AIを使ったID認証のOnfidoがソフトバンクなどから約56億円調達

悪意あるハッカーが情報のスニペットを入手し、そして個人や事業者の秘密の財政情報や他のプライベート情報へのアクセスを入手するために個人になりすますというセキュリティブリーチは、デジタル時代では普通のこととなった。米国では今年、1事案で27億超える件数の記録がブリーチに遭った。そうしたブリーチによる全被害額は世界で何兆ドルにものぼるとされている。

デジタルサービスを使うときに人々が自分をなんと名乗っているのかを、AIテクニックと人による組み合わせて効率的に認証するOnfidoというスタートアップが今日、引き続き増加傾向にある問題に対処しようと、5000万ドル(約56億円)を調達したと発表した。

今回の資金調達は、ロンドンで創業され、今は主にサンフランシスコで事業を行なっているこのスタートアップの力強い成長がもたらした。共同創業者でCEOのHusayn Kassai氏はインタビューで、顧客の半分以上、そして新たな成長のほとんどは米国外からのもの、と述べた。

Onfidoは4500もの異なるタイプの身分証明証を認証するのにコンピュータービジョンと、たくさんのAIベースのテクノロジーを活用している。そのテクノロジーとは、人の目には見えない表情の生き生き度合いのテストのようなものだ。そして今やOnfidoは企業1500社を顧客に抱えている。その顧客は主にマーケットプレイスやコミュニティ、ゲーム、金融サービス部門で、RemitlyやZipcar、Europcarといった企業が含まれる。昨年、Onfidoの売上は342%成長した。これまでに何千万ものIDを認証した、とKassai氏は話した。

専門的にはシリーズC2となる今回の資金は一流の戦略テックインベスターを含むグループが拠出している。このラウンドはソフトバンクインベストメント(SBI)Salesforce Venturesが共同で主導し、M12(旧Microsoft Ventures)、FinVC、その他にも名前の公表されていない新旧のインベスターが参加している。これは、そうした大企業がいかにこの問題に取り組んでいるかだけでなく、問題解決のために彼らがとっているアプローチが何なのかをも示している。

ソフトバンクについていえば、この投資はビジョンファンドとは別のものだ、とKassai氏は語った。しかし、Didi、Uber、Oyo、Lemonadeなどビジョンファンドがサポートしてきた多くの事業が基本的に認証は人に頼っていて、そうした人たちが個人に関する詳細を安全に扱い、プラットフォーム上でサプライヤーを綿密に調べていると信じている(つまり、多くの事業がOnfidoが提供しているようなサービスを必要としていることを意味している)。

一方、MicrosoftとSalesforceの両方とも広範に事業を展開していて、ID認証プロバイダーとの協業にはいくつものメリットがある。それは自社のためだけでなく、ID管理とセキュリティ提供の一環で顧客に販売されるものとして、でもある。

Onfidoは評価額を明らかにしないが、これまでに1億ドルを調達していて、Kassai氏は多くの幸せな投資家を伴う、調達するたびに評価額が上がっていくアップラウンドだったことを認めた。

「我々は非常にいいメトリックスを持っている。成長の道はまだまだ続く」と話した。

業務上のアカウントにログオンしたり、オンラインバンキングのサービスにアクセスしたりをサポートするため、ユーザーが本人であることを証明して安全なサービス提供をサポートする企業はたくさんある。Onfidoの事業は顧客のオリエンテーション、特にコンシューマー向けのサービスにフォーカスしている。

Onfidoの商機は、ブリーチが増加したためだけではない。本人確認に使用されてきた既存のサービスの多くが目的に合っていない、という認識が高まっている。Equifaxのケースのようにあまりにもブリーチされてきたか、オンラインで行われている認証が目の前で行う認証のようには十分に効率的でないかのどちらかだ。(Onfidoは、同社のシステムではものの15秒で認証できる、としている)。

または、OnfidoはID認証ビジネスにアプローチをシフトしてきた新たな策の一部だ。Onfidoの競合相手となっていたかもしれないCheckrはいま、Onfidoのパートナーだ、とKassai氏は述べた。前経営者の大きな過失が残した問題に現在も取り組んでいるJumioは、独立した事業をまだ模索しているようだ。

「詐欺は増える一方で、なくなりはしない」と、Ruhul Amin氏、Eamon Jubbawy氏と共にOnfidoを立ち上げたKassai氏は話す。「問題は詐欺の発見が十分にできていない同業他社が1ダースほどもあることだ」。どのサービスも完璧ではないが、Onfidoいわく同社のリスク可能性は0.0195%とのことで、Kassai氏はAIをフル活用したサービス構築のアドバンテージは精度を上げ続けるアルゴリズムの使用にある、と話す。「1つのクライアントから学んだことを他のクライアントにもいかせる」とも語る。

「企業にとって、詐欺を行う人たちよりも1歩進んだ取り組みをしていることを示して顧客の信頼を得ることが今ほど大事なときはない」と語るのは、今回のラウンドでOnfidoの役員メンバーに加わった前Salesforceの副会長Frank van Veenendaal氏だ。「Salesforceが顧客関係の管理を変革してきたのと同様、Onfidoはデジタル認証マーケットを変革し、確かでスケール展開できる認証をサービスとして届けるという、ユニークなチャンスを手にしている」。

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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