飲食店の未来が東小金井に出現、コネクテッドロボティクスの蕎麦茹でロボが実戦配備へ

コネクテッドロボティクスは3月16日、JR東日本の中央線・東小金井駅の改札内にある駅そば店「そばいち」に、同社が開発した蕎麦茹でロボットを期間限定で配備した。

4月15日までの約1カ月間、独自チューニングされたアームロボが茹でた蕎麦を食べられる。営業時間は朝7時から22時まで。

今回の取り組みは、同社がJR東日本スタートアップが実施した「JR東日本スタートアッププログラム2019」に採択されたことで実現したもの。JR東日本スタートアップと同じJR東日本のグループ会社で、JR東日本の駅構内の飲食店などの運営を手掛ける日本レストランエンタプライズを加えた3社での実証実験となる。

蕎麦を茹でる工程。3食の蕎麦を同時に茹でられ、交互に計6食の蕎麦を茹でることが可能だ

茹でた蕎麦のぬめり取りと水切りの工程

日本レストランエンタプライズが運営するそばいちは、注文が入ったら店舗で生蕎麦を茹でて提供するスタイル。

コネクテッドロボティクスが開発した蕎麦茹でロボットは、茹でる、湯切りする、ぬめりを取る、冷水で締める、水切るするという蕎麦の調理工程を流れ作業で処理。一度に6食ぶんの蕎麦を茹でることが可能で、1時間あたり40食程度の処理が可能という。なお、茹で上がった蕎麦につゆを入れて薬味や天ぷらをトッピングする作業については人力となる。ちなみに店舗内にはフライヤーも設置されており、こちらもその場で揚げるシステムだ。

蕎麦は基本的には券売機で食券で購入する。現金のほかもちろんSuicaなどの交通系ICカードでのキャッシュレス決済も可能だ

コネクテッドロボティクスの沢登哲也CEOによると「東小金井駅は弊社から近いこともあり、実証実験の場として選ばれた」とのこと。「生蕎麦を茹でるというそばいちの調理方法が弊社開発のロボットとマッチしました。これまでそれほど気にしてなかったのですが、食べ比べてみると茹でおきした蕎麦とはまったく違いました」とまずは味の感想を語ってくれた。現在、蕎麦店だけでなくラーメン店などからも問い合わせが来ているそうで、「ラーメン、特にとんこつラーメンの場合は麺の硬さを選べますが、それこそがロボットが得意とする部分です」と沢登氏。

蕎麦の茹で時間は飲食スペースに設置されたディスプレイで確認できる。茹で上がったあとにつゆやトッピングを投入をスタッフが担当する

駅そば店は朝早くから夜遅くまで稼働時間が長いことからメンテンスの頻度について質問したところ「メーカーによりますが汎用アームロボットは4〜5年の連続稼働を想定して開発されており、実際には10年ぐらいは大きな故障もなく使えることが多い」とのこと。なお、今回の蕎麦茹でロボットの導入コストは明らかにされていないが、以前の取材で沢登氏は「RaaS(ロボットをサービスとして提供)として提供する場合、1年間のコストはアルバイトの1人分の人件費程度」と語っていたことを踏まえると、安定した蕎麦茹でスキルを備えたロボットが最低でも5年程度、通常運用であれば10年稼働することによって、人手不足の解消に貢献することは間違いないだろう。

そばいちでは、生蕎麦から茹でるため調理に時間がかかる。取材時は稼働していなかったが、店内のディスプレイで購入した蕎麦の出来上がりが確認できる。こちらは蕎麦茹でロボットと直接連動しているわけではない

同社の佐藤泰樹COOもラーメン店でのロボット展開に期待を寄せる。「チェーン展開しているラーメン店の多くはとんこつラーメン店で、専用の麺茹でロボットとなると麺の茹でより時間が重要になってくる」としたうえで「問題はバリカタです」とのこと。店舗によって茹で時間は異なるが、一般的に「粉落とし」「ハリガネ」「バリカタ」などは茹で時間が数秒から十数秒と短いため、麺茹でロボットにとっては克服すべき課題の1つとのこと。またとんこつラーメン店では替え玉の需要が高いが「替え玉の場合は、麺茹でのあと麺を畳むように丼に入れ、ラーメンのタレをかけるまでの工程を自動化したいという要望もあり、超えるベきハードルは多い」とのこと。

今回の蕎麦茹でロボットの実戦配備については「蕎麦茹で以外の店舗作業のロボット化についても要望が多いのですが、展示会などでのデモンストレーションだけでなく、実際の飲食店で本格稼働するロボットをいち早く世に出したかった」と語る。

ちなみに同社開発のロボットはすでに飲食店2店舗に実戦配備されている。2018年7月に長崎県のハウステンボスにある飲食店、2019年10月に千葉にあるイトーヨーカドー幕張店に、たこ焼きロボットのOctSheff,ソフトクリームロボットのレイタがともに稼働中で、期間限定ながら蕎麦茹でロボットが導入されるのは今回が初だ。そのほか、大手企業のたこ焼き工場に配備されている機体もある。

JR東日本スタートアップの柴田 裕社長は今回の実証実験について「駅構内といっても郊外の飲食店は人手不足が深刻です。今回の実証実験で運用上の問題点などをチェックして本格稼働につなげていきたい」と語る。「一昨年にはサインポストと無人コンビニエンスストア、昨年はShowcase Gigとセルフオーダーなどの取り組みを続けてきました。JR東日本沿線では郊外や観光地の駅構内・隣接の飲食店は、対策を打たないと近い将来に人手不足で閉店になってしまうところもあります。この問題をロボットが補うことで多くの店舗の閉店を回避したい」と今回の実証実験について期待を寄せていた。

今後の蕎麦茹でロボットの配備計画は未定としたうえで「そばいちは現在8店舗あり、ほとんどの店舗が東小金井店と同じキッチンレイアウト」とのこと。ロボットのサポート・メンテナンス体制などの課題もあるが、本格導入が決まればまずは系列店舗に配備されるかもしれない。ちなみに今回、東小金井駅のそばいちに配備されたアームロボットは壁に取り付けられおり、事前に壁の補強工事などを実施したとのことだが、既存のキッチンスペースを拡張することなく配備が完了したとのこと。

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TechCrunch Japan

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