魚を拡張現実を生成するタンクに入れてみたらそれを本物の現実と区別できた

ニュージャージー工科大学の研究者たちが、グリーングラス(glass knifefish)の“姿勢維持”機能を調べているとき、動物の電気的感知器官をリアルタイムで騙(だま)すための拡張現実を作った。その魚はさまざまな穴を自分の家にして身を隠す習性があるが、研究者たちは、魚が自分を安全に保つために利用している自動的自律的なセンサー機能を、このやり方で知りたいと思った。

准教授のEric Fortuneはこう語る: “いちばん興奮したのは、この研究によって、われわれが10年以上前から夢見ていたやり方で、フィードバックを調べられるようになったことだ。ほとんどすべての動物が、自分の体を動かすことによってまわりの環境を感知しているが、この、運動によるアクティブな感知の基本的な過程を、拡張現実を利用してリアルタイムで調べたのは、おそらくこれが初めてだろう”。

魚がARのヘッドセットを装着したのではなく、研究者たちは水中で揺れる隠れ家の動きをシミュレートした。

Fortuneは曰く: “この魚が隠れ家の位置をフォローすることは前から分かっていたが、ごく最近分かったのは、人間の目の動きにも似た小さな動きを彼らが生成することだ。そこでわれわれは、拡張現実のようなものによって、魚の感知システムと運動システムとの関係を撹乱することはできないか、と考えた。しかし両者の結びつきを維持したままそれをやるのは、きわめて難しかった”。

その試験では、魚を管の中に入れて(上図)、管の動きと魚の目の動きが同期するようにした。魚が前や後ろへ動くとき、その動きは隠れ家の動きにも及ぶ。その動きを魚が見たとき、何が起きるのか。隠れ家の動きと魚の動きが同期したとき、魚はその動きが隠れ家の“リアル”な動き(単独の動き)でないことを、感知できた。つまり魚は、自分が仮想環境の中にいることを知っていた。

“動きの刺激の起源が独立のものであるときと、自分の動きのフィードバックであるときとを、魚は区別できた。この実験により、われわれが観察していた現象が、魚が自分の動きから受け取るフィードバックによるものであることが分かった。基本的にその動物は、自分のまわりの感覚世界を自分がコントロールしていることを、知っているようだった”。

もしかしたら魚は、Job Simulatorをプレイできるかもしれない。

“同じような実験を、人間の視覚についてもできるのではないか。それにより、神経生物学の貴重な知識が得られるだろう。また、視覚と運動のコントロールに関しては、人工的なシステムより動物の方がずっと上手だから、われわれが公開するデータを技術者が機械の制御に利用できたら、とても強力なフィードバックシステムが可能になるだろう”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa