2型糖尿病の治療など個人に合わせた健康的な食事・生活習慣アドバイスを提供するOvivaが約88.1億円調達

2型糖尿病の治療をはじめ、より多くの人がサポートを受けられるように、個人に合わせた食事や生活習慣のアドバイスをアプリで受けられるデジタルサポートサービスを提供している英国のスタートアップ企業Oviva(オビバ)は、シリーズC資金として8000万ドル(約88億1000万円)の調達を完了した。これにより、これまでの調達額は1億1500万ドル(約120億6700万円)となる。

ヘルステック事業が成長した「すばらしい1年」の後のさらなる拡大のために使用される、と同社が語る今回の資金調達は、Sofina(ソフィーナ)とTemasek(テマセク)が共同で主導し、既存の投資家であるAlbionVC(アルビオン・ヴェンチャー・キャピタル)、Earlybird(アーリーバード)、Eight Roads Ventures、(エイトローズ・ベンチャーズ)、F-Prime Capital(エフプライム・キャピタル)、MTIPに加え、数名のエンジェル投資家が参加している。

このような成長を支えているのは、富裕層では、肥満や2型糖尿病(食生活の乱れや運動不足が原因とされる)などの健康状態が増加し続けているという欧米の社会状況だ。一方で、一般的には、サービス提供にかかる費用の増加に対処するために、これまでの対応型ではなく予防型の医療の概念により注目が集まっている。

体重やそれにともなう健康状態(糖尿病など)をコントロールするための生活習慣管理の分野こそ、Ovivaの出番だ。Ovivaは、医療従事者が提供する個別のケアと、患者が食事内容を確認したり、サポートを受けたり、個々の健康目標に向けた進捗状況を把握したりするためのデジタルツールを組み合わせた複合サポートを構築している。

このアプローチを裏付けるように、23本もの査読付き論文が発表されており、肥満を抱える人々の6カ月後の体重が平均6.8%減少し、一方、専門家向けプログラムでは、12カ月後に53%の患者が2型糖尿病の緩和を達成しているという主要な結果が出ている。

Ovivaは通常、デジタルでのサポートプログラムを健康保険会社(または公的な医療サービス)に直接販売し、健康保険会社はその顧客や患者に同社のサービスを提供(または紹介)する。現在、同社のプログラムは英国、ドイツ、スイス、フランスで提供されているが、今回のシリーズCの目的の1つは、展開規模のさらなる拡大だ。

「当社が提供するダイエットや生活習慣の改善に対して、医療制度による償還が行われているヨーロッパの市場、特にデジタル償還のための具体的な経路が確立されている市場に規模を拡大していきます。励みになるのは、より多くの医療制度が、そのようなデジタル償還のための具体的な方針を作り始めているということです。例えば、ドイツではDiGAがあり、ベルギーでもここ数カ月の間に準備されました」とOvivaはTechCrunchの取材に語っている。

これまでに同社は20万人を治療してきたが、ヨーロッパの人口が高齢化していることもあり、対応可能な市場は明らかに巨大だ。Ovivaによると、現在3億人以上の人々が、食生活の乱れによって引き起こされているか、あるいは個人に合わせた食生活の改善によって最適化することができるような「健康上の問題」を抱えているそうだ。さらに、現在、デジタルケアを受けているのは「ごく一部」に過ぎないと指摘している。

Ovivaはこれまでに、医療機関、保険会社、医師など5000以上のパートナーと提携し、自社の技術をより多くの人に利用してもらうことで、さらなる規模の拡大を目指してきた。過去1年間で、治療を受けた人と収益の両方が「2倍以上」になったという。

今回のシリーズCでは、食生活や生活習慣に起因する健康障害でサポートを必要としているヨーロッパの「数百万人」の人々にサービスが届くようにすることを目標としている。

また、規模拡大戦略の一環として、2022年末までにチームを800人に拡大する予定だ。

デジタルケアと対面ケアの比較において、デジタルでサービスを提供することにともなう潜在的なコスト削減効果はさておき「最も顕著な利点」はその受診率と完遂率であるという研究結果が出ているとし「私たちは、労働年齢層やマイノリティなエスクニックグループなど、支援が難しいとされるグループにおいても、70%以上の受診率と80%前後の高い完遂率を一貫して保ってきました。一方、ほとんどの対面式サービスでの受診率および完遂率は50%未満なのです」と述べている。

競合他社について質問されたOvivaは、Liva Healthcare(リバ・ヘルスケア)とSecond Nature(セカンド・ネイチャー)をこの地域での最も近い競合他社として挙げている。

「WW(旧Weight Watchers)も、償還を受けることができる一部の市場では、デジタルソリューションの点で競合しています。他にも、新しい方法でこの市場に参入しようとする企業はたくさんありますが、それらは償還対応していなかったり、ウェルネスソリューションなのがほとんどです。ヨーロッパでは、他の多くのアプリと同様に、Noom(ヌーム)が自己負担の消費者向けのソリューション分野で競合しています。しかし、私たちの考えでは、彼らの市場は、医療費が支払われる私たちがいる市場とはまた別のものだととらえています」。と付け加えている。

シリーズCでの資金調達は、既存市場での存在力を高め、新たな市場にターゲットを絞って拡大していくことに加えて、M&Aの機会を通じて事業をさらに拡大していくことも視野に入れているとOvivaは語っている。

「新しい国に進出する際には、新しい組織を一から立ち上げることや、強力な医療ネットワークを持つ既存の企業を買収することのどちらも視野に入れていて、当社の技術が患者により優れた医療ケアと価値創造のために活用できると考えています」と語っている。

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画像クレジット:Danny O. / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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