関税はロボットにどのような影響を与えたか?

先の7月、ティム・クックははOval Officeでドナルド・トランプ大統領と会い、シンプルなメッセージを伝えた。「私たちは、関税が最終的には消費者の負担となり、経済成長を抑制することになると思っています」というのがクックがトランプに伝えたメッセージである「そして時には、意図しない結果を招く重大なリスクもたらす可能性があります」と彼は付け加えた。

クックの説得は成功し、トランプはAppleの製品の一部に対する関税に対して、土壇場で猶予を与えた。だがそれにもかかわらず、同社が最新の決算報告を行った際には、クックは比較的低調だった同社の決算の理由を、双方向の関税と迫り来る貿易戦争のためであるとした。

関税の影響はきわめて広範囲に及び、その影響はソーラーパネルから大豆までを含む全てに及んでいる。Harley Davidsonが昨年、そのコストを4000万ドル以上と予想したことはよく知られている。昨日ニューヨークタイムズ紙は、輸入製品に対してかかる20%から始まる関税のおかげで、洗濯機業界の売上高と株価が下落したことを記事にした

家庭用電化製品は非常に幅広い部品調達を行っていることが多いため、非常に大きな影響を受けている。

CTAの会長兼CEOであるGary Shapiroは、TechCrunchに対して「現在の関税のコストは依然として問題です。潜在的により多くの関税が輸出規制と組み合わされることの不確実性は、5G、人工知能、ロボットの世界的なリーダーシップに対する真の脅威なのです」と語った。「米国のGDPの10%、1500万人以上の雇用を生み出しているハイテク産業は、今年すでに関税によって大きな打撃を受けています。私たちの業界は、毎月10億ドルの追加関税を支払うことはできません。関税は税金なのです」。

ここ数ヶ月、製造業者たちは価格を上げるかコストを吸収するかの選択に直面してきたが、どちらも不安定な経済状況においては特に優れた選択肢ではない。このことによって、消費者向けロボットの主要な推進力となってきた、マサチューセッツ州を拠点とするiRobotが、困難な立場に立たされている。

CEOであるColin AngleはTechCrunchに対し、同社のプレミアム価格のRoombaデバイスは価格に対しての影響はあまりないものの、依然として大きな危機を感じていると語った。

「関税は最低です」とAngleは言う。「第4四半期に、私たちは関税分のコストを吸収しました。価格改定はしていません、そして私たちは、昨年の利益に対する影響を500万ドルと見積もっていたと思います。2019年には、他のすべてのロボットメーカーやほとんどの消費財メーカーと同様に、価格を引き上げました。なぜなら私たちのビジネスモデルではもう影響を吸収しきれなかったからです。それが意味することは、業界の成長が阻害されるということです」。

より工業的な側面では、ロボット産業は鉄鋼輸入価格の高騰に強い打撃を受けている。「最近中国から輸入される多くの鉄鋼に課されている関税は、Eckhartだけでなく、競合する多くの同業他社にも影響を与えています。そしてもちろん顧客にも」と、協働ロボットメーカーであるEckhartのCEO Andrew Stormは、Fox Businessに対する最近のインタビューで語った

中国を拠点とするドローン大手DJIのことはあまりはっきりしていない。「部品と様々な機材に関しては、ある程度の関税の影響が出ていますが、私たちのドローンビジネスそのもに影響は出ていません」と広報担当者はTechCrunchに語った。「私たちは常に関税、通貨の変動、その他の要素を、世界中の国々の価格設定の中で考慮していなければならないので、ここでその影響を誇張したくはありません。私たちは状況を注意深く観察しています。私たちはこうした貿易問題に直接手を出すことはできませんから、私たちは引き続き皆様に買っていただける最高のドローン作りに集中するだけです」。

現在のところ、中国との迫り来る貿易戦争でさえ、少なくともロボットとオートメーションの必然的な流れを止めることはできないように見える。とはいえ、成長が阻害される可能性はある。

「私たちに課されている関税は、これまで産業用ロボットや自動化技術の主要な買い手であった自動車製造業などの製造業に影響を与えていいます」とTechCrunchに語るのはIDCのリサーチディレクターで商業用サービスロボットを担当するJohn Santagateである。「2018年には自動車製造業からのロボットの受注がやや減少しましたが、一方他の業界からのロボットの受注は大幅に増加しました。他の産業分野におけるロボットは力強い成長を示しており、いずれにせよそれは続くことでしょう」。

画像クレジット: Luis Castaneda Inc.

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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