競合が多い分野で月間2億ユーザーを突破、高品質Q&Aサイト「Quora」の差別化戦略

インターネットにはQ&Aサイトやフォーラムが数多く存在する。その中で、シリエコンバレー発のQuoraが目指すのは、質の高い知識を共有するためのQ&Aプラットフォームだ。Quoraは2009年創業。2017年4月のシリーズDラウンドで8500万ドルを調達し、その時の評価額は推定18億ドルでユニコーン企業となった。2017年11月には日本語版もリリースした。

QuoraのファウンダーでCEOのAdam D’Angelo氏は、11月16日、17日に渋谷で開催したTechCrunch Tokyo 2017に登壇し、Q&Aサイトとしては後発であるQuoraの他社との違い、グロースについて語った。モデレーターは、米国TechCrunchの元ライターで、現在はKantan GamesのCEO、Serkan Toto氏が務めた。

“質が落ちるのはシステム設計に原因”

D’Angelo氏はエンジニアのバックグランドを持つ起業家だ。中高時代から趣味でプログラミングを始め、大学でコンピューターサイエンスを学んだ。卒業後は、エンジニアとして、当時創業して1年ほどだったFacebookにジョインする。後にFacebookの初代CTOに就任し、1年半ほど同社の開発チームを率いた。

Q&Aサイトを立ち上げたのは、もともと知識を学ぶのが好きで、ユーザーが知識を共有するプラットフォームに関心があったからとD’Angelo氏は言う。ただ、こうしたサービスは規模が大きくなるほど、コンテンツの品質が落ちることに疑問を感じていた。その課題を解決できないかと考えたのが、Quoraを開発するきっかけだった。

「自分でプロダクトを作ったり、Facebookで働いたりした経験から、コンテンツの質が落ちるのはシステム設計に原因があると考えました」とD’Angelo氏。Quoraでは実名制を採用したり、ユーザーが回答を評価するボタンを実装したりするなど、高品質なコンテンツを奨励するシステム開発に焦点を当てていると話す。他にもそれぞれのユーザーの専門分野に合致する質問をフィードに表示したり、重複する質問は定期的に1つにまとめて、優れた回答がより広く読まれるようにするなどの仕組みも導入した。

Quoraの画面

こうした施策の結果、Quoraには多くの優良なコンテンツが集まるようになり、それが他サービスとの差別化につながったとD’Angelor氏は説明する。「良いコンテンツが集まり、それがシェアされ、それを見たユーザーがQuoraにサインアップするという好循環が生まれています」。現在、Quoraの月間ユニークビジターは2億人を超えるまでになっているという。

時間が経つほど、サービスは良くなっていくとD’Angelo氏は話す。「優れた回答は何年も役に立つものです。データベースにナレッジが集まるほど、より多くの人にとって便利なサービスになっていきます」。

プレイヤーからマネージャーへ

D’Angelo氏はエンジニアとしてキャリアをスタートし、FacebookのCTOを経て、現在はQuoraのCEOとしてマネジメントを行なっている。プログラマーはマネジメントよりコードを書き続けるキャリアを望む人も多いかと思うが、自身はどうだったかとモデレーターのToto氏の問いに対し、最初は自分もそう思っていたが、マネージャーの経験を積んで考えが変わったとD’Angelo氏は話す。

「マネージャーになって最初の頃は、自分でコードを書いた方が早いと思うこともありました。ただ、マネジメントを続けるうちに、自分一人より、チームの方が多くをこなせるということが分かります。大事なのは、世界にインパクトを与えられるかどうかです。自分でコードを書くより、会社を運営することの方がそれを達成できると思います」。

Quoraは立ち上げ当初から、スタートアップの起業家や投資家などに多く利用されていたという。「起業家は、日々決断しなければならないことが多くあります。良い判断をするためには、質の高い情報にアクセスすることが大事で、Quoraはその役に立っています」とD’Angelo氏。Quoraは起業家同士が互いの知識を共有する場であると同時に、優秀な投資家や採用候補者とつながる場としても機能しているそうだ。

セッションの最後、D’Angelo氏は日本の起業家に向け「プロダクトの差別化に注力すること」とアドバイスをおくった。「競合がいる中でも、独自の立ち位置のユニークなプロダクトを作ること。Quoraが成長を続けられたのも、これがあったからです」と話している。

投稿者:

TechCrunch Japan

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