AIを使って道路補修が必要な箇所を特定するパイロット事業を米ユタ州で実施

朝、職場への通勤運転中に道路に穴があるのに気づいたり薄くなった車線を目にした場合、そうした欠損は誰かが地元の交通当局に苦情を申し立てて問題を指摘するまでなくならない。ユタ州拠点のスタートアップBlyncsy(ブリンクシー)は当局がそうした苦情に先回りして問題に対応するのをサポートしようとしている。

運動とデータインテリジェンスの会社である同社はPayverというAIを活用したテクノロジーを展開する。Payverは交通当局に、どの道路がメンテナンス作業や補修を必要としているか、最新情報を提供するためにクラウドソースのビデオデータを活用する。Blyncsyはこのサービスをコスト削減の価格で、そして長期契約なしで提供している。

ユタ州のDOT(運輸局)がPayverを試験する最初の機関で、6月1日からソルトレイクシティ地域で開始し、長さ計563kmの道路をカバーする。Blyncsyは数週間以内に他の州で実施するパイロット事業を発表する。

行政当局は通常、新しいテクノロジーを受け入れるのが遅い。米運輸省はスマートシティと高度な運輸オプションのための公的資金と民間資金に2億5000万ドル(約275億円)超を使ってきた一方で、そうした取り組みの大半は都市の公共交通をより地球に優しく効率的なものにすることに偏りがちだ。Blyncsyの創業者でCEOのMark Pittman(マーク・ピットマン)氏は、非効率的な道路メンテナンスは安全でないばかりでなく、より多くの二酸化炭素排出を引き起こすと主張する。

「Payverのインスピレーションは、ユタ州DOTのエグゼクティブディレクターが米国で最初に道路に関する状況をリアルタイムに把握する能力を持つという目標を立てた2017年に得ました。そしてその問題を解決するために取り組んできました」とピットマン氏はTechCrunchに語った。「一般の人が問題の把握に関わる必要がないよう、DOTは何が起きているのか、いつ起きるのかを自動的に知りたいのです。道路脇に瓦礫があったり停止標識がなくなっていたり、あるいはラインを引き直す必要があるとき、運輸局は人々が電話をかけて苦情をいうことなく、あるいは事故を起こすことなくどうやってその事実を把握するでしょうか」。

BlyncsyのPayverテクノロジーはあらゆるHD画像とビデオをNexarダッシュカメラなどさまざまなソースから集め、顧客に結果を提供するために機械ビジョン使ってデータセットを分析する。交通当局はそうした洞察をダッシュボードフォーマットで利用できるが、Payverは補修作業の優先順位を決めるメンテナンス管理ソフトウェアも統合している。

ユタ州DOTのパイロット事業では、Payverはまず自動車走行環境の基本要件である塗装ラインにフォーカスするが、舗装の穴、建設バレル、張り倒された標識、日々擦り減るものなどへと対象を拡大する。ユタ州DOTの交通・安全担当ディレクターRob Miles(ロブ・マイルス)氏によると、ユタ州DOTはこのパイロット事業に約9万ドル(約990万円)の予算を充てている。

「現在、我々は2年ごとに道路のLiDARスキャンを行っています。つまり常にデータ集めでそこら中を駆け回っていますが、すべての問題に対応できていません」とマイルス氏はTechCrunchに語った。「我々はまだ市民からの苦情で問題を把握しています。苦情ベースのシステムから、意見ではなく測定可能なデータに支えられたものへと移行できる異なるデータ収集システムを望んでいます」。

ピットマン氏は、横断歩道や安全な自転車レーンの場所に必要な補修の予測によるアクティブなモビリティフォームの最適化は、テクノロジーが高度になるにつれPayverにとって優先事項となると話した。テクノロジーの進化はモビリティにおける平等とインクルージョンをを維持するために重要だ。Payverはまた道路状況での人種的、そして社会経済的ギャップの仲立ちするのもサポートでき、これはDOTが平等なサービスを社会全体に届けるのをサポートする、とピットマン氏は話す。

「(米運輸長官の)Pete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)氏はこのほど、運輸がかつていかに構造的な人種差別とコミュニティの棚上げを助長したかについて語りました。我々が道路を作る方法は往々にして低収入世帯が高速道路近くに住むことをともなうものだからです」とピットマン氏は指摘した。

「道路のメンテナンスでも同じことが言えます。低収入の人々はさほど苦情を言わず、高収入の人は苦情を声にしがちです。しかし低収入のコミュニティの道路の穴の影響は壊れた車軸を意味します。これはその家族が生き残ることができるかどうかを決めることにもなります。高所得者が住むところではそうではありません」。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Blyncsyユタ道路

画像クレジット:Blyncsy

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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