プログラミングを学校の必須科目にするためのキャンペーン”Hour of Code”と国の”コンピュータ科学教育週間”が同時期に

今年の1月にAli/Hade Partovi兄弟が立ち上げたCode.orgのミッションは、単純だった: プログラミングとコンピュータ科学を、アメリカ人がこれらに対してこれまで持っていたイメージを変えて、大衆化すること。

ほぼ1年たった今、Code.orgはどうなっているだろうか。そして多くのアメリカ人が、STEM*を国家的最優先事項にする必要があることを、認めるようになっているだろうか。その答えが、今週、ある程度分かるだろう。今週(12/9-15)行われるコンピュータ科学教育週間(Computer Science Education Week)の幕開けの祝辞としてオバマ大統領と共和党の下院院内総務Eric Cantorがそれぞれ、合衆国の児童生徒学生はプログラミングの学習を全員必須とすべし、とメッセージする、ビデオによる声名を発表した。〔*: STEM, science, technology, engineering, mathematics; 理数系~理工系教科。〕

一方Code.orgも今週、数か月かけて準備したキャンペーン”Hour of Code“(1時間のプログラミング)を立ち上げる。コンピュータ科学教育週間と同じ週にこのキャンペーンは、合衆国の教師たち全員に、児童生徒にコンピュータ科学とプログラミングを教える時間を1時間確保するよう、求める。全員だから、英語や歴史の先生も対象に含まれる。

Partovi兄弟がCode.orgを立ち上げた動機も、今のアメリカの学校におけるコンピュータ科学やプログラミング教育の乏しさにある。だいたい10校のうち9校は教科にコンピュータ科学が含まれない。今は少しずつ変わり始めてはいるが、それでもコンピュータ科学とプログラミングが選択科目である学校が多い。つまりそれらは、成績証明に含まれない。Partovi兄弟とCode.orgは、カリフォルニア州に対してはこれまで積極的にロビー活動を積み重ね、徐々に状況を変えつつある。

Hadi Partovi(元Microsoft、MySpace、iLikeなど)によると、Code.orgの最初のミッションは、各州がコンピュータ科学を必須学科にすることだ。官僚主義とのたたかいは容易ではなかったが、彼らの説得に耳を傾ける州も少しずつ増えつつある。“ロビイスト活動の中では、むしろ、それほど苦労しなかった方ではないか”、とHadiは言っている。

そして今度は、州に次いで国が腰をあげる。また、”Hour of Code”キャンペーンに参加するのは合衆国の学校だけでなく、世界167か国の33000のクラスの500万人あまりの児童生徒の参加が期待されている。Hadiの“500万人あまり”とは、1000万のことだ。

Code.orgのその目標達成を助けるために、AppleとMicrosoftは全世界の小売アウトレットで”Hour of Code”のクラスを行う。Appleは、各店で”Hour of Code”のクラスを展開することを、専用のWebサイトで公示している。同社によると、‘きわめて対話的な’状況および雰囲気の中でプログラミングの基礎を教えるそうだ。こうやって、自社の店舗などでこのキャンペーンを助けるという企業は、100社近くある。その中には、テクノロジ系でない企業もある。

Googleの検索ページは、右図のようなGoogle Doodleでコンピュータ科学教育週間を祝っている。この絵に登場する女性は、女性プログラマの元祖でCOBOLプログラミング言語を作ったGrace Hopperだ。絵の下には”Hour of Code”へのリンクもある。このほかCode.orgは、Yahoo、Youtube、Apple、MSN、Bing、Disney、 有力政治家たち、映画などのスターやアスリートたちにも、キャンペーンの宣伝への貢献を求めている。

現在協力を表明している俳優やミュージシャンはShakira、Ashton Kutcher、Angela Bassettら、アスリートはChris Bosh、Warren Sapp、Dwight Howardら、テクノロジ世界のリーダーの中からは生前のSteve Jobs、Bill Gates、Mark Zuckerberg、Susan Wojcickiらだ。全国レベルの政治家では、民主党、共和党の両派が協力を表明し、オバマ大統領と共和党下院院内総務Eric Cantorのほかに、上院議員Cory BookerNewt Gingrich、教育大臣Arnie Duncanらが、”Hour of Code”を支持するビデオを掲出している。

Code.orgは、”Hour of Code”キャンペーンに協賛してチュートリアルを提供する企業や大学、非営利団体などのリストと、 Mard Zuckerbeg、Chris Bosh、Bill Gatesらが登場するビデオチュートリアルを提供している。この前の”Learn to Code”キャンペーンのビデオは2週間で1200万回見られた。

また10月には、LinkedInのCEO Reid Hoffmanが、なぜ全アメリカ人がプログラミングを学ぶべきか、その実利的な理由を本誌の記事で語っている。

下のビデオは、オバマ大統領のメッセージと、Code.orgによる、多くの有名人が登場する”Hour of Code”の立ち上げビデオだ。

さて、これからのアメリカはどうなるか。全国民がプログラミングを学ぶだろうか? まずCode.orgのページを見ながら考えてみよう。〔*: 日本でも現安倍政権の構想では、“いずれ”義務教育からプログラミング教育が導入されるらしい。〕

〔訳注: Code.orgに関する過去記事: (1)(2)(3)。〕

〔Code.orgのビデオの大阪弁バージョン。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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TechCrunch Japan

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