韓国のプロップテックRsquareがシリーズCで約82億円調達、東南アジアで事業拡大

韓国の商業用不動産仲介市場は細分化されており、不正確な物件情報、高額な仲介手数料、複雑な事務手続きのために、テナントが新しいオフィスを見つけるのは困難だ。ソウルを拠点とするプロップテックのスタートアップRsquare(アールスクエア)は、テナントが複数の物件を比較してオフィスを探せるよう、プロセスをデジタル化するためにデータ駆動型のプラットフォームを構築した。

RsquareのCEOであるJohnWoo Lee(ジョンウー・リー)氏は、TechCrunchのインタビューで、Rsquareが7200万ドル(約82億円)のシリーズCをSTIC Investmentsから調達したと話した。今回の資金調達により、累計調達額は約9500万ドル(約108億円)になった。

Rsquareは今回調達した資金を、AIを活用したプロップテックプラットフォームの高度化、商業ビルの取引やフルフィルメントセンターの仲介サービスの加速、来年までに従業員を400人に増やすことに使う、とリー氏は述べた。10月時点での従業員数は354人だ。

また、リー氏によるとソウルに本社を置く同社は韓国、そしてシンガポール、ベトナム、インドネシアといった東南アジアのプロップテック分野でさらなる投資を行う計画だ。同社は、2020年にベトナムのプロップテックスタートアップPropzyに、2019年にインドネシアのプロップテックMamikosに投資している。

6月にベトナムにオフィスを開設したRsquareは、2021年11月中にシンガポール、2022年にインドネシアに進出する予定だとリー氏は付け加えた。

2009年創業のRsquareは、スタートアップのオフィス探しを支援するため、2015年にオフィス仲介サービスを開始し、その後、中小企業や大企業向けへとプラットフォームを拡大してきた。2016年には、シリーズBでYahoo Japan CapitalとSoftBank Ventures Asiaから380万ドル(約4億円)を調達したことをきっかけに、オフィスのインテリアデザインサービスを提供する完全子会社Rsquare Designを設立した。

Rsquareの差別化のポイントとして、リー氏は創業以来収集してきたオフィスの家主やテナントの情報を含む商業ビルのデータを挙げる。同社は、韓国の50拠点で12万件以上の商業ビルデータ、ベトナムでは約1万件の商業施設データを蓄積しているという。同社によると、そのリアルタイムなデータベースは詳細な情報を提供し、従来の商業ブローカーに比べて、時間とコストを50%以上削減できる。同社は韓国で、2万1000人以上の顧客に1万件以上のオフィス仲介取引を行ってきた。

パンデミックは世界中の商業用不動産市場に打撃を与えた。Rsquareも同じくパンデミックに見舞われたが、2020年後半から多くの韓国企業がオフィスを再開し始めたため、急速に回復しているとリー氏は話す。同社は、2020年に5520万ドル(約63億円)の売上を計上し、その前の8カ月間の売上高は8500万ドル(約97億円)だった。新型コロナウイルス感染症のロックダウンが緩和されることで、2021年の売上高は2020年の2倍になると予想しているという。

エグジット計画に関しては、同社はすぐには株式公開を予定しておらず、2年以内に実現することはないだろうとリー氏は話した。2年ほど前にWeWorkを含むグローバルな戦略的投資家からM&Aの打診を受けたことがあるが、当時は彼らとのシナジー効果を見出すことができなかったと、M&Aの可能性について聞かれたリー氏は答えた。Rsquareは今後2年間、事業の拡大と海外市場へのさらなる浸透に注力するとも語った。

画像クレジット:Rsquare office in Seoul / Rsquare office in Seoul

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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