韓国の美容品専門EコマースのMemeboxが6600万ドルを調達

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韓国の美容品を専門とするEコマース企業のMemeboxがシリーズCで6595万ドルを調達した。これにより、さらなるビジネス拡大を目指す。

このラウンドをリードしたのは新規投資家のFormation Groupで、既存投資家のGoodwater CapitalとPejman Mar Venturesも本ラウンドに参加した。2014年にY Combinatorから卒業したMemeboxは、これまでに合計で9500万ドルの資金調達を完了したことになる。同社は2015年3月にシリーズBで1750万ドルを調達している。

現CEOのDino Ha氏によって2012年に創業されたMemeboxの当初のビジネスモデルは、いくつかの美容品をパックにしたボックスを販売するというものだった。しかし、BirchBoxに代表される美容品の箱詰めビジネスに陰りが見えてきたと判断し、現在のコンシューマー直結型のEコマース・ビジネスに方向転換をすることとなった。

現在、同社は韓国、中国、アメリカの3ヵ国に拠点を構えており、その他の国々向けにもグローバル・サービスを展開している。サンフランシスコ、上海、ソウル、台北、香港、シンガーポールの6ヵ国にオフィスを構え、従業員は合計で250人だ。Memeboxによれば、美容品の箱詰め製品の売り上げが全体に占める割合は1~2%程度だという。

Memebox U.S.のプレジデント、Arnold HurとTechCrunchとのインタビューによれば、同社のトータルGMV(プラットフォーム上の取引額の合計)は年間で1億5000万ドルにものぼり、その年間成長率は280%だ。

K-POPや韓国ドラマの影響もあり、韓国の美容品に対する需要は爆発的に伸びている。しかも、それはアジアの国々に限ったことではない。

韓国はMemeboxの出身地であり、同社にとって最大のマーケットではある。しかし今では、米国市場と中国市場での売り上げの合計は韓国市場を上回るという。そして、その2つのマーケットは急速に成長中だ。グーグル出身のHurによれば、Memebox Chinaは年間1200%、Memebox U.S.では年間490%ものスピードで売上高を伸ばしているという。

Memeboxのグローバル成長の立役者であるHurは、「韓国市場は当社のハブ拠点としての役割を持ち続けるでしょう。しかし、当社はグローバルでの売上高を伸ばすことにも成功してきました」と話す。

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Memebox CEOのDino Ha (写真左) とHur (写真右)

自社ブランド製品

韓国の美容品を専門にするMemeboxは、現在1200点以上のプロダクトを展開し、それらの製品は同社のプラットフォームを通して米国と中国にも販売されている。しかし、Memeboxのビジネスが面白いのは、既存の美容品に存在する「ギャップ」を自社ブランド製品で埋めているという点だ。

Hurはこの取り組みについて、Netflixのオリジナル番組を例に説明してくれた。

「Netflixが政治ドラマとKevin Spacyの人気を理解しているのと同じことです。彼らはその2つの要素を組み合わせて素晴らしいドラマを製作しました。それと同様に、私たちはデータによって顧客のニーズを理解し、トレンドとギャップを見つけ出すことが可能なのです」と彼は話す。

自社ブランド製品の1つである純アロエのフェイスマスクは、コットン製の従来のフェイスマスクを補完する関係にある。さらに自社ブランドの価格は従来品の4分の1だ。そして、マーケットに製品を投入するまでのスピードも速い。Memeboxによれば、自社ブランド製品のコンセプトが決定してから販売までにかかる時間はたったの数カ月だという。これは、他社が18ヶ月から24ヶ月かける従来の製品開発期間を大幅に短縮することによって実現されている。顧客ニーズに関するデータを分析することで、レポート調査、トレンド調査、フォーカスグループによるニーズ調査などにかかる時間を短縮しているのだ。

この取り組みは同社の収益にも大きなインパクトを与えている。

4つの異なるブランド、450点のプロダクトを含む自社ブランド製品からの収益は、他社製品の販売から得る収益よりも高いとHurは話す。

「自社ブランド製品はEコマース・プラットフォームよりも高い収益をあげています。自社ブランド製品を販売し初めてからまだ1年あまりだという事を考えれば、この数字は驚くべきものです」と彼は話す。

しかし、Memeboxは製品開発にフォーカスしてはいるものの、プラットフォーム上で販売している製品と直接的に競合する気はないとHurは話す。実際に、同社は今年末までに2つの自社ブランドを販売開始すると同時に、有力な他社ブランドをプラットフォームに加えることを目指している。

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オンラインを超える

オンラインは顧客と企業をつなぐ大きな接点である。そして、Memeboxもまた、オンラインに関する素晴らしい数字を公表している。アプリのダウンロード数は400万件にのぼり、全体の8割の売り上げがモバイルから生まれているのだ。しかし、Memeboxはオフラインの取り組みにも注力し始めた。

先日、同社初となる従来型の店舗がソウルにオープンした。Hurによれば、この店舗が同社初のオフライン店舗となるが、今後も実際の店舗を展開していくかどうかはまだ未定だという。

「オフラインの店舗を構えることで、新しい顧客層との接点が持てるだけでなく、より多くのデータを集めることにもなります」と彼は話す。「例えば、異なるパッケージングや棚の構成に対する顧客の反応の違いなどです。オフラインは、完全な顧客満足を実現するための要素の一つなのです」。

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デジタル・ファッションブランド

Hurによれば、Memeboxを突き動かすイデオロギーとは、デジタル世界のL’Orealのような企業を創りあげるというものだ。

デジタルはMemeboxが積極的に取り入れてきた要素だ。同社がもつソーシャルメディアのフォロワーとは別に(同社によれば、Facebookページの動画視聴回数は7000万回を超える。この数字は、「L’Oreal、Benefit Cosmetics、H&Mの動画視聴回数を合計したものより多い」)、Memeboxは美容品を紹介するユーチューバーやブロガーと共同での製品開発にも取り組んでいる。その製品の紹介動画や紹介記事を見る人々の半分は18歳から24歳の女性達だ。通常のマーケティングではその年齢層にリーチするのは難しいとされており、そしてこの顧客層は同社のメインターゲット層でもある。

「CPR(Comsumer Product Revolution)という言葉があります。コマース業界に新しい風を吹き込むことを意味する言葉です。」とHurは語る。「新しいブランドがオンライン上で生まれており、特に美容業界では、それらのブランドは従来のものとは大きく異なります。(従来の美容品企業と比較した)私たちの強みとは、今の時代に適した企業とは、過去の企業とはどのように異なるのかという事を常に考えることなのです」。

Memeboxは進歩をつづけているが、まだ利益を出す段階には至っていない。

「来年度には黒字化することを目指しており、それに向けて着々と成果を出してきています」とHurは語る。

将来的にIPOを目指すのか、あるいは、先日Walmartが30億ドルでJet.comを買収し、UniliverがDollar Shave Clubを10億ドルで買収するなどの動きがあるなか、同社も他社との合併を目指すのかについてはHurはコメントを控えた。

ただし、Memeboxが注目企業だということは間違いない。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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