AIによる全自動衣類折りたたみ機を開発する日本のセブンドリーマーズが60億円の大型資金調達を発表

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AIによる全自動の衣類折りたたみ機を開発する日本のセブンドリーマーズは11月14日、パナソニック株式会社、大和ハウス工業株式会社、SBIインベストメントを引受先とした第三者割当増資、技術開発提携および販売提携により、60億円の大型資金調達を実施したことを発表した。2015年6月のシリーズAで調達した約15億円を含め、同社のこれまでの資金調達額の合計は約75億円となる。

日本のスタートアップとしては、今年3月に約84億円を調達したメルカリなどに次ぐ大型の資金調達だ。

放り込むだけでAIがベストな折りたたみ方を判断

セブンドリーマーズが開発するのは、構想に10年を費やした全自動の衣類折りたたみ機「ランドロイド」だ。同社によれば、人間が一生のうちに洗濯物の折りたたみに費やす時間は9000時間で、日に換算すると375日にもなるという。ランドロイドを活用することで、この時間を他のことに費やすことができるというのがコンセプトだ。

洗濯乾燥が済んだ衣服をランドロイドに放り込むと、画像解析によって衣類の種類ごとにベストなたたみ方をランドロイドが判断する。このテクノロジーの背後には機械学習が応用されているため、長く使えば使うほど賢くなっていく仕組みだ。また、設定により家族のメンバー別やアイテム別に仕分けることもできる。一度に約30枚の衣服が投入可能だ。

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ランドロイドの価格、サイズについては「来年3月の記者会見まで非公開」ということだが、サイズは大型の冷蔵庫のイメージが近いとのこと。衣類の折りたたみにかかる時間については、「出勤前にランドロイドを利用すると、帰宅前には折りたたまれた状態になっている」。ディープラーニングの度合いによっても折りたたみにかかる時間は変動するため、長く使えばそれだけ折りたたみにかかる時間が短縮する可能性もある。

長く培った技術力が強み

形の整ったモノを扱うのではなく、衣類という柔軟物を扱うには高度なロボティクス技術が必要になる。セブンドリーマーズ代表取締役社長の坂根信一氏によれば、ランドロイドに使われている技術は「セブンドリーマーズ独自のアルゴリズムを構築し、独自設計のロボットアームおよび制御技術との融合に実現した唯一無二の人工知能」だと語る。また、ランドロイドの開発の過程で生まれたあらゆる技術は、国内外で特許を取得済み、または申請中だという。

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スーパーレジン工業の創業者である渡邊源雄氏。1957年、彼が東京に設立したコンポジット成形工場がスーパーレジン工業のはじまり。

このように、みずからを「世の中にないモノを創り出す技術集団」と呼ぶセブンドリーマーズの強みは、同社の卓越した技術だ。同社の創業は2011年だが、そのルーツは1957年に創業のスーパーレジン工業株式会社までさかのぼる。同社は独立系専業FRP(繊維強化プラスチック)成形メーカーとしては国内最古参の企業だ。現在は航空宇宙分野などにおいてその技術力が広く認められており、2010年に話題となった小惑星探査機の「はやぶさ」にも部品供給をしている。テクノロジーの分野こそ違えど、ランドロイドは同社が長く培った技術力の結晶だと言えるだろう。

 

セブンドリーマーズは現在、サンフランシスコとパリにそれぞれ営業所と支店を構えており、ランドロイドについても国内外同時発売を計画している。ただし、出荷は国内優先になるとのこと。

2019年には洗濯乾燥機能も付いたオールインワンタイプも

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セブンドリーマーズ代表取締役社長 坂根 信一氏(理学博士)

家電分野への参入というところで気になるのが販売チャネルだ。特に日本国内では家電メーカーと販売チャネルの結びつきが強い。ランドロイドの販売チャネルについて坂根氏は、「自社での独自販売を軸に計画を立てています。具体的には、Webやショールームなどを通して、お客様に直接お届けできるチャネルを構築していきます。家電メーカーの販売チャネルについては、活用はするが戦略の中心ではありません」と話している。

セブンドリーマーズは今年10月、今回のラウンドに参加したパナソニック、そして大和ハウス工業と業務提携を結んでいる。同社によれば、折りたたみ技術の開発はこれまで通り独自で進めていくものの、ランドロイドの量産に関してはパナソニックのアドバイスを受けながら進めていくという。また、同社は2019年に全自動洗濯乾燥機と折りたたみ機能を合わせたオールインワンタイプのランドロイドを発売予定であり、その開発には「パナソニック社の先進的な洗濯乾燥機の技術が必要不可欠」となる(坂根氏)。同じく、2020年には大和ハウス工業と共同してスマートハウス向けのビルトインタイプを販売予定だという。

ランドロイドの予約販売開始は2017年3月16日、現在はプロジェクトの参加メンバーを募集している。

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TechCrunch Japan

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