陽子線がん治療装置の小型化・低価格化開発を手がけるビードットメディカルが7億円を調達

陽子線がん治療装置の小型化・低価格化開発を手がけるビードットメディカルが7億円を調達

小型陽子線がん治療装置の開発を手がけるビードットメディカルは2月2日、シリーズAの第三者割当増資により、2021年1月末時点で総額7億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、メディアーク、ニチコン、Cosylab d.d.(スロベニア)、JA三井リース。

調達した資金により、現在開発を進めている、巨大な回転機構が不要となる「小型陽子線がん治療装置」の開発を加速させるとともに、装置の製品化を進め、企業価値のさらなる向上に努めるとしている。

2017年3月設立のビードットメディカルは、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所(放医研)認定のスタートアップ企業。放医研で培った高度な技術と経験を活かし、「小型陽子線がん治療装置」を開発している。

陽子線治療は体内深部にある腫瘍をピンポイントで正確に照射するため、周囲の正常な組織や臓器へのダメージを低く抑えられるという。しかし、装置が巨大で高額なことが長年普及の妨げになっており、一部の人しか受けられていないのが現状となっているそうだ。

そこで同社は、従来装置から大幅な小型・低価格化を実現し、既存のX線治療室のサイズに合わせて、装置の導入・置き換えを可能にするとしている。陽子線治療の普及に向け、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)および国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの支援も得ながら、装置開発を進めている。

同社の開発する小型陽子線治療装置は、巨大な回転機構を必要とせずに陽子線ビームを多方向から照射できる非回転型ガントリーを搭載。陽子線をどの方向から電磁石に入射させても、1点に収束するように磁場形状を最適化することで、電磁石を回転させることなく、陽子線を任意の角度から照射することを可能にする。

また、肺・肝臓・膵臓など呼吸にともない動く臓器への照射についても、X線透視を使った呼吸同期照射法と高速スキャニング法の組合せによって対応する。

同社は、これら陽子線治療技術の向上と、装置の小型化を実現する画期的な技術により、陽子線治療の普及を促進していくとしている。

関連記事
東大IPCがガンの診断・治療に役立つ独自抗体医薬を開発する凜研究所に2億円を出資
がん患者と介護者、がんサバイバーのためのプラットフォームAlulaが2.3億円調達
アミノ酸トランスポーターLAT1を創薬標的に画期的医薬品開発を目指すジェイファーマが5億円を調達
細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達
BuzzreachがAPI連携で構築したがん治験情報検索サービスをFWD富士生命と患者に向け提供
痛くない乳がん用診断装置開発の東大発スタートアップ「Lily MedTech」がNEDOに採択され約2.4億円獲得
名古屋大学発スタートアップのIcariaが資金調達と社名変更、尿検査による早期のがん発見目指す
武田薬品からカーブアウトしたファイメクスが約5.5億円調達、タンパク分解誘導剤の研究開発加速へ

カテゴリー:ヘルステック
タグ:がん / がん治療(用語)資金調達(用語)ビードットメディカル日本(国・地域)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。