離婚した両親の金銭トラブルを回避するアプリのEnsembleが3.3億円調達

Jacklyn Rome(ジャックリン・ローム)氏は14歳のとき、離婚が家族にどれほどの衝撃を及ぼすか、そしてその後の手続きで両者の金銭を巡る争いが子どもにどれほどの衝撃を与えるかを初めて目の当たりにした。

その体験は、ずっと彼女にまとわりついていた。大人になり、Uber(ウーバー)やBlue Apron(ブルー・エイプロン)で新商品立ち上げを指揮した後、ローム氏は自身のスタートアップEnsemble(アンサンブル)のコンセプトを思いついた。そして2020年、離婚が子どもの必要経費に悪影響を及ぼさないように、共同養育者の間の緊張を緩和することを目的とした出費記録アプリが、App Storeでひそりとローンチされた。

米国時間3月31日、EnsembleはTTV Capital、Lerer Hippeau、Citi Venturesからのシード投資300万ドル(約3億3000万円)を調達し、ステルスモードから姿を現した。

簡単にいうと、Ensembleの使命は共通の家計を簡単に管理できるようにすることで、共同養育者と子どもの生活を改善することにある。

「ほとんどの共同養育者は、場当たり的に家計をやり繰りしているか、養育費に依存しています。しかし、養育費の対象は食事、住居、衣服に限られ、子育てにかかる費用の半分に過ぎません」とローム氏は指摘する。残りの半分には、医療費、校外活動、交通費などがある。大抵の場合、共同養育者たちはテキストメッセージやスプレッドシートを使って交渉を行っている。

Ensembleの創設者にしてCEOのジャックリン・ローム氏(画像クレジット:Ensemble)

Ensembleは2020年1月に6カ月間の試験運用を開始し「クレジットファースト」版のアプリを公開した。2020年4月には、両親がアカウントを接続できる二重機能版の運用が始まった。

2020年春のApp Storeデビュー以来、Ensembleは利用者自身による「力強いオーガニックな伸びと推薦」が得られているとローム氏は話す。平均的なEnsemble利用者は、月に1000ドル(約11万1000円)を超える子育て費用の共同管理を行っている。

Ensembleのダウンロード数のおよそ30パーセントは、App Storeでこのアプリを発見したというオーガニックな出会いによるものだと彼女はいう。

「どんなに円満な離婚であっても、別れた両親が揉め始める最大の原因が金銭問題です。より険悪な離婚の場合、感情的になり、他に何も持たない2人にとって、これが唯一の武器となります」とローム氏。「そこで私たちは、費用の共同負担に関する話し合いの緊張をほぐし、別れた両親の繊細な要求に応えられるよう、このアプリを開発を始めました」。

今のところ、アプリは無料で提供されているが、Ensembleではシードラウンドの資金を使って、収益化を開始する予定だ。

ゆくゆくは、有料のサブスクリプションモデルを構築することにしている。長期計画としては、出費管理アプリの枠を超えて、支出を厳格に管理できる共有クレジットカードなど、金融商品やプライマリー銀行商品を提供したいと、ローム氏はTechCrunchに話した。

「結論として私たちは、離婚した両親の子どもが、将来自分の経済的基盤を築く際に、金銭面での不利益が一切生じないように手助けしたいのです」と彼女は述べている。

ローム氏は、ニューヨークのベンチャースタジオCo-Created(コクリエイテッド)の駐在起業家(EIR)だったときに、Citi Ventures(シティー・ベンチャーズ)のD10Xプログラムを使って Ensembleを創設した。

「Citiから学んだ重要なことに、銀行にとって新規顧客の獲得が極めて困難だという点があります。銀行を乗り換える人は滅多にいないからです」とローム氏。「一生のうちでわずかに存在する、人が銀行を変える機会は、離婚のときです。それを聞いて、離婚で辛い思いをしている時期の、特に金銭にまつわる問題に関する思考プロセスに火が点いたのです」。

Citi Venturesのベンチャー投資担当ディレクターであるLuis Valdich(ルイス・バンディッチ)氏によると、銀行は、個人の金銭的な必要性が社会の動向につれて変化する様子を「しばらく監視」し、同時に、そうした手の届かない需要に対処できるスタートアップへの投資機会の可能性を特定してきたという。

「格差が広がっている問題に、離婚した、あるいは別居の両親の共通の支出の管理があります」とバルディッチ氏はいう。「Ensembleは、使い勝手の良さ、視認性、現代の養育者への共感、交渉の手間の削減のちょうどいいバランスを取ることで、この問題を解決しています。早い時期から、私たちはそのユーザーエクスエペンスが市場の同等製品と比べて際立って優れていると見ていました。またジャックリンは、Ensembleが解決しようとしている課題に、ユニークな視点をもたらしました」。

CitiとEnsembleの具体的な計画内容については語らなかったものの、バルディッチ氏は、Citi Venturesのアプローチは常に、未来のコラボレーションを見すえた企業に投資することだと話していた。

「私たちのポートフォリオ企業の大部分がCitiでまたはCitiのクライアントの中で商業化されていることを誇りに思っています。お互いに利益があると思えるようになったとき、私たちはいつものとおり、コラボレーションの機会を探ることになります」とバリディッチ氏。

一方、TTV Capital(ティーティーブイ・キャピタル)のパートナー Mark Jhonson(マーク・ジョンソン)氏は、同社は20年以上にわたり金融界に投資してきたが「コミュニケーションと金銭問題を簡素化するデジタルツールが切望されている」のは明らかだと話す。

彼はEnsembleのアプリを、共同養育者のそうしたニーズに応える「艶やかでシンプルなプラットフォーム」と呼んでいる。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Ensemble資金調達離婚

画像クレジット:Ensemble

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。