霜降り技術が売りの植物性ステーキ開発Juicy Marblesが5.1億円を調達

スロベニアのスタートアップJuicy Marbles(ジューシーマーブルズ)のおかげで、肉を食べる人に対し、環境にやさしい食事をするよう説得することが(それが矛盾に聞こえなければ)少し楽になるかもしれない。同社は、植物性のホールミートカット(塊肉)を作る方法を開発した。

「Fancy Plant Meat(すてきな植物性肉)」は、フィレミニョンステーキやその他の(動物)肉の「プライム」カットに代わる、ヴィーガン向けの同社製品を表現する力強い売り文句だ。

リュブリャナを拠点とするこのスタートアップは、植物性タンパク質の最高級品を市場に投入するため、450万ドル(5億1000万円)の資金調達を発表した。前述の(ヴィーガン)フィレミニョンを皮切りに、2022年第1四半期の発売を予定している。

なぜフィレスミニョンなのか。それは、独自に開発した「霜降り技術」を最もよく発揮できるカットだからだ。また、フィレミニョンを選んだのは、このカットが(肉の)ステーキの「王冠の宝石(重要部分)」と考えられているからだという。

さらに、高級フェイクミート市場は比較的競争が少ない。それに対し、ハンバーガーソーセージベーコンチキンテンダーなどの、派手さが少なく、カットがより小さい代替タンパク質製品は、製造する企業が多数存在する。そのため、大きなサイズでがっしりとしたものにすることは、盛り上がる代替タンパク質市場で目立つための1つの方法だ。

「他のホールカットに先駆け、まずはフィレスミニョンから始めることにしました。フィレミニョンはステーキ界の『王冠の宝石』であり、当社の霜降り技術が最もよく発揮されるからです。当社の明確かつ決定的なセールスポイントと言えるでしょう」とJuicy MarblesはTechCrunchに語った。

「私たちは、最も高価なカットだけではなく、サーロイン、ランプ、フィレ、トマホーク、和牛、そしてフィレミニョンで知られるようになりたいと思っています。長期的には、フィレミニョンをより手頃な価格で、植物性であることによる経済性の違いを考慮した上で、入手しやすいものにしていきたいと考えています」。

Juicy Marblesのフィレミニョンにかぶりつくとき、あるいはかぶりつくとして、実際に食べているのは何だろうか。主なタンパク質は大豆だ。大豆は栄養価が高く、環境的にも持続可能であると同社は主張している。

「大豆栽培が森林破壊を引き起こしているという問題があります。これは、大豆栽培が家畜を育てるために必要とされるからこその問題です。大豆生産量の97%は家畜の飼料として使われており、もし私たちの肉がすべて植物由来になれば、大豆栽培の悪影響は単純になくなってしまうでしょう」と同社はいう。「人間が食べるための作物として、純粋に人間が消費する大豆に必要な土地ははるかに少なく、現在必要とされている農地の3分の1以下になるでしょう」。

大豆は用途が広い。Juicy Marblesは、あらゆる形態で食べることができると指摘する。生、ドライ、プレーン、発芽、粉末、発酵といった状態の他、豆腐、ソース、スープ、デザート、飲み物などとして摂取することができる。同社は「大豆中心のフードカンパニー」となることで、より柔軟に料理を提供できると述べている。

例えば、大豆を使ったマグロのステーキなどのアイデアがある(動物性ではない、マグロ代替品を最初に市場に出す会社というわけではない。例えばYCが支援するKuleanaなどがある)。

「私たちのビジネスは、タンパク質の食感というコンセプトを基盤としています。これこそが、人々が安価な肉と比較してステーキに惹かれる決定的な要因なのです。植物性食肉のホールカットの分野では、あまり革新的な技術がなく、誰も高級品を模したステーキを開発することができませんでした」と同社は語る。「この分野でも脱炭素化や植物由来の代替品のニーズがあることを考えると、これは大きなライバル企業が開拓していない巨大な機会だと思います」。

画像クレジット:Juicy Marbles

「植物由来の製品といえば、現在はハンバーガーやソーセージ、ベーコンなどの安価なカットに限られています。また、チキンテンダーやツナ缶などの塊もありますが、ホールカットはありません」と付け加えた。

Juicy Marblesは、どのようにしてこのような大量のフェイクミートを製造できるのかを明らかにしていない(タンパク質の霜降り技術を解明しようと「多数の大手食品会社が嗅ぎ回っている」と主張している)。

しかし、同社は、自社の知的財産が確実に保護されるようになれば、より透明性が高まるとしている。

同社は、植物性ステーキが研究室で栽培されたものでも、3Dプリントされたものでもないことを明記した上で、特許出願中の独自の3D組み立て技術を使用しており、これによって「形状、食感、霜降り、味、香り、栄養を完全にコントロールした、A5等級の高級肉」を作ることができると主張している。

もちろん、これらの主張の真偽は食べることで明らかになる。しかし、Juicy Marblesは「高レベルの霜降り効果」と「大胆で豊かな風味」の両方で肉を食べる人は驚くはずだ、という。

また、発売時には「平均的な価格」のフィレミニョンと「同等」の価格を実現するが、最終的には(「2〜3年以内に」)ステーキ1枚あたりのコストがより手頃価格の肉を買うのと同じになるよう縮小していくとしている。

Juicy Marblesは、植物性ステーキには非飽和脂肪酸が使用されており、肉類に比べてナトリウムが少ないこともメリットだと指摘している。なので、植物性ステーキへの切り替えを検討する健康上の理由付けがあるかもしれない(地球上の生命の未来が十分に大きな理由ではない場合)。

今回のシードラウンドは、植林活動を行う検索エンジンEcosiaが新たに設立したWorld Fund(3億5000万ユーロ=約448億円の基金)がリードしている。同ファンドは、地球の脱炭素化に役立つテックに取り組んでいるスタートアップにフォーカスしていて、TechCrunchは2021年10月同ファンドの立ち上げを取り上げた(Juicy MarblesはWorld Fundの最初の投資先だ)。

このファンドのゼネラルパートナーDanijel Visevic(ダニジェル・ビシェビッチ)氏は、声明で次のように述べた。「近年、地球と自分の健康のために真の変化を起こしたいと願う世代によって、植物由来の代替品へのシフトが起こっています。しかし、多くの場合、代わり映えのしないものを目にしたり、ホールカット肉のようなちょっとした贅沢を諦めることができず、完全な植物性食品への移行に抵抗を感じたりしています。Juicy Marblesのチームは、これを真に理解しています。チームの現実的で熟考されたアプローチは、彼らの技術力、そして食欲(!)と相まって、植物性食品のパズルの主要な部分をついに解明しました。チームに加わり、今後数カ月、数年のうちにどれほどのインパクトを与えるかを目撃できることに興奮しています」。

今回のラウンドには、Agfunderの他、Y CombinatorやFitbitなどのエンジェル投資家が参加している。

Juicy Marblesによると、今回の資金調達は、植物由来のステーキを小売市場に投入するための生産規模の拡大に使用される。

同社は、こだわりのある食料品店やレストランだけでなく、スーパーマーケットへの販売も計画している。しかし、生鮮食品を個人の消費者に配送するための「地球に優しい」梱包は複雑であるため、消費者への直接販売は特別なオファーに限られるとのことだ。

また、同社はチームを拡大し、新しいカットの開発含むR&Dをさらに強化する予定だ。

「学習サイクルとして、次のラウンドでは、植物性肉のギガファクトリーを設立して事業規模を拡大し、植物性肉の価格をさらに下げることができます」とも話す。

ちなみに、Luka Sinček(ルカ・シンチェク)氏、Maj Hrovat(マジ・フロヴァット)氏、Tilen Travnik(ティレン・トラブニク)氏、Vladimir Mićković(ウラジミール・ミッチコビッチ)氏の創業チームにはヴィーガンと肉食のどちらもいる。

画像クレジット:Juicy Marbles

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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