面倒な出張手配はチャットで丸投げ、出張支援クラウド「ボーダー」が1.5億円調達

ボーダーのメンバー。前列中央が代表取締役の細谷智規氏

出張支援クラウド「BORDER」を開発するボーダーは1月22日、三井住友海上キャピタル2018V投資事業有限責任組合(三井住友海上キャピタルが運営)とPKSHA SPARXアルゴリズム1号投資事業有限責任組合(PKSHA Technology Capitalとスパークス・AI&テクノロジーズ・インベストメントが共同運営)を引受先とした第三者割当増資により、1.5億円を調達したことを明らかにした。

ボーダーは2014年8月の創業。これまでに匿名の個人投資家などから2度に渡って資金調達を実施済みで、今回が3回目の調達となる。

在宅スタッフ×チャットコンシェルジュで手軽に出張手配

BORDERは出張の“手配”と“管理”における課題を1プロダクトで解決する法人向けのサービスだ。

特に中小規模の企業では、出張のたびに総務担当者(出張者本人の場合もあるだろう)が条件に合った航空券やホテルを探して手配することが多い。その作業には一定の工数がかかり、出張の数が増えてくると大きな業務負担となる。

また出張では手配だけでなく「誰がどんな経緯で、どのフライトを選択したのか」「会社内の出張規程を満たしているのか」といったチェックをする管理業務も発生する。総務や経理の担当者は1件ずつ内容を確認していく必要があるため、こちらも出張件数が増えればかなりの工数がかかってしまう。

BORDERではこれらの出張にまつわる業務を「チャットコンシェルジュとダッシュボード」を通じて効率化・透明化する。ユーザーがやることは要望と会社の出張ルールを伝えるだけ。後はBORDERのオペレーターがチャットベースで条件に合った航空券やホテルをピックアップしてくれるので、提案された候補の中から1つ選べばOKだ。

手配した出張のデータはダッシュボード上に自動で蓄積されていくため、総務担当者が自身で入力したり集計する手間もない。BORDER以外で予約した情報を取り込むことも可能で、出張に関する情報を一箇所に集約し可視化できる。

また取り込んだ情報を基にした安全管理機能を搭載。登録済みのフライトや宿泊施設の情報からメンバーの滞在期間と滞在先を特定し、出張者や管理者に現地の緊急ニュースを届ける仕組みも備える。

BORDERのダッシュボード。登録した出張情報からメンバーの滞在先なども見える化する

BORDERの特徴はチャットシステムを活用したスピード感と、手配から管理までを一体型でサポートしていることだ。「チャットによるコミュニケーションは旅行の手配と相性が良い」というのがボーダー代表取締役の細谷智規氏の見解。メールよりスピーディーで、なおかつ電話と違ってお互いのタイミングを合わせる必要もないため、ユーザーは手軽にサクッと出張手配を依頼できる。

料金面に関しても1回につき手数料1000円のみと利用のハードルが低い。BORDERでは在宅のオペレーターがリモートで出張手配をサポートする仕組みを構築。運営にかかるコストを抑えることで、スタートアップや小規模な事業者でも使いやすい料金体系を実現した。

今後は蓄積してきた出張データの活用強化へ

細谷氏の話ではこれまでに350社以上がBORDERを活用しているとのこと。メルカリやモンスター・ラボを始めIT系のスタートアップやメガベンチャーの利用も多く、中小規模の企業がメインにはなるものの全体の1割強は上場企業だ。

BORDERには出張者ごとの過去の手配情報や好み、同僚の利用履歴、会社の規定といったデータがたまっていくため、使い続けるほど提案の精度が高まっていく可能性を持っているのもポイント。SaaS型のプロダクトのように月額定額制で提供している訳ではないが、利用者向けのアンケートでも出張プランの提案についての満足度は94.7%と高く、継続利用する企業も多いという。

もちろんある程度出張の件数が増えてくれば、旅行会社に依頼するという選択肢も出てくる。ただ細谷氏によると既存プレイヤーは「手配」に注力しているケースが多く、予約したデータを活用した安全管理やコストの可視化、コスト削減サポートなど「改善」まで踏み込めている企業は限られる。

出張管理を効率化するBTM(ビジネストラベルマネジメント)ツールも複数存在するものの、スタンドアロン型で、インストールして特定のPCから使用するものが中心なのだそう。導入費や利用料も高く、BORDERとは特徴や狙っている顧客層も異なる。

欧米ではSaaS型で安価に使えるBTMツールが徐々に普及しつつあり、企業の規模を問わず出張管理が効果的に行われるようになってきている状況。ビジネスモデルに違いはあれど、BORDERとしても手軽に出張管理ができることを強みに、より多くの企業への導入を目指していく。

今回の資金調達も事業拡大に向けた開発体制の強化やマーケティングへの投資が目的だ。特にボーダーにとって重要になるのが出張データの活用方法。「第一段階の強みが在宅スタッフの力とチャットを掛け合わせた一連の仕組みだったとすれば、今は徐々に出張のデータが蓄積されてきて、それをどう活用していくかという段階に入ってきている」(細谷氏)という。

具体的に細谷氏が挙げていたのがコスト削減や安全管理、出張手配においてのデータ活用。現時点でもすでに取り組んではいるものの、さらに提案精度を上げていくのが目標だ。

また国内出張と海外出張など、利用シーンによって今後はチャットコンシェルジュとセルフブックの混合型が主流になるというのが細谷氏の考え。ユーザーが自身で手配する場合にも、たとえばデータと機械学習技術を組み合わせるなどして、ユーザーの負担を減らす仕組みを開発するといった展開はありえるだろう。

今回のラウンドではPKSHA Technology Capitalが共同運営するファンドも投資家として参画している。現時点で具体的な話があるわけではないようだが、PKSHAとは事業面での連携なども検討していきたいとのことだった。

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TechCrunch Japan

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