AIチップメーカーのHailoが約155億円調達、エッジデバイスにおけるAIモジュールの機会を倍増させる

世界的に半導体が不足するなか、AIチップ業界のスタートアップが、その技術に対する需要の高まりに対応するため、大規模な資金調達を発表した。スマートシティ、小売環境、産業用機器、次世代自動車システムなど、AIワークロード用にカスタマイズされたエッジデバイス用チップを製造しているHailo(ハイロ)が、シリーズCラウンドで1億3600万ドル(約155億円)を調達した。同社に近い情報筋にTechCrunchが確認したところ、今回の投資はHailoのバリュエーションを約10億ドル(約1140億円)とみているという。

このラウンドはPoalim EquityとGil Agmonが共同でリードした。Hailoの会長であるZohar Zisapel(ゾハー・ジサペル)氏、ABB Technology Ventures(ATV)、Latitude Ventures、OurCrowdの他、新たにCarasso Motors、Comasco、Shlomo Group、Talcar Corporation、Automotive Equipment(AEV)社も出資した。Halioの累計調達額は約2億2400万ドル(約255億円)になった。

約1年半前の6000万ドル(約68億円)のシリーズBに続くラウンドだ。同社は約1年前、Intel(インテル)やNVIDIA(エヌビディア)に対抗するHailo 8チップを搭載した最新のAIモジュールを発表した。

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共同創業者でCEOのOrr Danon(オア・ダノン)氏はインタビューで、最近、市場での関心が非常に高まっており、前四半期だけで、Hailoが取り組むプロジェクトの数が100件に倍増したと話した。今回のラウンドを受け、需要増加に応えて規模を拡大すると同時に、プロセッサーの用途にあわせたカスタマイズを継続する。

「現在、Hailo 8を市場に投入していますが、その効率の良さに人々は非常に喜んでいます」と同氏はいう。同社のエッジチップの独自性は、既存のリソースに適応してカスタムニューラルネットワークを動作させるよう設計されている点にある。そのため、同様のタスクを実行するためにデータセンターのコンピューターで必要とされる同等の処理能力より高速であるだけでなく、より少ないエネルギーで動作する。「私たちはこのサービスを拡大していきたいと考えています。そのために、ソフトウェアにも投資しています」と話す。

今回の資金調達は、2021年のチップ業界の複雑な状況の中で実施された。

パンデミックの影響で、一部の分野では旺盛な需要があったものの(例えば、コンシューマー環境では、活動が制限されている時期にユーザーはより良いデバイスへの乗り換えを始めた)、他の分野では活動が大幅に低下し(例えば自動運転車などの野心的なプロジェクト)、全体的に生産が大幅に減速した。

Hailoのようなエッジデバイスを扱う企業にとっては、より効率的でコスト効率の高いシステムをアピールするチャンスだ。ユーザー自身のニューラルネットワークや、TensorFlowおよびONNXなどの人気のある開発フレームワークと統合できることも後押しする。

ダノン氏によると、Hailoは自動車などの一部の分野で需要が軟化しているが、同社のビジネスの幅広さにより、全体的な需要は引き続き増加している。自動車分野は、一時期盛り上がり、その結果としてしばらく落ち込んでいたが、復調しつつある。

例えば、完全自動運転車を対象とするプロジェクトの数は減ったかもしれないが、半自動運転システムに取り組むプロジェクトはまだ数多くあり、それがHailoのビジネスにつながっていると同氏は話す。

「企業は今、現実的な展開を模索し始めており、現実的な課題に直面しています」と同氏はいう。「自動運転車に自動車専用の高速道路を走らせる必要はないかもしれませんが、それでも新しいタスクを学ぶ必要はあります」。

また、産業界や小売業界(エッジデバイスが、セキュリティシステム・自動レジ向けのコンピュータビジョンアプリケーションや、分析に使用されている)、さらには交通機関が今後もビジネスの主要な原動力となるスマートシティなどからも強い関心が寄せられているという。

投資家が同社に投資するのは、現在のビジネスのためだけでなく、今後のチャンスのためでもある。

「今後数年間で、AIは新たなビジネス価値を生み出し、これまでのユーザーエクスペリエンスを再構築する決定的な機能となるでしょう。AIベースの機能を市場に投入する能力は、企業の成功と失敗の分ける決定的要因となることが増えていきます」と語るのはMooly Eden(モーリー・イーデン)氏だ。同氏は、Intelに40年近く勤務し、直近ではイスラエル事業の社長を務めた後に退社した。現在はHailoの取締役を務める。「Hailoの革新的で超効率的なプロセッサー・アーキテクチャーは、従来のコンピューティング・ソリューションに挑戦し、新しいタイプのワークロードを処理する新しい種類のチップに対する需要増加に対応します」。

画像クレジット:Hailo

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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