音声指示に従って自動で返信メールを書いてくれるA.I.搭載のLess.Mail

膨大なメール処理に悩んでいるAndroid利用者向けに、A.I.を活用するLess.Mailというアプリケーションが発表された。モバイルアシスタントがメールの内容を把握し、そして利用者のために返事を書いてくれるというものだ。ミーティングへの誘いなど、メールに記されたオファーを受けるか否かをアシスタントに通知すれば、その意向にしたがって自動的に返信を作成してくれる。アシスタントへの指示は普通の話し言葉で行う。

たとえば、開発元のデモビデオによれば、利用者は「申し出を受け入れよう」(please confirm and accept)だとか「必要ない。だけど丁寧に断って欲しい」(No, thanks. But please decline politely)などと指示を出している。仕事の進捗を尋ねるメールには「やってるよと伝えておいて」(Just tell him I’m working on it)という指示で返信を作成してくれる。

(余計な訳注:下の動画はなかなかおもしろかったです)

Less.Mailの開発元は、Palo AltoのRobin Labsだ。Robin.AIというモバイルアシスタントのプラットフォーム上に各種アプリケーションを構築している。Robin.AIとは、AppleのSiriやGoogle Nowをよりオープンなものとしたいとして開発されたものだ。このA.I.プラットフォームはすでにRobinというアプリケーションで利用されている。用途を限定せず、Google Play風のアシスタント環境を提供するものだ。利用者も100万人を超えている。

また、昨年にはYahoo版Siriとでも言うべきものを作って話題になった(両社の間でどのような目的があってアプリケーションが開発されたのかについて、Robin Labsは詳細を明らかにしていない)。さらに、パーソナルアシスタント機能を備えた自動車用ルームミラーのシステムも開発している。これはパイオのイアとの戦略合意に基づく共同プロダクトだ。

Robin Labsの共同ファウンダー兼CEOのIlya Ecksteinによると、Less.Mailは現在進行中の音声操作機能を搭載したメールクライアントから、一部機能を取り出して実現したものだと話している。RobinのA.I.技術の応用可能性を世に示す目的もあるのだろう。またメールの操作に音声コマンドを利用することがどの程度受け入れられるものなのか、試してみる意図もあるようだ。

Less.Mailの開発に要した期間は数週間程度であるとのこと。もちろんA.I.部分について既にAndroid SDKを用意していることで、短期間の開発が可能となっているわけだ。多くの人に受け入れてもらえるようであれば、iOSなど、他のプラットフォームに移植することも考えているのだそうだ。現在のところは、ともかくまずテストをしてみようという話で、他プラットフォームの開発スケジュールなどは全く白紙であるとのこと。

メールの80%は定型処理で対応可

「名前にLessとついているのは、メールの処理時間を短縮できると考えたからです。他の作業を長く中断せずとも処理できるようにしたいと考えたのです」と、Ecksteinは言う。「受け取るメールのうち、80%ほどは定型処理で対処可能なものであると考えています」。昨今では、メールにおいても簡単に要件だけを記してやり取りすることが一般的になっている。オファーに対しては簡単にイエス/ノーだけを応えることも多い。また、予定通知のメールなどについては、それをカレンダーに移して処理終了とすることも多い。「私たちは、そうした定型処理可能なメールについて、できる限り簡単な処理方法を実現しようとしているのです」とのこと。

そして実際、Less.Mailを使えば送られてきたメールに対して定型的なレスポンスを戻すことができる。もちろん従来通りに自分で返信することも可能だ。また予定をカレンダーに移す作業も行なってくれる。

ただ、いろいろな理由で、メールを音声で処理するということに抵抗を感じる人もいるかもしれない。また、どのくらいの時間節約になるのかもよくわからないところだと思う。さらに、返信にあたっては結局自分で手を加えたくなるケースが多いかもしれない。

いろいろと疑問はあれど、しかしたとえば障害を抱える人にとっての支援ツールとしての使い方もあり得るだろう。また、車で長距離を移動する人は、従来なら音楽やトーク番組を聞いて暇つぶしをするくらいのことしかなかった。しかしこのLess.Mailを使えば簡単かつ効率的に受信メールを処理していくこともできるかもしれない。また、こうしたアプリケーションを使えば映画「her/世界でひとつの彼女」的な気分を味わうこともできるだろう。音声コマンドを利用するだけでなく、そこにA.I.が介在することで、デバイスを擬人化して考える傾向は強くなるに違いない。

どれほど役に立つものなのか、どれほどの注目を集めるのかについては、今後を見守りたい。現在は招待制で利用者を増やしている段階だ。徐々に利用者を増やしていって様子を見たい思いもあるのだろう。

Androidを使っていてLess.Mailを使ってみたいという人は、こちらから招待リストへの登録を申し込むことができる。

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(翻訳:Maeda, H