韓国のRiiidはソフトバンクの支援を受けてAIベースの学習プラットフォームをグローバルに拡大する

「AIが教育の世界を食べている」。ソウルを拠点とするRiiidの共同創業者でCEOのYJ Jang(YJ・チャン)氏は、自分のLinkedInのプロフィールにそう書いている。米国時間5月24日、AIを利用して学生のテスト対策学習などをパーソナライズするRiiidが、AIが教育を食べるプロセスのプレイヤーとして地位を確立するための大型資金調達を発表した。

Riiidは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2のみから資金を調達する1億7500万ドル(約190億2000万円)のエクイティラウンドを完了した。

EdTechが好調な中での今回の資金調達となった。2020年にコロナ禍で学習がリモートに移行し、より良いツールを開発して教育市場に提供するチャンスが注目されたことを受けて、この分野の多くのスタートアップが多額の資金を調達してチャンスに挑戦している。Riiidは調達した資金で海外へ進出し、製品を拡充する計画だ。

Riiidは評価額を明らかにしていないが、このラウンドはこれまでで最大の規模で、同社のこれまでの調達金額の合計は2億5000万ドル(約271億7500万円)となった。これはEdTechの世界ではかなり大きい金額だ。

Riiidは主にSantaというTOEIC L&R対策アプリで有名になった。このアプリはこれまでに韓国と日本で250万人以上の学生に利用されている。英語のネイティブ話者でない場合、英語が使われている大学を志望する際にTOEICのスコアを求められることがよくある。

Riiidは他社との協力でTOEIC以外の試験対策にも乗り出している。Kaplanとの協力による韓国の学生向けのGMAT対策、教育サービスを各国に合わせて調整し提供するConnecME Educationとの協力によるエジプト、UAE、トルコ、サウジアラビア、ヨルダン向けACT対策、ラテンアメリカの大学受験生向けAIベースツールの開発などだ。ACT対策の開発の前には、ACTのCEOだったMarten Roorda(マーテン・ローダ)氏がRiiidの国際部門であるRiiid Labsに「エグゼクティブ・イン・レジデンス」として加わるとRiiidが発表していたため、ACT対策アプリを他のマーケットにも拡大するかもしれない。

同社は大学入試対策に加え、職業訓練アプリも開発している。不動産業者試験対策のSanta Realtorや保険代理店試験対策ツールを韓国で展開している。

EdTechがビジネスとして成長して全体の信頼性が高まり、対面での学習が一時的に中断したことによって生じたギャップを緊急に埋める必要がある中で、Riiidは成長してきた。AIをプラスアルファの要素として導入するのは、珍しいことではない。多くの企業が、1つで全員に対応する画一的なモデルにコンピュータビジョンや自然言語処理、機械学習の進化を取り入れて、エクスペリエンスをパーソナライズしている。ここで注目されるのは、Riiidが知的財産を考慮した研究開発を多く手がけてきたことだ。同社によれば、国内外で103件の特許を出願し、そのうち27件は取得済みだという。

RiiidのCEOであるチャン氏は発表の中で「Riiidは教育をAIで変革し、教育機会を真に民主化することを目指しています。今回の資金調達は我々が業界の新しいエコシステムをつくるジャーニーの始まりで、我々はグローバルなパートナーシップでこのミッションを実現していきます」と述べた。

ソフトバンクにとってはEdTech企業への大型投資の1つだ。他にはKahootに2億1500万ドル(約233億7000万円)を投資し、インドのUnacademyやブラジルのDescomplicaにも投資している。Riiidによれば、このラウンドはソフトバンクにとって教育アプリ用AI分野に特化した初の投資だったという。

SoftBank Investment AdvisersのマネージングパートナーであるGreg Moon(グレッグ・ムーン)氏は「Riiidは画一的なアプローチからパーソナライズされた指導へという教育におけるパラダイムシフトを牽引しています。AIと機械学習を活用したRiiidのプラットフォームは、教育関連企業、学校、学生にパーソナライズされたプランとツールを提供し、学習機会を最適化します。我々はYJやRiiidのチームと協力し、世界中で質の高い教育を民主化する目標を支援できることを喜んでいます」と述べている。

カテゴリー:EdTech
タグ:Riiid韓国ソフトバンク・ビジョン・ファンド資金調達AI

画像クレジット:Ivan Pantic / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

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TechCrunch Japan

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