するプラットフォームが「Mitsuri」だ。日本の金属加工技術は世界レベルである一方、現場は労働集約型で動いているという。

Catallaxyは2020年3月17日に約3億2500万円を調達したばかりだが、ここ1年の累計調達額は約7億3500万円となった。また、直近3年間でみれば累計調達額は約8億1000万円に上る。事業スピードを上げていく中、Mitsuriを通じてレガシーな金属加工業界のDXを進める。

依頼総額30億円を超えたMitsuri

日本の金属加工技術は世界レベルで、金属製品製造業は約15兆円という巨大産業であるものの、労働集約型のオペレーションによる競争力低下が大きな課題となっているという。経済産業省によると、2019年における金属製品製造業の事業所数は、従業員30人以上であれば約4400となる。一方、従業員が4人以上の場合は約2万5000であり、この小規模な事業所におけるDXの推進が特に急がれている。

Mitsuriは2018年のリリースされ、2019年には依頼総額が30億円を超えた。さらに2021年2月までには、全国300社の協力工場と、1万を超える発注社数を抱えるプラットフォームに拡大している。

Catallaxyは全国100カ所以上の工場に足を運び、業界の課題を直接ヒアリングした上で、Mitsuriを作り上げた。Mitsuriは、従来の発注業者が自社のCADオペレーターが作った図面を工場に持参して説明し、見積もりを依頼して、そして実際に発注するといった流れを根本から変えていく。

Mitsuriは金属加工の図面をアップロードするだけで、300社以上のパートナー工場から、同社が発注業者に合った加工業者をコーディネートする。発注業者はそこから見積もりや仕様など、条件に合った加工業者を選び、オンライン上で具体的な商談が始められるというものだ。

加工業者側からすれば、Mitsuri上で同社の専門スタッフと発注業者が上流工程を行っているため、製品製造に集中することができる。このため、納期遅れは全体の3%未満となっている。

また、発注業者が金属加工に専門的な知識を持っていなくても、金属部品を選び、見積り比較から発注までオンライン上でできる「Mitsuriカタログ」も提供している。Mitsuriカタログは、希望する金属部品がなければ、カタログ上で希望と近い金属の形状からカスタマイズできる。そこから自動で図面を作成され、そのまま発注も可能なセミオーダー方式となっている。

金属加工業の無人化を

Catallaxyは今回の資金調達によって、Mitsuriを通して金属加工業界における商取引・生産管理のデジタル化や見積りの自動化、ソフトウェア前提の部品製造を促進していく。

金属加工業界は依然、レガシーな業界構造だ。メール、FAX、対面、書面での営業活動、生産管理が常態化している。

Catallaxyは「現状、金属加工業界は商談や生産管理のスタンダードが確立されていない。各工場で Microsoft Excelや紙を中心とした管理をしており、生産性が低い状態が続いている。Mitsuriのウェブシステムを浸透させ、これまで工場内で営業職や管理職、CADオペレーターが担っていた業務を8割削減することで、業界スタンダードになることを目指す」と述べた。

また、見積りの自動化については、Mitsuriで3DCAD、2DCADの自動見積りを可能にし、これまで不透明だった特注部品価格を対応できる工場ごとに比較できるようにしている。自動化ではカバーしきれない場合、同社専門スタッフがCADファイルなどを解析し、解析内容と加工内容を紐づけて稼働時間を割り出すことで、見積り金額を算出する流れも作っている。

この他、Catallaxyは職人の知識や機械などの加工能力をデータ化に成功。協力工場に工作機械を動かすためのプログラムコードとして送り、工場ではそのプログラムコードを元に金属を加工できるようにしている。ソフトウェアを前提とした部品製造により、職人のスキルに依存せずに再現可能なQCD(Quality・Cost・Delivery)を提供することで、属人化していた金属加工業界を変えていく。

Catallaxyはこれらの施策をさらに推し進めることで、金属加工業の無人化を果たし、未来の製造業を作り上げる狙いだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Catallaxy資金調達金属加工DX日本

投稿者:

TechCrunch Japan

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