電動バイクのスタートアップLightning Motorcyclesが300キロ以上の航続性能を備えるモデルを発表

Lightning Motorcyclesが数カ月前からじらすように宣伝していた電動バイクが、ようやくお披露目された。1万2000ドル(約133万円)から1万9000ドル(約210万円)の価格帯で売られるStrike電動バイクには、200マイル(約322キロ)の航続距離、時速150マイル(約240キロ)の最高速度、そして35分のDC急速充電時間のオプションが提供されている。

新しいマシンは、LightningのデビューマシンであるLS-218よりも、より直立したライディングポジションと、よりお財布に優しい価格で提供される(最高時速218マイル、時速約351キロ)で3万8888ドル(約430万円)のスーパーバイクLS-218は、世界最速の量産型ストリートバイクであることが売りだった)。

LS-218では、Lightningは販売量を望めないニッチなハイパーパフォーマンス市場に注力していた。

今回このスタートアップは、Strikeを乗り手と価格の観点からより広い市場に魅力と買いやすさを提供するモデルだと予告していた

Strikeが登場した今年は、EVスタートアップたちがよりスペックと価格の厳しい競争にさらされ、大きなバイクメーカーたちが電動への切り替えの圧力をより強く感じている年である。

Strikeは3つのバリエーションと価格帯を提供する。その1万9998ドル(約222万円)のCarbonエディションは20kWhのバッテリー、約322キロまでの航続距離、そして時速約240キロの最高速度を誇っている。もっとも低価格である1万2998ドル(約144万円)のStandardエディションは、バッテリーの容量は半分、ハイウエイと市街地における航続距離は70マイル(113キロ)から100マイル(161キロ)、そして最高速度は時速135マイル(時速約217キロ)である。

Lightningはこの数カ月の間、Strikeのチラ見せを行いながら注文を受け付けていたが実際の出荷は7月に始まる。

ここ数年、電動バイクのスタートアップたちは、ガソリンバイクと比べた際の、価格、走行距離、エネルギー充填時間、そしてパフォーマンスのギャップを埋めるモデルを生み出そうと努力を重ねてきていた。彼らはまた、若い世代に対する新しいオートバイの販売を活性化させたいという希望も抱いている。

米国のオートバイ産業は、リーマンショック以降かなり悪い状況に置かれてきた。2008年以降、新規売上高は約50%減少し、40歳未満の所有者は急激に減少した。例外は女性たちであり、唯一の成長を続けるオートバイ所有セグメントとなっている。

ホンダ、カワサキ、スズキ、BMWなど、 ビッグネームのメーカーのいずれも米国内では量産型の路上走行電動バイクを提供していない。だがハーレー・ダビッドソンはこの夏に2万9000ドル(約322万円)のLiveWireで市場に参入を予定している。LiveWireの時速0〜100キロ加速は3秒であり、航続距離は177キロを予定している。ハーレーはまた、さらなる電動バイクモデルの投入だけでなく、電動自転車、電動スクーターの生産にも参入し、完全に電動化へ舵を切る計画であることも明らかにしている。

また別のカリフォルニアのスタートアップであるZero Motorcyclesは、より広い市場を相手にモデルラインアップを提供している。その最も安い機種は8000ドル(約87万円)のFXモデルである。 Zeroは最近そのゲームをさらに進め、出力110馬力で価格1万8000ドル(約222万円)のSR/Fモデルを発表した。航続距離は322キロ、充電時間は1時間、そして最高速度は時速124マイル(約200キロ)である。

さらにイタリアに本拠を置くEnergicaというメーカーもある。これは高性能バイク市場に応える電動バイクスタートアップであり、米国内で重点的なマーケティングを行っている。同社は研究開発と各種の支援を、筆頭投資者であるCRPグループから得ている。CRPグループは、F1やNASCARの支援経験を通したエンジニアリングの裏付けを持つイタリアの企業だ。

この先の会社の競争を考えるときに、Lightningの新しいStrikeには注目すべき2つの観点がある。1つ目は、新しい低価格モデルに関する資金繰りと収益の伸び方だ。

(四輪の世界の)Teslaのように、Zeroのような電動バイクのスタートアップたちは、皆その資本燃焼率に苦しんでいて、最終的には閉鎖に追い込まれてしまう企業もある。そうした例には、Brammo、Mission Motorcycles、そして最近では、VCから4500万ドルの資金を受けていたが昨年10月に操業停止したカリフォルニアのEVベンチャーであるAlta Motorsなどがある。

Lightningがどのようにして資金を得ているのかはよくわかっていない(CrunchbaseにはVCからの5万ドルが書かれているだけである)し、Zeroよりも売上が少なく、Energiaのような研究開発支援も受けていないこの電動バイクスタートアップが、一体どのようにして新しい低価格のStrikeのための資金繰りを行っているのかも不明なのだ。

そして、それは注目すべき第2の観点につながる。それは、バイク乗りの人々(もしくは非バイク乗りの人びと)は、Strikeの新しいデザイン、性能、そして価格の組み合わせを気に入ってくれるのかという問題だ。

Strikeのデザインが、ほとんど明らかにされていなかったチラ見せ期間の間、私はLightningがもっとスポーツ要素が少なく姿勢を起こした状態で乗るものを発表するものだと思い込んでいた。 Zeroの新しいSR/Fにより近いものだ。そうすることで初心者と、電動に切り替えたいと考えている旧来のバイク経験者に対するアピールができるからだ。

だが発表されたスポーティな形状は、Strikeをレース仕様に触発されたEnergicaの高価なEGO(2万2000ドル、約244万円)の競争相手として位置付けるものだ。これはLightningが新しいバイクのターゲットとして予告していた、より大衆的な客層からは乖離したものである。

タイミング、需要、そしてスタートアップが新しいVCを引き付ける能力によって、Lightningの新しい自転車が購入予定者を魅了できるかどうかが決まるだろう。

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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