食べログ、「東京都の月間口コミ数ナンバーワン」と発表したRettyに反論

東京における月間口コミ投稿数の遷移

7月2日開催の事業戦略説明会で、「東京都において、国内最大のグルメサイトの月間口コミを超えた」と語り、サイト名こそ自ら出さないものの、東京都内の口コミ数でグルメサイト「食べログ」(MAUで6859万人で国内最大のグルメサイトだ)を上回ったと発表したグルメサイト「Retty」運営のRetty。その発表内容に対して食べログを運営するカカクコムが「Retty株式会社発表の弊社サイト「食べログ」口コミデータの訂正」という名称で反論のコメントを発表している。

食べログは200文字以上のコメントのみ「口コミ」として計測

食べログサイドの説明によると、実際にRettyに対して事実関係を確認したところ「口コミ数」自体が異なる基準で算出されているのだという。具体的には以下の通りだ。

■「食べログ」の口コミ数の基準
200文字以上のコメントを含む口コミ数

■「Retty」の口コミ数の基準
コメント無し、写真無しのものでも、スコアと利用シーンなどのお店の魅力が伝わるものを含んだ投稿数

食べログでは、「おいしい」「行きました」だけの短い口コミや、「(写真がないので)本当に行ったか分からないけど口コミしました」といった口コミはそもそも口コミではない、そんなノイズを排除した数字を出していると言っているわけだ。食べログがRetty基準で計算した場合の月間口コミ実数は以下の通り。Rettyの月間口コミ数は発表されたグラフから見る限り5万件弱(実数は現在同社に確認中)。まだまだ倍近くの数があるというわけだ。逆に言えば、Rettyが食べログの月間口コミ数の半分になるまで来ているとも見られるが。

4月 9万6802件
5月 10万5362件
6月 9万8527件

Rettyの投稿は「東京都が大半」と主張する食べログ

食べログはこれに加えて、Retty基準での全国の口コミ数も発表している。直近3カ月で毎月30万件の口コミが投稿されており、「東京都の投稿が大半であるRetty社に対して、食べログでは東京都以外の全国各都市においても活発に投稿が行われております」としている。

4月 29万7086件
5月 33万6333件
6月 29万7284件

Rettyは累計口コミ数170万件とは発表しているものの、東京以外での口コミ数については発表していない。昨日の説明会でもRetty CFOの奥田健太氏が「大阪をはじめとした都市部を中心に成長している」といった旨を説明するにとどまっている。そのため具体的な数字に関してはなんとも言えないけれども、東京での口コミが中心になっているのは間違いないだろう。

その根拠となるのはRettyが実名制を採用していること。RettyはFacebookログインを使った実名制のサービスだ。実際の口コミ数は非公開でも、「口コミを投稿することが可能なユーザー数」を調べることは容易だ。

Facebookの広告ツールの数字をもとにすると、国内の18歳〜65歳以上のFacebookユーザーは2300万人、そのうち東京都のユーザーは450万人(周辺のエリアでは神奈川県:230万人、埼玉県:120万人、千葉県:120万人、エリア合計で920万人)、大阪府は210万人(周辺エリアでは京都府:65万人、兵庫県:110万人、奈良県:65万人、エリア合計で450万人)、愛知県は150万人となっている。東京と大阪、もしくはそれぞれの周辺地域を含んだ数字を比較しても東京のFacebookユーザーは2倍という状況なのだ。この数字だけでもある程度口コミが東京に集中していることは想像できると思う。

食べログの発表についてRettyに聞いたところ、以下のような回答が返ってきた。

弊社として「口コミ」の定義を、コメント投稿に加えて、ユーザーにより選択された「オススメ度」と「利用シーン入力」、「おすすめの食事入力」などユーザーのお店選びの意思決定に資する情報としております。
ここの部分に関して両社の解釈が異なっていると思われます。
競合他社が「Retty社の口コミ数の定義に従った場合の食べログの口コミ数」として発表している数値は、リソース等不明なので詳細わかりかねますが、上記解釈の相違により我々の定義による競合他社の数値とは異なっており、依然、我々の発表した競合他社の数値は、Rettyの定義において正しく算出する上では、間違っていないものと考えています。
従って、競合他社のリリース内容に関しては、弊社はなんらその正確性/妥当性について保証していない点お伝えいたします。

食べログの「文字数も写真もない口コミは口コミじゃない」という意見に対して、Rettyは「文章以外の指標を入力することは、ユーザーの意志決定を助ける立派な口コミだ」としているのだ(もちろん、食べログにも点数をはじめとした各種の指標がある)。

両社の指標の是非については読者の判断にゆだねたい。しかしこうして食べログが緊急のリリース(プレスリリース配信サービスの「PR TIMES」では19時04分配信だった。通常プレスリリースは10時とか15時といったキリの良いタイミングにセットしておくものだ)を出すということは、かつてぐるなびやホットペッパーによる営業力勝負のグルメサイト全盛期の時代から着々とその地位を築いてきたきた食べログが、今度は後発のRettyを意識せざるを得ない状況に来ている、ということは確かだろう。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。