AI活用でインフルエンザの早期発見へ、アイリスが12.5億円を調達

AI医療機器を開発するアイリスは5月7日、塩野義製薬とBeyond Next Venturesを引受先とする第三者割当増資により12億5千万円を調達したことを明らかにした。

塩野義製薬側の発表によると両社では4月25日付で資本業務提携を締結済み。塩野義製薬がアイリスに12億円を出資し株式の約14%を取得するとともに、アイリスが開発するAI医療機器を対象とした将来のライセンス契約に関する優先交渉権を得たという。

アイリスではインフルエンザ患者ののどにできる「インフルエンザ濾胞(ろほう)」と呼ばれる腫れ物に注目。撮影したのどの写真をAIで解析することで、インフルエンザの高精度・早期診断をサポートするAI医療機器を開発中だ。

同社によると、2018年の国内インフルエンザ患者数は2000万人を越え、過去10年で最大の流行となった。現状の検査方法では発症してから24時間以上が経過しないと診断精度が十分ではなく、6割程度にとどまるとの研究報告もあるそう。検査法の改善は進んでいるが、抜本的な解決には至っていない段階だという。

この問題へのアプローチとしてアイリスが目をつけつけたのが、上述したインフルエンザ濾胞だ。風邪をひいている場合や健康な状態でものどの奥には膨らみが存在するものの、インフルエンザ濾胞には「インフルエンザの場合にだけ」現れる特徴があることを日本の医師が発見した。

表面の色調や艶やかさ、大きさや盛り上がり方などからインフルエンザ特有の特徴を見分けるのは、その道に精通するベテラン医師だからこそ成し得ること。アイリスでは画像解析AIを通じてこの技術の再現を目指している。

具体的には鼻の奥に綿棒を入れて行う検査の代わりに、のどの写真を撮影。その写真を解析することで高精度かつ早期にインフルエンザを診断できる機器を作る。

アイリスによると臨床研究法に則った臨床試験を既に実施しているそうで、今後は治験や薬事承認に向けて開発を加速させていく計画だ。

左からアイリス代表取締役社長の沖山翔氏、取締役副社長CSOの加藤浩晃氏

 

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TechCrunch Japan

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