Adobe、パーソナライゼーションに注力してExperience Cloudをアップデート

Experience Cloud(エクスペリエンス・クラウド)は、Adobe(アドビ)のデジタルエクスペリエンスソリューションのための包括的なブランドだ。含まれる代表的な機能は、データと分析サービス、コンテンツ管理ツール、コマースプラットフォーム、そして2020年のWorkfront(ワークフロント)の買収によって取り込まれた、完全なマーケティングワークフロー管理サービスなどだ。Experience Cloudブランドは、同社の2017 Digital Marketing Summit(デジタル・マーケティング・サミット2017)でデビューした。このイベントは現在Adobe Summit(アドビ・サミット)と呼ばれていて、ちょうどCreative Cloud(クリエイティブ・クラウド)を中心とするAdobe MAXカンファレンスを、Experience Cloudを中心にしたものに相当すると考えることができる。米国時間3月15日、同社は2022年の(仮想)カンファレンスで同社のデジタルエクスペリエンスプラットフォームの新製品やアップデートを多数発表したことは驚きではない。

今回の発表の焦点は、ブランドとそのために働く開発者たちが、よりパーソナライズされた体験を構築し、Experience Cloud内の異なるサービス間のより深い統合を提供することを助ける新しいツールを提供すること、そして長年要望されていたAdobeのCreative Cloudとの統合も提供することだ。

Adobeの戦略・製品担当副社長であるLoni Stark(ロニ・スターク)氏は「私たちがお手伝いする企業は、その顧客によりパーソナライズされた体験を提供する必要があり、このデジタル経済で成功するためのツールを従業員に提供する必要があると考えています」と語る。「コンテンツとコマースに関する革新において私たちが焦点を合わせているのは、ショッピングとコマース体験をパーソナライズするための機能を提供して、顧客体験を開発する組織内のすべての人が、それを行うために必要な最も豊かな資産と洞察を得ることができるようにすることです。私たちの強みは、最高の技術を提供する一方で、開発者が想像するものを構築することを可能にできることであることを認識しながら、私たち消費者が恩恵を受けることができる、より大きなビジネス成長とエキサイティングな体験を推進する手助けができることです」。

とはいえ、おそらく今回の発表会の目玉は、新しいAdobe App Builder for Commerce(アドビ・アップ・ビルダー・フォー・コマース)かもしれない。Adobeは、これを使って、クラウドネイティブのコンテンツおよびコマースアプリケーションを構築するためのツールを開発者に提供する。これは、開発者が一連の開発者用ツールとSDKを通じて、Adobeのコマースソリューションの機能を拡張することを支援するというものだ。これによって、開発者は新しいユーザー体験だけでなく、企業のITスタックの残りの部分との統合を行うためのマイクロサービスも構築することができる。これは2021年末にローンチされたApp Builder for Experience Manager(アップ・ビルダー・フォー・エクスペリエンス・マネージャー)プラットフォームを補完するものだ。

「開発者がExperience Cloudにアプローチする際に、構築のために多すぎるツールを持たせないようにしたいのです。APIゲートウェイで統一されたエクスペリエンスを提供する必要があります」とスターク氏はいう。このApp Builderによって、開発者はより簡単にユニークなストアを構築したり、既存のeコマースツールを拡張してストア内での選択を可能にしたりすることができると指摘した。

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統合機能としては、同社のマーケティングワークフロー管理サービスAdobe Workfront(アドビ・ワークフロント)」が、マーケターによるオムニチャネルキャンペーンの管理・分析を支援するJourney Optimizer(ジャーニー・オプティマイザー)と連携するようになった。また、企業内のより多くの従業員がキャンペーンや体験の構築に積極的な役割を果たすようになる中で、同社はCreative Cloudとのより深いつながりを構築して、組織間のサイロを打破し、Adobe Experience Manager Assets(アドビ・エクスペリエンス・マネージャー・アセット) とAssets Essentials(アセット・エッセンシャル)サービス内にあるCreative Cloudライブラリのコンテンツへのアクセスをより多くのユーザーに提供するようになる。

ここでのアイデアは、同社が「エクスペリエンス・フラグメント」と呼ぶものを構築することだとスターク氏は指摘する。これは基本的に企業のコンテンツライブラリを構成する最小単位のことで、これをさまざまなチャネルで再利用することで、ユーザー自身の好みや使用しているプラットフォームに基づいて高度にパーソナライズされたコンテンツを提供することができる。

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パーソナライズ化への注力の一環として、Adobeは本日(米国時間3月15日)、B2CやB2Bブランドが顧客行動や製品売上、人気トレンドに基づいてより良いレコメンデーションを提供できるようにする、AI主導の新しい製品レコメンデーション機能をAdobe Commerce(アドビ・コマース)内に組み込んだことも発表した。同社は、この新製品をすでに試用している企業では、受注額が25%以上増加したと主張している。同様に、Adobe Sensei AI(アドビ・センセイAI)プラットフォームを採用した同社の新しいLive Search(ライブ・サーチ)機能は、コンシューマーブランドに、より高速でよりパーソナライズされ、より適切な検索結果を提供するのに役立つ(検索結果がしばしば笑ってしまうほどナンセンスなAmazon[アマゾン]も、おそらくこれを試した方がよいだろう)。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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