AIモデルの本番移行を支援するGrid AIが19.7億円調達、PyTorch Lightningの開発者が創業

人気オープンソースソフトウェアPyTorch Lightning(パイトーチ・ライトニング)の開発者William Falcon(ウィリアム・ファルコン)氏が創業したGrid AIは、機械学習エンジニアの仕事の効率化を目指すスタートアップだ。米国時間10月8日、同社はこの初夏に行われたシリーズA資金調達で1860万ドル(約19億7000万円)を調達したことを発表した。今回のラウンドはIndex Venturesが主導し、Bain Capital Venturesとfirstminuteが参加した

ファルコン氏は、以前はGlossier(グロッシェ)で機械学習の責任者を務めていたLuis Capelo(ルイ・カペロ)氏と共同でこの会社を創業した。当然のことながら、ここで対象とするのは約1年前にローンチしたPyTorch LIghtningで、それをGridの提供するサービスへと展開する。Lightningを支えるメインアイデアは、データサイエンスをエンジニアリングから切り離すことだ。

データサイエンティストたちがディープラーニングを始めようとしていた数年前には、彼らは常に適切な専門知識を持っているとは限らず、すべてを適切に行うことは困難だった。

「これが理由で業界はディープラーニングにいわれのない嫌悪感を抱いています」とファルコン氏は語る。「LightningとGridはそうした際に必要となるすべての技巧をワークフローに組み込んでいるため、もはや仕事を行うために、AIのPhDや主要なAI企業のようなリソースを持っている必要はありません。これにより、洗練されたニューラルネットワークに対して単純なモデルを展開するための機会費用が、これまでのような数か月単位ではなく、数時間単位のものになります。LightningとGridを使用することで、間違いを犯しにくくなるのです。たとえば、お客さまが携帯電話で、出来の悪い写真を撮ったとしましょう。私たちは携帯電話の立場からその写真を素晴らしいプロ品質に仕上げると共に、それをお客様ご自身がどのように実現すれば良いかをお教えします」。

ファルコン氏が説明したように、Gridはデータサイエンティストやその他のMLプロフェッショナルが、「エンタープライズユースケースが必要とするワークロードに合わせて拡張」できるようにすることを目的としている。Lightningだけでも、そのことを途中までは実現することが可能だが、Gridを使うことで、ユーザーが実世界の問題を解決するために自身のモデルをスケールアップする際に必要なすべてのサービスが提供される。

とはいえ、それが正確にはどのようなものかはまだはっきりしていない。「目の前にGitHubリポジトリがあると想像してみてください。そこから手元のノートブック上にローカルコピーを取得して、1行の変更も行わずに、AWS上の400個のGPU上での実行を指示することができます。これらすべてをご自身のノートPC上で、ウェブアプリまたはコマンドラインインターフェイスを使って行うことができるのです。これが、大規模なモデルのトレーニングと構築に適用されるLightningの『魔法』です」とファルコン氏。「これはすでに世の中に知られています、そして非常に成功したパラダイムシフトであることが証明されたことで、Keras(ケラス)やTensorFlow(テンソルフロー)などの他のすべてのフレームワークや、気がついた企業さんたちが、私たちのやり方を真似ようと変更作業を始めています」。

現在サービスはプライベートベータ段階だ。

今回の資金調達により、現在25人の従業員を抱えるGridは、チームを拡大し、Grid AIを通じた企業向けサービスとオープンソースプロジェクトを強化することを計画している。ファルコン氏は「多様なチームを構築することを目指している」と語った。これは彼自身がベネズエラで生まれた移民であり、退役米軍軍人であることも影響している。

「私は非倫理的なAIが持ち得る影響について、直接的な知識を持っているのです」と同氏。「そのことから、私たちは多くのバックグラウンドと経験にまたがる、現在の25人の従業員を採用することに取り組んできました。私たちは、シリコンバレーのテック企業にありがちなやり方をとらない、初めてのAI企業かもしれません」。

「オープンソースであるLightningの人気が、私の興味をそそりました。およそ1年前のことです」と語るのはIndex VentureSarah Cannon(サラ・キャノン)氏だ。「本当に興味をそそられたので、ヘルシンキでの会議中だったのにもかかわらずウィルとルイが正確には何を開発したのかを内緒で聞き出すために、クローゼットの中に慌てて駆け込んだことを覚えています。私はすぐに、同僚のBryan Offutt(ブライアン・オフット)に電話をかけて、彼がサンフランシスコでウィルとルイに会って彼らのコードの『優雅さ』に感銘を受けた話を聞きました。数日後には、私たちは彼らのシードラウンドに参加することを決定したのです。Gridの旅に参加できることを非常に光栄に思っています。シードに投資した後、私たちはチームとかなりの時間を過ごしました、そしてチームと過ごす時間が長くなるほど、確信が深まったのです。これから1年以内のローンチ前の段階で、私たちは彼らのシリーズAを主導したいと考えています」とコメントしている。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Grid

画像クレジット:Jure Batagelj / 500px / Getty Images

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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