電話対応をリアルタイムでサポート、カスタマーサービス向け会話型AIを開発するLevel AIが約14.3億円獲得

Level AIは、Alexaプラダクトチームの元メンバーが立ち上げたアーリーステージのスタートアップ企業で、顧客とのやり取りをリアルタイムに理解することで、企業がカスタマーサービスの電話対応をより迅速に対処できるよう支援したいと考えている。

同社は米国時間8月25日、Battery Venturesを中心とした1300万ドル(約14億3100万円)のシリーズAを発表するとともに、シード投資家のEniac、Village Global、および無名のエンジェル投資家からの支援を得て、一般公開を開始した。BatteryのNeeraj Agrawal(ニーラジ・アグラワル)氏は、今回の契約に基づき、同社の取締役に就任する。同社の報告によると、初期の200万ドル(約2億2000万円)の資金調達を含め、現在1500万ドル(約16億5100万円)を調達しているとのことだ。

創業者のAshish Nagar(アシシュ・ナガー)氏は、Amazon(アマゾン)のAlexaチームでプロダクトの運営に携わり、Alexaに今よりさらに進化した人間らしい会話をさせるための実験的なプロジェクトに取り組んでいた。技術がまだそこまで到達していないため実現はしなかったが、会話型AIへの理解を深めることができ、2019年にはその知識をカスタマーサービス領域に生かすためにLevel AIを立ち上げた。

「私たちのプロダクトは、電話対応のスタッフがより良いパフォーマンスを発揮し、顧客からの問い合わせをより迅速に解決し、より迅速にそれらを対処できるようリアルタイムでサポートする。そして通話後には、その通話の品質管理やトレーニング監査を行っている監督者が、5~10倍速く仕事ができるようになる」とナガー氏は説明する。

同氏によると、Level AIソリューションにはいくつかの工程が含まれるという。1つ目は、会話の内容をテクノロジーが理解できるように意味のある塊に分解して、リアルタイムに理解することだ。そして、その情報をもとに、バックグラウンドで稼働しているワークフローと照合し、有用なリソースを提供する。最後に、収集したすべての会話データを使って、企業がこれらの活動から学ぶのを支援する。

「すでにあるすべての通話データ、メールデータ、チャットデータを新しいレンズで見ることで、スタッフをより効果的にトレーニングでき、プロダクトマネージャーなど、ビジネスの他の分野にも新たな識見を提供することができる」とナガー氏はいう。

これは、感情を見たり、使われているキーワード分析を用いて行動や理解を促すものではないということを明確に強調している。それは、顧客の問題が解決するよう、通話のやりとりの中の言語を本当の意味で理解しようとし、より適切な情報をスタッフに提供することだと言っている。そのためには、人の意図をモデル化し、記憶し、同時に複数のことを理解する必要がある。これは彼がいうように、そもそも人間がどのように対話するのかということであり、これがまさに会話型AIが模倣しようとしていることでもある。

まだ完全ではないが、技術の進歩が許す限り、これらの問題の解決に1つ1つ取り組んでいる。

同社は2018年に立ち上がり、最初のアイデアはフロントラインで働く人たちのための音声アシスタントを作ることだったが、ナガー氏は顧客と話しているうちに、本当の需要はここではなく、会話型AIを使って人間の労働者を増強させること、それが特にカスタマーサービスにあるということを知った。

彼は代わりにそれを作ることに決め、2020年3月にはプロダクトの初期バージョンを発表した。現在、同社には米国とインドに分散して27名の従業員が在籍しているが、ナガー氏はリモートでどこでも採用できることで、社内の多様性を推進しつつ、最高の人材を獲得できると信じている。

今回のラウンドでリードインベスターを務めるアグラワル氏は、同社を、正しい情報をリアルタイムでスタッフに提供するという根本的な課題の解決に取り組む会社だと考えている。「彼が作ったものは、リアルタイムであることを念頭に置いている。これは、カスタマーサービスのスタッフを支援するための聖杯のようなものだ。通話が終わった後に情報を提供することもでき、それはそれで便利だが、(中略)通話中に情報を提供することで真の価値を発揮する。そこに本当の意味でのビジネス価値がある」と彼はいう。

ナガー氏は、この技術が営業など他の業務にも応用できることを認めているが、当面はカスタマーサービスに注力していくつもりだ。

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画像クレジット:lankogal / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳: Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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