3タップで簡単売買、スマホ証券「One Tap BUY」が金融商品取引業者として登録完了

スマホ特化型のネット証券会社でFintechスタートアップ企業のOne Tap BUYが今日付けで、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業)として関東財務局に登録が完了したと発表した。One Tap BUYは2013年10月の設立で来春のサービス開始へ向けて準備を進めている。

One Tap BUYはスマホで簡単に株式売買ができるアプリ「One Tap BUY」を2016年2月にローンチ予定。一般的なオンライン証券会社をスマートフォンで利用する際、16〜18タップかかる「買う・売る」の操作が3タップで終わる簡単さが特徴だ。FacebookやGoogle(Alphabet)、コカ・コーラやウォルト・ディズニーといった、日本人にも親しみのある海外ブランドの株式を、分かりやすいロゴと創業者の顔写真、マンガなどで表示して、任意の金額を指定するだけで売り買いできるようにしている。購入単位も1万円としていて、取引単位がこれを超えるようなケースでもOne Tap BUYが「端株」として吸収する。証券市場の取引可能時間など時差の違いなどもユーザーは意識する必要がないといった具合に、これまでハードルの高かった株式取引を身近なものにするのが狙い。こうした面倒な部分をサービス側で吸収するためには、法令要件や税務要件を満たしつつ金融庁と調整のうえでシステムを設計する必要があり、それを創業以来One Tap BUYは着々と進めてきたのだという。

ontapbuyOne Tap BUY創業者の林氏によれば、当初はニューヨーク証券取引所・ナスダックに上場している30銘柄に対応するが、今後は売買可能な銘柄と市場を増やす予定もあるという。東京証券取引所に対応予定のほか、もともと中国株専業のネット証券会社「ユナイテッドワールド証券」を創業して売却した経歴のある林CEOは、中国やインドの市場への対応も技術的には可能だとTechCrunch Japanに話している。

One Tap BUY創業者の林和人氏

One Tap BUYはスマホネイティブでUIを考えているのが面白い。例えば、ポートフォリオを円グラフで表示して、「この株の割合をちょっと減らしたいな」というときに、指でグリっと円グラフをなぞると回転方向に応じて株式資産の比率を再計算。それに応じて売買も行ってくれる。One Tap BUYは従来の「オンライン証券」というサービスや常識からすると、まったく異なるタイプのサービスになりそうだ。

株を保有することで得た利益を現金化する方法も、ちょっとユニーク。購買時から上がった株価の分だけを売却する、というのが1つの機能として提供されている。ここに経済的合理性があるようには思えないのだけど、そうしたニーズがあること自体は理解できる。そもそも経済合理性から言えば、現在の日本人の個人資産の現金保有残高は異常に高い。例えば日本銀行調査統計局の2015年9月3の統計によれば、日本の個人資産1717兆円のうち52%の893兆円が現金・預金となっている。歴史的な低金利が続いていることを考えると、大多数の個人投資のお金を動かすものが、必ずしも経済合理性ではないと考えるべきだろう。それがブランドへの愛着や創業ストーリーの分かりやすさ、売買アプリの敷居の低さといったことで動く可能性はあると思う。

「貯蓄から投資へ」という掛け声とともにNISAなど個人の投資環境整備が進む一方で、なかなか進まない日本の個人資産運用。One Tap BUYが、この社会課題の突破口となるのかどうか、今後の動きに注目したい。なお、One Tap BUYはTechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトル決勝戦で、審査員特別賞とAWS賞を受賞している。以下がOne Tap BUYが作成したテレビショッピング風の説明動画だ。

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投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。