電動航空機用水素燃料電池システムの開発でHyPointとPiaseckiが提携

電動垂直離着陸機(eVTOL)で高い評価を得ている企業をざっと調べてみると、1つの共通点があることに気づく。それは、すべての企業がバッテリーを動力源とする航空機を開発しているということだ。しかし、リチウムイオン電池ではエネルギー密度に限界があると考え、代わりに水素燃料電池に目を向ける航空機会社も増えている。

そこで注目を浴びているのが、HyPoint(ハイポイント)という企業だ。創設2年目の同社は、ZeroAvia(ゼロアヴィア)をはじめとする多くのeVTOL企業と共同で、空冷式水素燃料電池システムを開発している。空冷式水素燃料電池は、従来の液冷式水素燃料電池と比べると、出力重量比が3倍になるという。そして今、この燃料電池開発会社は、Piasecki Aircraft Corporation(ピアセッキ・エアクラフト・コーポレーション)を新たにパートナー名簿に加えることになった。

両社の協力関係は、水素燃料電池システムの設計と認証に向けて、650万ドル(約7億1300万円)の多段階開発を共同で行うというものだ。この提携により、HyPoint社は、地上試験、デモフライト、認証プロセスのために、650キロワットの水素燃料電池システム5基を提供する。

その目標は、既存のリチウムイオン電池の4倍のエネルギー密度と、既存の水素燃料電池システムの2倍の比出力を持ち、タービン式回転翼機と比較して最大50%の運用コスト削減を実現するシステムを作り上げること。HyPointは3月にこの新技術の試作品を公開している。

画像クレジット:HyPoint

今回の提携により、Piasecki社にはこの技術が独占的にライセンス供与される。同社はこの技術を「PA-890」有人ヘリコプターに使用することを目指しており、これは市場で最初の水素を燃料とするヘリコプターになるという。ハイポイント社は、この燃料電池技術の独占的所有権を維持することになる。

両社は声明の中で、他のeVTOLメーカーにもこのシステムを提供していく考えがあると述べている。「Piasecki社は、Hypoint社とともに、他のeVTOLメーカーを支援する準備ができています」と、HyPointのAlex Ivanenko(アレックス・イワネンコ)CEOは、TechCrunchに語った。

この契約は実現可能性調査から始まったもので、そこでHyPointは、概念実証のために非常に小規模なプロトタイプを製作した。現在、同社は設計段階にあり、単体パワーモジュール(650キロワットのシステムは複数のパワーモジュールで構成される)の製造と、Piaseckiの航空機にシステムを統合するコンセプトに取り組んでいる。単体パワーモジュールは年内に準備が整い、2023年には最初の650キロワットシステムがPiaseckiに納入される予定となっている。商業的に利用可能な製品となるのは、2025年頃になる見込みだ。

画像クレジット:Piasecki Aircraft Corporation

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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