長距離ワイヤレス給電技術「AirPlug」により配線のないデジタル社会を目指すエイターリンクが2億円調達

長距離ワイヤレス給電技術「AirPlug」により配線のないデジタル社会を目指すエイターリンクが2億円のシリーズA調達

ワイヤレス給電によって配線のないデジタル社会の実現を目指す、米スタンフォード大学発のスタートアップ「エイターリンク」は10月5日、シリーズAラウンドにおいて第三者割当増資による2億円の資金調達を発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)運営のKII2号投資事業有限責任組合、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ運営のテクノロジーベンチャーズ5号投資事業有限責任組合。

調達した資金により開発体制を早急に整え、まずはFA(Factory Automation)、ビルマネジメント領域の製品投入を実現する。メディカル領域への市場導入も進め、ワイヤレス給電による配線のないデジタル社会の実現を目指す。

エイターリンクは、心臓のペースメーカーをはじめとする「メディカルインプラントデバイス」にワイヤレス給電する研究開発を行ってきた。デバイスを体外から体内深部20cmへワイヤレス給電で稼働させることが同社の基盤技術となっており、実用レベルでの完全ワイヤレス給電「AirPlug」を実現したという。

また同技術は、医療用途以外にも応用可能なことから、現在FA、ビルマネジメント、メディカルの3領域への応用を目指している。

FA(Factory Automation)領域

ダイナミックに稼働するロボット先端部の配線は、高頻度で断線することが多く、FA業界においては長年の課題となっている。ロボットハンド先端部など、「断線しやすい可動部」や「配線しにくい箇所」のセンサーのワイヤレス給電を実現することで、この課題を解決する。またこれにより、取り替えコストの大幅な削減も可能という。現在、市場導入は2022年後半以降を予定し、製品開発を行っている。

ビルマネジメント領域

タスク&アンビエント空調は、空間の中で人がいる領域「タスク域」は最適な環境を保ち、不在時や人がいない領域「アンビエント域」は環境条件を緩めることで、快適性と省エネルギーの両立を図るシステム。しかし、センサーを設置するのに多額の配線コスト、バッテリー交換コスト(廃棄も含め)がかかるため、十分なビルマネジメントシステムが構築できないという課題がある。

エイターリンクが持つ技術を大手ゼネコン、ディベロッパーと実証実験を実施した結果、ワイヤレス給電によって温湿度センサー、照度センサーやCO2センサーを稼働させるだけでなく、ドア・窓センサー、人感センサー、漏水センサー、コンクリート内のひずみセンサーなどを一括してワイヤレス給電を行うことが可能となったという。

同技術は2021年11月より実際の市場投入を予定。今後「世界初のマイクロ波ワイヤレス給電」による建築物のデジタルトランスフォーメーションに貢献するとしている。

メディカルインプラント領域

メディカル領域における最初のターゲットアプリケーションは、感覚器へのデバイスを想定しており、現在基礎開発を行っているという。市場導入は2025年以降を予定。

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TechCrunch Japan

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