2021年のアフリカへのVC投資は史上最高額を記録するとの予測

アフリカのスタートアップへの投資は、観測されるようになった2015年以来、堅調に伸び続けている。その年、Disrupt Africa(ディスラプト・アフリカ)とPartech(パーテック)は独立して調査を行い、ベンチャーキャピタル投資額それぞれについて、1億8600万ドル(約202億円)と2億7700万ドル(約301億円)という異なる数値を示した。どちらも一大陸の数字としてはばかばかしいほど小さい。たとえば創業4年のSnapchat(スナップチャット)は同じ年に1回のラウンドで5億ドル(約544億円)調達している。しかし、アフリカと急成長中の米国スタートアップ1社への投資の格差は続いているものの、アフリカ大陸に入ってくるお金が増えているのは良い兆候だ。

2019年、アフリカのベンチャーキャピタル投資は史上最高額に達したとPartechのレポートが伝えている。Partechによると、アフリカの234社のテック企業が、250回の調達ラウンドで計20億2000万ドル(約2197億円)調達した。これは2018年のスタートアップ146社、ラウンド164回による調達額11億6300万ドル(約1265億円)から74%成長したことを示している。

2020年には新たな記録が達成されるだろうという共通の期待があったが、それはパンデミック前のことだった。このため、アフリカのテックエコシステムアクセラレーターであるAfricArena(アフリカリーナ)は、アフリカ大陸のスタートアップへの2020年のベンチャーキャピタル投資額を12億ドル(約1305億円)と18億ドル(約1957億円)の間になると予測した。そして、経験に基づく推測なのか計算された予測なのか、PartechとBriter Bridges(ブライター・ブリッジズ)の年末レポートは、総投資額をそれぞれ14億ドル(約1522億円)と13億ドル(約1414億円)と推定した。

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2021年、AfricArenaは最新レポートで、同大陸のスタートアップへのVC投資は22億5000万~28億ドル(約2447億〜3045億円)へと増えると予測している。達成されれば2019年の数字を超える大陸の新記録になる。

予測の背景にある論理的根拠をレポートの抜粋とともに紹介する。

2021年前半の第2四半期は、いくつかの理由で2020年第4四半期に似てくると予測します。ワクチン接種が有意な結果をもたらまでには期待していたよりも時間がかかる可能性が高くなりました。しかし、接種が始まったことで、たとえ実際どれほど長くかかるとしても、パンデミックの終わりに対する大きな不確実性が取り除かれ、時間だけの問題になりました。

その結果、私たちはシードからシリーズBにかけての投資が著しく加速され、いくつかのIPO(ナイジェリアのInterswitchなど)とともに、これまで見たことのないレベルまで投資行動を推進すると予測します。2020年4月現在の2021年への私たちの予測は、16億ドル(約1740億円)以下から30億ドル(約3262億円)以上まで幅があります。ワーストケースのシナリオは、アフリカ経済に対する長引く断続的な影響に基づくものであり、ベストケースのシナリオは、2021年第1四半期における完全復旧を織り込んでいます。上記の観察に基づき、現時点での当社の2021年予測は22億5000万~28億ドルの範囲になります。

4月30日現在、公表されたベンチャーキャピタル総額は8億ドル(約870億円)をわずかに上回る。BFA Global(BFAグローバル)のシニアベンチャービルダーであるMaxime Bayen(マキシム・ベイン)氏による。もしこのペースが2021年いっぱい続けば、アフリカ発スタートアップの調達総額は20億ドル(約2175億円)を超えるかもしれない。

画像クレジット:AfricArena

2020年にはアーリーステージ投資の数は増えたが、成長に賭けるグロースディールの数や、全体的な投資規模が減ったため、投資活動の減少を招いた。Partechによると、シードラウンドは前年比で80%成長し、全投資金額の64%を占めた。全体で、アフリカスタートアップはシードファンディングで2億2000万ドル(約239億円)を調達し、対前年比で47%の増加だった。シリーズAとBラウンドも同じく成長した。シリーズAは9%増(86ラウンド)、シリーズBは16%増(29ラウンド)だったが、投資規模はそれぞれ5%(4億4700万ドル、約486億円)と8%(4億4900万ドル、約488億円)減少した。

グロースディールも16%減少し、5000万ドル(約54億円)以上の完了した取引はわずか2件だった。2019年は10件で、そこにはInterswitch、OPay(オーペイ)、Branch(ブランチ)、Andela(アンデラ)などが入っていた。

2021年に20億ドルの壁を超えるための推進力は、VCが投資件数を増やし、スタートアップが2019年の大型グロースラウンドを再現することにかかっている。前者は、アフリカスタートアップが毎週のように資金調達を続けていることから実現しそうだ。しかし、後者についてはまだやるべきことがある。これまでに1回のラウンドで1億ドル(約109億円)以上調達したアフリカスタートアップは2社にすぎない。フィンテックスタートアップのFlutterwave(フラッターウェーブ)とTymeBank(タイムバンク)だ。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:アフリカ投資

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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